NHK経営委員長・森下俊三氏の経営委員罷免を求める各議院宛請願書と院内集会

(2020年10月22日)
このたび第203臨時国会の冒頭に、衆参両院の各議長宛に、下記の請願書を提出します。また、請願書提出にあたっての院内集会をお知らせします。内容は、「NHK経営委員長・森下俊三氏の、経営委員としての職務上の重大な義務違反を究明して、同人の経営委員罷免を求める」請願です。

NHKの在り方に深い関心を寄せている、研究者、弁護士、ジャーナリスト、NHK・OB、各地の視聴者団体関係者ら39名が構成する「森下俊三氏に係る国会請願世話人会」(事務担当・醍醐聰さん)が運動の主体となって、2200名余の賛同者連名での請願になります。私も請願者の一人に加わりました。

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森下俊三氏のNHK経営委員としての職務上の重大な義務違反を
究明するよう求める請願書

一 請願要旨
かんぽ生命保険の不正販売を取り上げたNHKの番組制作に関するNHK経営委員会の対応、とりわけ森下俊三経営委員長の対応には「放送法」第36条(経営委員の罷免)に挙げられた「職務上の義務違反」に明確に該当する次のような行為があった。
(1)森下氏は2018年10月23日の経営委員会でかんぽ生命保険の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」(2018年4月24日放送)に関して、「今回の番組の取材は極めて稚拙で、取材をほとんどしていない」、「郵政側が納得していないのは取材内容だ。納得していないから、経営委に言ってくる。本質的なところはそこで」などと発言した。それは実際の取材・番組の経過を誤認したものであるにとどまらず、「放送法」第32条が禁じた経営委員による番組編集へのあからさまな干渉に当たることは明らかである。
(2)2018年10月23日の経営委員会で、当時経営委員長職務代行者の職にあった森下氏は石原進経営委員長(当時)とともに、NHK執行部のガバナンス上の問題を殊更にあげつらって、上田良一会長(当時)に「厳重注意」をするに至る議事を主導した。
上記の経営委員会で、それほど重要な議論が交わされたにもかかわらず、経営委員会は、その事実を『毎日新聞』が2019年9月26日朝刊で報道して以降も隠し続けた。
しかも、森下氏は経営委員長としての職にありながら、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が今年5月22日に、当日の議事録等を全面開示すべきと答申したことも無視して、議事録等の開示請求者に対して、肝心の部分を省いた公表済みの議事概要の寄せ集めを送付するという極めて不真面目な対応をした。
以上のような経緯から、森下氏が、「放送法」第41条で経営委員長の職責と定められた経営委員会の議事録の遅滞なき公表を怠ったことは明らかである。

以上指摘した2つの事項は、森下俊三氏に、「放送法」第36条が経営委員を罷免できる事由として挙げた「職務上の義務違反」があったことを意味する。

(3)本年3月31日に開かれた参議院総務委員会では、2020年度のNHKの収支予算、事業計画及び資金計画を承認するにあたって、4会派から共同提案された19項目にわたる附帯決議案が賛成多数で決議された。その第1項目には「経営委員会は、本委員会の審議を踏まえ、経営委員会の放送番組の編集への介入の疑念について、十分な総括と反省を行い」とあるが、NHK経営委員会、特に森下経営委員長は、番組編集への介入ではないかとの指摘に対して、「意見、感想を述べたに過ぎない」と開き直り、「十分な総括と反省」からは、ほど遠い状況である。
また、附帯決議の第2項では「経営委員会は、その意思決定過程に至る過程について、公表を原則に適切な議事録等の作成を行うこと」とされた。しかし、経営委員会、特に森下経営委員長は、その後も、自由な意見交換に支障が出るのを避けるためと釈明して議事録の非公開に固執している。これは、全面公開すべきというNHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申に背くと同時に、前記の参議院総務委員会の附帯決議第2項を無視するものである。

なお、このような経営委員会の釈明は、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申第798号において、次のように明快かつ説得的に一蹴されている。

NHKの経営委員会は「視聴者・国民に対し自らの経営委員としての言動については、広く説明責任を負っていると言わなければならない。特に、NHK会長に係るガバナンスの問題というような重要な運営上の問題について、各委員がどのような意見を持ち、どのような議論が行われ、どのような結論に達したのかについては、より強く透明性が求められることは論をまたない。少なくとも、本件を、議事録非公表の場でなければ各経営委員が率直な意見が言えないような類の問題と位置づけるべきものではない。」

よって私たちは、NHK経営委員の任命と罷免に係る国会同意人事に参画する貴院が、「放送法」第32条、第36条、第41条の定めに照らして、森下俊三氏に、NHK経営委員あるいはNHK経営委員長としての職務に係る重大な義務違反があった事実を徹底的に究明するよう求めるとともに、経営委員の任命権者であり、罷免の発議権者である内閣総理大臣に対し、森下俊三氏をNHK経営委員の職から罷免するよう求める措置を講じられるよう請願する。

