DHCスラップ訴訟。DHC・吉田嘉明が、吉田批判言論の萎縮を意図して提起した不当極まる典型的スラップ。DHC・吉田嘉明はスラップの常連だが、2014年3月に明らかになった「対渡辺喜美8億円事件」の批判言論封じ目的のスラップは計10件。私はそのうちの1人である。
私(澤藤)が被告となった事件では、当然に私の勝訴となった。しかし、DHC・吉田嘉明は、敗訴が分かりきっているのに、執拗に控訴し上告受理申立をして最高裁まで争った。
私の勝訴が確定はしたが、DHC・吉田嘉明が意図した、「吉田を批判すると面倒なことになる」「吉田嘉明という男は、カネに飽かせて裁判をやって来る」「面倒なことに巻き込まれるのはゴメンだから、刺激しない方が賢い」という風潮が残っている。だから、今、私は、DHC・吉田嘉明を相手に、スラップ提訴が不法行為となるという裁判を闘っている。これを「反撃訴訟」「リベンジ訴訟」などと言っている。
その反撃訴訟の次回期日が、近づいている。6月8日(金)午前10時15分から、東京地裁415号法廷での開廷。担当裁判所は民事第1部合議係。
今回の法廷では、DHC・吉田嘉明側が「反訴被告準備書面2」を提出する。その全文が下記のとおりである。
反訴原告(澤藤)側から、いくつかの立証に必要な事項について、求釈明をする予定となっている。
今回の法廷は、山場ではなく、見せ場もない。それでも、表現の自由やDHC・吉田嘉明に関心のある皆様に、是非傍聴をお願いしたい。
閉廷後、いつものとおり、弁護団からのご説明や意見交換の機会を持つことになります。然るべき資料も配付いたします。
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今回の法廷で陳述となる「反訴被告準備書面2」は全6頁のたいへんに短いもの。
第1 前訴提起に至る経緯
第2 反訴原告準備書面(2)に対する若干の反論
の2節からなっている。
その内、冒頭の第1節、第1項~3項の途中までをご紹介したい。
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平成29年(ワ)第98149号損害賠償請求反訴事件
反訴原告 澤藤統一郎
反訴被告 吉田嘉明,株式会社ディーエイチシー
反訴被告ら準備書面2
平成30年6月1日
東京地方裁判所民事第1部合議係御中
反訴被告ら訴訟代理人弁護士 今村憲
第1 前訴提起に至る経緯
1 反訴被告吉田は,日本国をより良くしたいとの思いから,脱官僚を政策に掲げる政治家を応援するべく,訴外渡辺善美に8僮円を貸付けた。ところが,これが公になったあと,一部週刊誌やプログにおいて,反訴被告吉田の貸付行為は,政治を金で買うものだとの全くの事実無根の記述がなされ,反訴被告らの名誉が毀損される事態に陥った。
2 そこで,反訴被告会社担当者らは,当該事実無根の記述をしている週刊誌やブログをピックアップし,顧問弁護士と協議の上,表現があまりにも酷く,①裁判所に救済を求める事例,②法務担当者らから警告をするにとどめる事例及び③名誉毀損とまではいえないため放置する事例とに分け(乙14参照),①については,特に慎重に不法行為が成立するか,顧問弁護士の意見を聞いた上で,請求認容されると予想された10件について,訴訟提起することとし,反訴被告吉田の了解を得た。
3 より具体的には,顧問弁護士は,不法行為の成否について,まず訴訟対象とした10件については,その表現がかなり酷く,反訴被告らの社会的評価を低下させており,請求原因が認容される可能性が高いものを選別した。
抗弁については,反訴被告吉田の8億円貸付の動機については,反訴被告らが政治を金で買う目的で8億円を貸し付けたなどという動機は見当違いも甚だしく,相当の根拠も全くなかったので,違法性や責任が阻却される可能性はないと考え,その他についても同様であった。
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これに、少しだけ解説を加えておきたい。前訴とは、吉田嘉明から私(澤藤)に対する6000万円請求のスラップ訴訟のことである。
