TPP交渉に「反対」「慎重」意見が強まる -共同通信、しんぶん赤旗の調査から-

著者: 岩垂 弘 いわだれひろし : ジャーナリスト・元朝日新聞記者
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 菅首相は1月29日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で講演し、環太平洋経済協定(TPP)について「今年6月をめどに交渉参加に関する結論を出す」と改めて表明したが、農業が盛んな地域を中心にTPP交渉参加に反対する意見や「慎重対応」を求める意見が強まりつつある。

 共同通信が1月16日にまとめたところによると、全国の都道府県、政令指定都市の66議会のうち、TTPに関する意見書を可決している議会が46議会に達していた。

 このうち、TPP交渉に参加しないよう求める「反対」の意見書を可決したのは14議会だった。北海道、青森県、岩手県、山形県、富山県、滋賀県、和歌山県、島根県、高知県、宮崎県、沖縄県、札幌市、新潟市、北九州市である。

 さらに、「慎重対応」を求める意見書を可決したところが32議会にのぼった。宮城県、秋田県、福島県、茨城県、群馬県、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、兵庫県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県、仙台市、川崎市、静岡市、広島市、福岡市だ。

 「慎重対応」を求めた意見書には、反対に近いものがある半面、参加を前提に「具体的な農業振興の提示」や「国民的な合意形成」など、十分な対応を求めたとも受け取れる内容のものもあるという。

 いずれにせよ、TPP交渉に「参加反対」、あるいは「慎重対応」を求める意見書を可決した都道府県議会・政令指定都市議会の合計は全体の7割を占めることが明らかになったわけで、共同通信は「TPP交渉に参加しないよう求める反対意見書を可決したのは、北海道議会や新潟市議会、宮崎県議会など、国内有数の農業地帯が目立つ。TPPでは例外分野のない関税撤廃を求められるとされ、協定参加が農産物などに悪影響を及ぼすと不安を募らせる生産地の姿があらためて浮き彫りになった」としている。
 この共同通信のまとめは1月17日付の地方紙各紙に掲載された。

 一方、共産党機関紙「しんぶん赤旗」のまとめは、1月23日付の同紙で明らかにされた。それによると、TPPに「参加反対」「慎重な対応を求める」意見書が昨年11月から12月にかけて以下の31道県議会で可決されていることが分かったという。
 北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、神奈川、富山、石川、福井、長野、静岡、滋賀、兵庫、和歌山、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 

 同紙はまた、「市町村議会での意見書の可決は980自治体を超えています」と述べ、「宮崎では、県議会と26市町村議会のすべてが『反対』『慎重』の意見書を可決。県議会の意見書は『口蹄疫からの復興が緒に就いたばかりの中にあっては尚更』と強調しています。滋賀でも県議会と19市町村議会すべてで意見書を可決し、県議会の反対意見書には民主党会派だけが反対しました。沖縄でも県議会と沖縄市を除く40市町村議会すべてが意見書を可決。サトウキビ、肉用牛、パイナップル、養豚など基幹作物が壊滅的打撃を受けることを共通して指摘しています。北海道では、道議会に加え31市・129町・14村議会が『反対』『慎重』の意見書を、それぞれ可決。意見書を可決していないのは3市だけになりました。宮城は、県議会と34市町村議会で意見書を可決し、残る自治体は1町です」と伝えている。
 
 共同通信や「しんぶん赤旗」のまとめを読むと、TPP交渉への参加に反対する意見、TPPには慎重に対応すべきだという意見が国民の間に広がりつつあることがうかがえる。
 なのに、全国紙やNHKは「日本はTPP交渉に参加すべきだ」と主張し、それに賛成する人たちの意見を載せるばかりで、こうした全国各地の動きを伝えないのはなぜだろう、と思わずにはいられない。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

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