昨日(2014.3.23)、東京仕事センター(飯田橋)において「講演会:原発事故で避難は可能? 柏崎刈羽原発と防災計画」が開催されました。当日は、新潟県から金子さんや矢部さん、高橋さんをはじめ多くの方々がお見えになられて報告をなさった他、環境経済研究所の上岡直見さんから、現状における原発防災計画・避難計画についての諸問題のご説明がありました。別添PDFファイルは、その際に参加者に配布された資料です。また、下記は、当日会場から出た意見のうち、記憶力のいたって悪い私が覚えている主な意見の要約です(正確ではないかもしれません)。
ご参考までにお送り申しあげます。
<イベント案内>
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-6d1d.html
●原発避難計画の検証 このままでは、住民の安全は保障できない-上岡直見/著 本・コミック : オンライン書店e-hon
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033047339&Action_id=121&Sza_id=GG
1.避難指示の有効性について
(1)福島第1原発事故時においてモニターされていたはずの電事連の放射能データが未だ公開されていない。
(2)東京電力副社長の武藤氏は事故の早い段階からオフサイトセンターに入って采配をふるっていた。事実上の意思決定者だった。
(3)中央政府や原子力「寄生」委員会などの決定を待って市町村の首長が避難指示を出すというやり方では機能しないのではないか(決定が遅すぎる)
(4)防災指針や柏崎刈羽原発を含む実際の防災計画では、避難指示の出され方は、どのようなルールになっているか
2.防災計画の実効性のなさを具体的に検証して地域住民や有権者・国民に伝えていくことは大事なことです。
(1)一見して、各原発立地地域の防災計画・避難計画に実効性がないのは明らかだが、原子力「寄生」委員会や政府・安倍晋三政権が防災計画と原発・核燃料施設の再稼働を切り離して強行しようとしている今、この防災計画・避難計画の実効性の乏しさを、具体的なことを挙げて地域住民や有権者・国民に伝えていくことは重要な仕事である。特に、優先審査の原発となり再稼働第1号となりそうな川内原発の防災計画・避難計画の無効性をしっかり告発しなければいけない。
(2)立地自治体に無責任にも丸投げされた防災計画・避難計画についても、ただ、つくればいい、というのではなく、その内容について独立した組織が「審査」をして、その内容点検なり評価なりをする必要がある。
3.(下記は私が発言したことです)
避難指示の問題(指示が遅れて機能しない)が指摘されましたが、それま全くその通りです。しかし、更にその前段の「放射能モニター」のところについても非常にいい加減だと思う(つまり、いざとなったら、環境放射能をまた再びきちんと計測できない状況に陥る可能性大)。にもかかわらず、マスコミの、この放射能モニタリングに関する関心が低すぎて、お粗末な実態が多くの人に伝えられていないことに加え、そのマスコミの関心の低さは、ひょっとすると、原発・核燃料施設周辺自治体の、この過酷事故時における放射能モニター体制のあり方に対する関心の低さの反映でもあるのではないか。しかし、それではまずい。
(1)福島第1原発事故の時は、各放射能モニターの多くが「独自のバッテリー(電源)」を持っていないので停電になったら動かなくなった」だの、「海辺においてあったので津波をかぶって壊れてしまった」などと、お粗末極まりない管理実態が露呈したが、これに対して関係者の深い反省が見られない。馬鹿丸出しだ。
(2)過酷事故の際の環境放射能を計測するモニターの設置状況はどうなのか:例えば、設置台数は少なすぎないか(スカスカではだめ)、設置範囲(30km以内では狭すぎる)、設置場所(例えば、少なくとも避難計画で避難所とされるような場所には置いておくべき、その他、学校や保育園、役場等)、各モニター機器類の管理責任者は誰か(電事連では駄目のようだ)など、モニターの設置状況・体制についての突っ込んだ議論がない。
(3)モニターする内容は、ただ空間線量が測れればいい、というものではないはず。ガンマ核種で言えば、初期被ばくに大きな影響のある放射性ヨウ素や放射性テルルと、放射性セシウムなどとの区別ができる=つまりガンマ核種の放射線スペクトルがキャッチできる機器である必要があるだろうし、また、ベータ核種やアルファ核種(特にプルトニウム)については呼吸被曝の危険性を鑑みれば、きちんと把握できる状態でないとまずいはずだ。
(4)原子力「寄生」委員会や政府は、もうSPEEDI(放射能拡散予測システム)は使わないで、実測の放射能データでいろいろ意思決定するなどと言っているようだが、それはおかしい。SPEEDIを使わない理由はないはず。再び、放射能の雲が流れる方向に避難する、といったとんでもないことを再び繰り返してしまう可能性が高い。
(5)泉田裕彦新潟県知事は「ベント」時の住民被ばくにこだわっているが、まず、NHKスペシャルでも放送したように、福島第1原発事故時には、空気圧で動く制御系の配管ないしは制御機器類が地震で壊れて動かなかった可能性が高い。私は、次の原発・核燃料施設の過酷事故は地震(の揺れ)によって起きるのではないかと危惧していて、その時には、空気圧を使う制御機器に加え、水圧を使うような制御機器をまともには動かず、あっというまに炉心溶融・原子炉爆発、などということが十分ありうる話である(事実、最短時間で、炉心溶融までの時間はわずか20分などと言われている)。それを考えると、ベントで出てくる放射能による地域住民の放射線被曝の危険性などは枝葉末葉に近い話かもしれない。ベントだけにこだわるべきではない(ベント放射能の被ばくが回避できればいいという話ではない)。
次に、使用済み核燃料プールの問題だ。全国すべての原発・核燃料施設は福島第1原発4号機とほぼ同じ(くらい危険)と考えていい。地震で原発・核燃料施設がやられる時は、原子炉本体よりも、この使用済み核燃料プールの方がはるかに危険で、万が一冷却不能になれば、半径30~50kmどころの話ではなくなる。この使用済み核燃料プールの超危険性は、もっとクローズアップされるべきである。
4.上記に関連して、次のご意見がありました。
(1)SPEEDIを使っての予測システムが有効に機能したとして、問題は、その結果をどのように地域住民に正確に適切に伝えていくかという伝達の問題が大きい(全くその通り)。
(2)更に、放射能拡散予想システムのシュミレーション結果も、前提を変えると様々なパターンが山のように出てきて、それをそのまま現場(地元市町村役場)に伝えたのでは、もらった方もどうしようもない。予測結果をどうとりまとめ、どう割り切り、現場にどう伝えるかという重い課題もある。
(3)防災計画・避難計画なんて言っても、地元の市町村役場そのものが避難したり、業務体制が崩壊してしまっては、全く機能しない。しかし、市町村役場が避難しないで、猛烈な放射能の下で避難業務を(身を捨てて)遂行するというのは考えにくい。
(4)何ゆえに、原発・核燃料施設立地自治体が避難計画策定を強要されなければならないのか。立地自治体が丸ごと避難しなければならないような事態になる可能性を持ったものなら、やめればいい。
(5)環境省は大気汚染のモニタリング・ネットワーク、システムを既に持っていて、これに東大の「つるた」という学者が注目して説明したりしている。原子力「寄生」委員会も注意を払っているが、利用に向けて動く気配はない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まだ、いろいろありました。
有意義な講演会でした。