反訴被告吉田は,日本国をより良くしたいとの思いから,脱官僚を政策に掲げる政治家を応援するべく,訴外渡辺喜美に8億円を貸付けた。ところが,これが公になったあと,一部週刊誌やブログにおいて,反訴被告吉田の貸付行為は,政治を金で買うものだとの全くの事実無根の記述がなされ,反訴被告らの名誉が毀損される事態に陥った。
同準備書面冒頭のこの一文が、準備書面全体の主旨となっている。
ここでは、「渡辺喜美に8億円を貸付けた」ことが「公になった」と表現されているが、第三者の手によって、心ならずも「公になった」のではない。吉田嘉明自身が週刊新潮誌上に手記として公表したことによるものなのだ。吉田本人自らが、得々として「理念なき政治家・渡辺喜美に8億円を交付した」と述べたのだ。これに批判が殺到したのは当然のことではないか。
本件スラップは、公表者自らが慌てて自分の手記への批判を封じようとしている点で、他にない特徴を持つ。批判のブログを書いた私(澤藤)は、当時吉田嘉明という人物の言行を知らなかった。すべては、吉田自身が自ら「公にした」情報に基づいて、私の見方(意見ないし論評)を述べたに過ぎない。
ここに記載されている「日本国をより良くしたいとの思いから」との動機は、通常の社会常識と国語力を有する者が、通常の読み方で吉田嘉明手記を読む限り、到底措信しえない。吉田嘉明は、その手記において無邪気に自分の会社の経営に行政の規制が厳しいことに不平を述べている。「脱官僚を政策に掲げる政治家を応援する」のは、自分の会社への厚生労働行政規制の撤廃ないしは緩和を動機とするとしか受けとりようがない。それが常識というものである。
8億円もの裏金である。この巨額を政治家に渡す動機を「自分の会社の利益を最大限にするため」と私利私欲を赤裸々に語る人物の存在は考え難い。「企業活動を円滑にして豊かな社会を築くためのやむにやまれぬ思いから」、あるいは「新たな保守第2党を育てることで旧態依然の自民党政治に終止符を打ちたい思いから」などと、動機を美化することはいくらでも可能なのだ。吉田嘉明の「日本国をより良くしたいとの思いから」という稚拙な美化された動機の表現について、通常の社会人であれば、その美化された表現のとおりにそのままに受けとることはあり得ない。
吉田の言う「脱官僚」とは「脱行政規制」しかも消費者の利益を擁護するための社会的規制撤廃と同義である。「脱官僚を政策に掲げる政治家を応援する」とは、「カネをやって脱行政規制の政治を求める」ことにほかならない。規制に縛られた自分の会社の利益を拡大するために、大金を政治家に渡したと自ら言っているとしか解しようがない。私は、この吉田の行為を「自分の利益のために政治を金で買うもの」と批判した。批判せざるを得ないではないか。
善意に解釈すれば、吉田嘉明の思考の構造は、「よりよい日本」とは行政規制がなくなり、「自分の会社が儲かる日本」ということなのかも知れない。しかし、巨額の裏金で「日本をよりよくする」ことは、政治をカネで動かすこととして、許されない。
DHC・吉田嘉明は、前訴(スラップ訴訟)において敗訴してなお、「政治を金で買うものだとの全くの事実無根の記述」というのは、驚くべき非常識というほかはない。いまだに、何の反省もなく、私の批判を「反訴被告らの名誉が毀損される事態に陥った」などと述べていることが信じがたい。
その余の解説は、後日追々のこととする。私は、このブログで、吉田嘉明を徹底して批判することで、生きた教材としての表現の自由を語り尽くしたいと考えている。
(2018年6月5日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.6.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=10475
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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