(2023年11月19日)
全国110名余の視聴者が原告になって、NHK経営委員会議事録と録音データの開示を求めているこの訴訟。下記のとおり、明後日の結審の法廷と記者会見を兼ねた報告集会をご案内いたします。ぜひ、法廷傍聴の上、報告集会にご参加ください。
2023年11月21日(火)10時15~45分
東京地裁103号大法廷 最終口頭弁論
(法廷では、原告2人と代理人弁護士1名が、口頭意見陳述を行います。弁護士の陳述はパワーポイントで、論点を分かり易く解説します。)
同日閉廷後、東京弁護士会507号会議室で記者会見を兼ねた報告集会
この訴訟の被告は、NHKと森下俊三経営委員長の2名。形式的にはNHKを被告とせざるを得ませんが、実質的な責任の追及対象はNHK経営の最高機関である経営委員会を代表する森下氏なのです。
NHK経営委員は、内閣総理大臣が両院の同意を得て任命します。近時この経営委員選任がまことに恣意的で不適切、その結果としての重大事件が2018年10月23日経営委員会席上での、上田良一会長に対する『厳重注意』でした。
NHK番組「クローズアップ現代+」が、かんぽ生命保険の不正販売問題を取りあげ放映したところ、これに反発した加害者郵政グループが、この番組続編の制作妨害をくわだてました。同グループの上級副社長(元総務事務次官)鈴木康雄氏が森下氏を手がかりに経営委員会に働きかけ、経営委員会は「会長厳重注意」までして、いったんは番組潰しに成功したのです。だから、議事録の開示も公表もできなかったのです。
本来公共放送の独立と公正を守るべき経営委員会が、外部勢力と結託して、NHK執行部に圧力をかけ、良心的な番組つぶしに走ったのです。
この訴訟の提起直後に、被告は「議事録のようなもの(録音の粗起こし)」を原告らに交付しました。しかし、放送法が命じる適式の議事録ではありません。NHKホームページに公表もしていません。法定の手続に則った「適式の議事録」および、消去されたはずのない「会議の録音データ」を開示せよというのが、原告らの請求。これに判決がどう応えるか注目されるところです。そして、森下氏に対する不法行為損害賠償請求も。
ぜひ、傍聴と報告集会参加をお願いいたします。
NHK文書開示等請求訴訟 原告団・弁護団
《NHK文書開示請求訴訟》経過と概要
原告 受信契約者(視聴者) 114名
被告 NHK(形式上の被告)
森下俊三(責任追及対象としての被告)
請求の趣旨
Ⅰ 被告NHKは原告らに対し、下記各文書をいずれも正確に複写(電磁的記録については複製)して交付する方法で開示せよ
1.放送法41条及びNHK経営委員会議事運営規則第5条に基づいて作成された、下記各経営委員会議事録(「上田良一会長」に対する厳重注意に関する議事における各発言者ならびに発言内容が明記されているもの)
①「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
②「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
③「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
2.下記各経営委員会議事録作成のために、各議事内容を録音または録画した電磁的記録。
①「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
②「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)
③「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
Ⅱ 被告らは連帯して各原告に対し各金2万円、ならびにこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え
事実と訴訟進行の経過
Ⅰ 提訴前の経過(2018年)
04月24日 「クローズアップ現代+」「かんぽ生命の不正販売問題」放映
07月07日 同月14日 NHKネットに続編制作のための被害情報募集動画掲載
07月11日 郵政3社社長連名での会長宛抗議文
08月02日 郵政3社社長連名での会長宛動画削除要求書
08月03日 NHK8月10日放映予定の続編延期を決定
被害情報募集の動画掲載を取りやめ
(「金融商品トラブル」番組でかんぽ生命不正販売を取りあげる予定が発覚)
09月25日 郵政の上級副社長鈴木康雄 森下を訪問
10月05日 日本郵政から経営委員会宛に抗議文
10月23日 1316回経営委員会 上田会長厳重注意
10月25日 同月30日に予定されていた「金融商品トラブル」番組内での
「かんぽ生命不正販売」問題放映をカットする決定。
Ⅱ 提訴前の経過(2019年)
09月26日 毎日新聞朝刊が、1面トップで「NHK経営委 会長を注意」の記事
09月30日 毎日新聞続報「『厳重注意』議事録なし」の記事
「『かんぽNHK問題』野党合同ヒアリング」の連続開催
① 10月3日(出席経営委員・森下俊三、甲6)「議事録は作っておりません」
② 10月4日(出席経営委員・高橋正美、甲7)「探したが議事録はない」
③ 10月8日(出席経営委員・森下俊三、甲8)「議事録はない」