二 請願事項
1.貴院のしかるべき委員会に森下俊三氏を参考人として招致し、森下氏に、本件請願書要旨に記したような「放送法」に違反する行為、職務上の義務違反に相当する行為があった事実を徹底的に究明すること。

2.森下俊三氏をNHK経営委員から罷免するよう、内閣総理大臣に意見を提出すること。

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放送法では、個別の番組には介入してはいけないはずのNHK経営委員会が、かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組に対して、当時の上田NHK会長に「厳重注意」をしたこと、その経緯を示す経営委員会の議事録を公開しないことについて、多くの視聴者やメディアから批判されているにも関わらず、頬かむりのまま動かない。

表題のような「請願書」を国会に提出するのを期して、以下のような集会を開きます。この時期に、一見、地味に見える請願であり、集会でありますが、表現の自由を侵す重大な問題なので、国会でも十分究明して欲しいということで、衆参両院に請願書を提出することになったそうです。全国で39名の世話人の努力で請願者は2200人を超えています。

  請願書提出にあたっての院内集会

日 時:  2020年10月26日(月) 16時~17時30分(予定)
会 場:  衆議院第二議員会館 多目的会議室(1階)
※15時45分から玄関で入館証をお渡しします。

世話人会からの出席者:
岩崎貞明(「放送レポート」編集長)
小田桐 誠(ジャーナリスト/大学講師)
小玉美意子(武蔵大学名誉教授)
杉浦ひとみ(弁護士)
楚山大和(「日本の政治を監視する上尾市民の会」代表)
醍醐 聰(「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)
長井 暁(NHK・OB/大学教員)
日巻直映(「郵政産業労働者ユニオン」中央執行委員長)|

ご出席の衆参両院の紹介議員へ請願書を提出します。
なお集会参加者は、ご自身の体調管理とマスク着用などの対策をお願いいたします。

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「世話人会」(事務担当・醍醐聰さん)から、各賛同者への連絡の一部をご紹介します。

☆両院への請願の意味・効果を改めて考える参考情報をお知らせします。

衆議院のHPにある「請願の手続き」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/tetuzuki/seigan.htm
を見ますと、「3.請願文書表の作成・配布・委員会付託」の項に次のように書かれています。

「請願書が提出されますと、請願文書表が作成・印刷され、各議員に配付されます。請願文書表には、その内容が周知されるよう、請願者の住所・氏名、請願の要旨、紹介議員名、受理の年月日、署名者数などが記載されます。請願は請願文書表の配付と同時に、請願の趣旨に応じて適当の常任委員会または特別委員会に付託されます。」

衆議院議事部請願課に電話して確認しましたところ、
「『各議員』とは衆議院議員全員のことです」
とのことでした。

請願が「採択」に至らない場合にも、受理されれば、紹介議員を通じて私たちが提出した「請願の要旨」がそのまま印刷されて、全衆議院議員に配られます。

参議院の場合も、「請願の審査」の項で同じ解説がされています。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/seigan.html

このように見てきますと、今回の請願は、地味ではありますが、NHK経営委問題/森下問題に対する関心を改めて衆参両院の全議員に喚起するうえで、重要な機会になるのではないかと思います。

☆なお、各議員に配布される「請願文書表には、その内容が周知されるよう、請願者の住所・氏名・・・・が記載されます」という一文がありますが、衆議院議事部請願課に問い合わせたところ、この場合の「請願文書表」に住所・氏名が記載されるのは請願代表者のみと確認しました。

請願者を紹介議員ごとにグループ分けした場合は、グループごとに代表者を決めますので、各議員に配られる「請願文書表」にはグループごとの代表者の氏名・住所が記載されます。

代表者以外の請願者名簿は紹介議員を通じて両院に提出しますが、全衆議院議員に増し刷り配布されることはありません。

☆NHK経営委員会と森下俊三経営委員長の背信行為には目に余るものがあります。

背信行為というのは、
* 報道の自由の防波堤であるべきNHK経営委員会が、あろうことか、かんぽ不正販売に警鐘を鳴らしたNHKの「クロ現+」(2018年4月24日放送)に対する不正行為の当事者(日本郵政)からのクレームを取り次ぎ、NHK会長に「厳重注意」という名目で圧力をかけた問題です。

* しかも、NHK経営委員会は、厳重注意をした会合の議事録を隠し続け、「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」の開示すべきという答申さえも無視して、いまなお、公表を拒み続けています。

* 全国各地の視聴者団体は、これまで再三、議事録の公開と森下経営委員長の辞任を求める申し入れや署名を提出してきましたが、ことごとく要求を踏みにじられました。

しかし、ひるんでいるわけにはいきません。それならと、私たちは背信を主導した森下経営委員長に焦点を当て、臨時国会に、「森下俊三氏の放送法違反・職務上の重大な義務違反を徹底究明するよう求める請願書」を各議院に提出いたします。

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.10.22より許可を得て転載

http://article9.jp/wordpress/?p=15827

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

〔opinion10225:201023〕