昨日(2013年12月3日)の12時から日比谷野外音楽堂で「TPP決議の実現を求める国民集会」が開かれた。主催は、全国農業協同組合中央会(JAグループ)、全国農業会議所、全国漁業協同組合、全国森林組合連合会、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、大地を守る会、パルシステム生活協同組合連合会、社団法人中央酪農会議、主婦連合会が参加した「TPPから『食と暮らし・いのち』を守り、『国会決議の実現』を求める実行委員会」。
年内妥結に向けて、今月7日からシンガポールで開かれる参加国閣僚会合に先立ち、アメリカから相次いで政府要人が来日し、農産品の全面的な関税撤廃を強硬に迫るなかで開かれた集会だけに、重要農産品を関税撤廃の例外扱いとすることなどを日本政府に求めた衆参農林水産委員会の決議を厳守するよう求める声が会場を覆った。集会の後のデモ行進でも「国民との約束を忘れるな」といった気迫のこもった唱和が続けられた。
私は「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の呼びかけ人として連帯のあいさつをした。また、集会に続くデモ行進(会場から霞が関官庁街→国会→永田町の自民党本部)にも参加した。
以下は、あいさつの読み上げ原稿である。
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12.3 TPP決議の実現を求める国民集会での連帯のあいさつ 読み上げ原稿
醍醐 聰
皆さん、最近よく「TPPはここまで来たら、もう決まりでしょう」と話しかけられます。しかし、「ここまで来たら」と言われますが、どこまで来ているのでしょうか?
交渉を主導しているアメリカでは、11月13日に、与党民主党の議員201名のうちの151名が連名で、貿易促進権限を持っている議会との協議をないがしろにしてTPP交渉を進めているオバマ政権を厳しく批判し、このままでは議会の権限をオバマ大統領に委任するのは難しいと警告する書簡を提出しています(注1)。
参加国間の交渉はどうなっているでしょうか? さる11月13日、ウイキリークスが公開した知的財産権分野の協定草案によれば、医薬品の特許権を強化しようとするアメリカのいくつかの提案に対して、参加国12か国中、8か国が、項目によっては10か国が反対し、アメリカは孤立した状況になっています(注2)。年内妥結どころではないのです。
こうした状況にあせったのか、7日から始まる参加国閣僚会合を前にアメリカ通商代表部のフロマン代表が来日し、日本が聖域とする重要品目の関税の完全撤廃を強硬に迫ったと伝えられています。
しかし、日本の国権の最高機関たる国会の決議を踏みにじってでも重要農産品の関税を撤廃させようとするアメリカの行動は、それ自体がすでに日本の主権を侵害してはばからない傲慢な押し売り商法です。
その一方で、アメリカは米豪FTAで世界水準よりも1.5倍から2倍も高い国産砂糖を関税で守ることを取り決め、TPP交渉でもこの協定を見直さないと早々と宣言しています(注3)。
とすれば、日本はアメリカから誰が何回来ても理不尽で身勝手な要求をきっぱりと拒否し続けるよう政府に求めます。
アメリカが強行に主張する先発薬の特許権の強化は、途上国の人々の命綱となっている安価なジェンリック薬の普及を遅らせる非人道的な提案です。と同時にそれは、現在先進国で最低の22%にとどまっているわが国のジェンリック薬の普及率を2018年までに60%以上にするという厚労省が定めたロードマップ(注4)にも逆行するものです。
私たち大学教員の会は、TPPの脅威からわが国の主権と国民益を守り抜くために、さらには途上国の人々と連帯して、人の健康と命よりも企業の利益を優先させる非人道的なTPPの妥結を必ず阻止するために、TPPに反対する弁護士ネットワーク、主婦連合会と共同の呼びかけ団体となって、今月8日、ここ日比谷野外音楽堂でこれまでで最大規模の集会とデモ行進を行う準備を進めています。
皆さん、今が正念場です。日本の主権と国民益を守り抜くよう、国会決議を実現するために連帯して頑張りましょう!
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(注1)151名の民主党議員が連名でオバマ大統領宛に送った書簡の全文は次の記事の中にカラー付きで記載された、The first letter, を開くと閲覧できる。
http://thediplomat.com/2013/11/congress-may-have-killed-the-trans-pacific-partnership/
>(注2)11月13日にウィキリークスが公開したのは8月にブルネイで開催された参加国交渉会合で配布された知的財産権分野の草案とみられる。その全文目次は次のとおりである。
https://wikileaks.org/tpp/
この中で特許権に当たるにはSection E Patentsで、QQ.E16:US:Pharmaceutical Productsが医薬品関連の条項である。
(注3)「砂糖、米国でも聖域 TPPよそに手厚い保護」(『朝日新聞』2013年3月24日)は米国の国産砂糖の保護政策と交渉の場での米国の例外なき関税撤廃要求の自己矛盾を次のように指摘している。
「約15万人が携わり、約100億ドル(約9500億円)の規模をもつ米砂糖産業は、手厚く保護されてきた。現行法では国内消費量の85%程度は国内で生産されるべきだと規定されている。」「これらの結果、米国の砂糖価格は世界水準に比べrと5~10割増しだ。」
「2005年に発効した米豪自由貿易協定(FTA)で砂糖は関税自由化から除外されている。TPPでも同様の姿勢で、通商代表部(USTR)のマランティス臨時代表は20日、『すでにTPPメンバー国と結んだFTAの内容は見直さない』と『聖域』にしようとしている。」
(注4)厚労省が発表した最新のジェンリック薬の使用促進政策は次の文書に示されている。<
「後発薬のさらなる使用促進のためのロードマップ」(厚労省2013年4月5日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002yu25-att/2r9852000002zb0m_1.pdf#search=’%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8D%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF+%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97′
これを見ると、ジェネリック薬の普及率(数量ベース)は2009年時点でアメリカ72.0%、イギリス65%、ドイツ63.0%、フランス44.0%、スペイン37.0%に対して日本は22.0%で極端に低い水準になっている。
壇上からみた集会の光景
初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載 http://sdaigo.cocolog-nifty.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion4675:131205〕