④ 10月15日
⑤ 10月16日(出席経営委員・森下俊三、甲11)「議事録はある」
⑥ 2019年10月30日
⑦ 2019年12月24日
09月11日 衆議院予算委員会 議事録ないことを前提の質疑(甲9)
09月15日 NHKのサイトに若干の書き足し修正
Ⅲ 先行する開示の求めに対する審議委員会答申
2020年05月22日 797・798号答申 「開示せよ」→従わず
2021年02月04日 814・815・816号答申 「開示せよ」→従わず
Ⅳ 訴訟の経過
(※裁判所、◎原告、✰被告NHK、★被告森下、✰★形式NHK・実質森下)
◎2021年4月7日 文書開示の求め(これに対する2度の延期通知)
◎2021年6月14日 第1次提訴(原告104名・被告2名〈NHKと森下〉)
a 被告NHKに対する文書開示請求
開示請求対象文書の主たるものは、下記経営委員会議事録の未公開部分
「第1315回経営委員会議事録」(2018年10月 9日開催)
「第1316回経営委員会議事録」(2018年10月23日開催)上田会長厳重注意
「第1317回経営委員会議事録」(2018年11月13日開催)
b 被告両名に対する損害賠償請求(慰謝料・弁護士費用、原告1人各2万円)
✰★同年7月9日 「3会議の議事録(のようなもの・粗起こし)」を開示
◎同年 9月16日 第2次提訴 (原告10名・被告2名)1次訴訟に併合
☆同年 9月15日 被告NHK答弁書(現時点では対象文書は全て開示済み)
★同年 9月21日 被告森下答弁書(不法行為はない、請求棄却を求める)
◎同年 9月23日 原告 被告NHKに対する求釈明
◎同年 9月24日 原告 甲1の1~4 NHK開示文書提出
※同年 9月28日 第1回口頭弁論期日(103号)
(西川さん・長井さん・醍醐さんの原告3名と代理人1名の意見陳述)
☆同年 12月3日 被告NHK準備書面(1)「現時点で、所定の議事録作成手続は完了しておらず、放送法41条の定める議事録とはなっていない」
★同年 12月3日 被告森下 準備書面(1) 「本件各文書はいずれも開示済」と言いつつも、「粗起しのもので、適式の議事録でない」ことを自認。
★同日 被告森下丙1~32号証 提出
◎2022年1月12日 原告第1書面(被告森下の求釈明に対する回答)提出
☆同年 1月17日 被告NHK 乙1(放送法逐条解説・29条部分)提出
※同年 1月19日 第2回口頭弁論期日(103号)
★同年 2月28日 被告森下 準備書面(2)
◎同年 3月 2日 原告第2準備書面
◎同年 4月 7日 原告第3準備書面
☆同年 4月22日 被告NHK 準備書面(2)
★同年 4月22日 被告森下 準備書面(3)
※同年 4月27日 第3回口頭弁論期日(103号)
◎同年 4月28日 原告第4準備書面(求釈明)
★同年 6月14日 被告森下 準備書面(4) (電磁記録は消去済みである)
☆同年 6月21日 被告NHK 準備書面(3)
◎同年 7月 1日 原告第5準備書面(求釈明)
※同年 7月14日 進行協議
★同年 8月22日 被告森下準備書面(5) (求釈明に対する回答)
☆同年 8月25日 被告NHK 準備書面(4)
◎同年 8月30日 原告第6準備書面
※同年 9月 6日 第4回口頭弁論期日(103号)
☆同年 10月14日 被告NHK 準備書面(5)
★同年 10月14日 被告森下準備書面(6)
◎同年 10月16日 原告請求の趣旨の変更(縮減) 開示請求文書の特定。
議事録(未公表部分)と録音データ。以後、録音データの存否が主たる争点に。
◎同年 10月16日 原告第7準備書面
※同年 10月26日 進行協議(415号)
◎同年 11月16日 原告第8準備書面
★同年 12月13日 被告森下準備書面(7)
☆同年 12月14日 被告NHK 準備書面(6)
◎同年 12月20日 原告証拠申出書
※2023年6月7日 口頭弁論(人証調べ)期日 中原・森下・長井 尋問
◎同年 7月4日 原告・追加の証人採用についての意見
※同年 7月10日 Web進行協議
◎同年 8月2日 原告第9準備書面 甲4~12
★同年 8月7日 被告森下準備書面(8)
※同年 8月9日 Web進行協議(裁判所・原告の挙証責任論に同意の心証を開示)
★同年 9月12日 被告森下準備書面(9)丙39~41提出
◎同年 9月21日 原告第10準備書面提出
※同年 9月28日 Web弁論準備期日
◎同年 11月14日 原告第11(最終)準備書面提出
※同年 11月21日(火)10時15分~ 103号法廷 口頭弁論期日・結審予定。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記 改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。」2023.11.20より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=21309
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion13390:231120〕