1.またまたお天気の話題から
このところ雨の多い天気が続いている。ドイツには「梅雨」というはっきりした季節は無いはずだが、それでも今の時期は一種の「梅雨」に当たるのかもしれない。昔、語学学校に居た時分にドイツ人の女教師から、この時期のドイツは雨が多くて嫌だという話を聞いたことを想い出す。
ただ、ドイツが日本と違うのは、雨がよく降るからと言って、むしむしするという感じは無い。どちらかといえば、肌寒くて気持ちよい。夜も薄い布団をかけてぐっすり眠れる。
しかし、何日も雨模様が続けば、ここでも「蚊」が多く発生してくる事がある。周囲に多くの樹木や公園がある環境では、あちこちに水たまりができやすいのだ。蠅もうるさいが、安眠を妨害することは無い。蚊は一匹いても眠れなくなる。その一匹のために、何時間も眠い目をこすりながら格闘しなければならない。実際にこれには「根性」が必要だ。日本のように「蚊取り線香」など備えている家は多分、ほとんどないから、こいつを打ち取るまでは眠れないのだ。電気を消したとたんに、頭の近く、耳のそばで「ブーン」という何とも薄気味悪い、ドイツの戦闘機「メッサーシュミット」の様な羽音が聞こえて来る。とたんに、こちらも戦闘態勢になるというわけである。
表現が大仰すぎると言うなかれ。これは経験してみないと分からないだろう。ドイツ語にも「蚊」という言葉を使った言い回しで「針小棒大に言う」という次のような表現がある。aus einer Mücke einen Elefanten machen(文字どおりには、「蚊から象を作る」)
「蚊」はドイツ語では、MückeとかMoskitoと言うが、Moskitoの方は英語から来た言葉の様だ。
それはともかく、東京で「梅雨」が明けた途端にドイツは「梅雨」入り。日本が暑くなった途端にドイツは涼しくなる。友人たちとのメールのやり取りが、この点でちぐはぐなのが面白い。
この家(僕らが間借りしている家)には、猫2匹、犬1匹、ウサギ2匹、人間3匹(家主と僕ら)が住む。家主が仕事の時などは、僕らが犬の散歩役である。何という犬種かは知らないが、小さな犬(Miaという名前)で、何でもスペインから彼女が持ってきたそうだ。実際に「連れてきた」のではなく「持ってきた」がふさわしい。持ってきてから今年で3年目になる。身体はそのままで大きくはならないのだが、鳴き声は年々大きく、うるさくなる。いつもは隣の公園(Kurpark)で用を足させたり、散歩させたりするのだが、ある日、買い物に連れて行った折に、思い切って周辺の山道を30分ほど散歩させてみた。小さいせいか、やはり相当疲れたらしくて、その夜遅くに大家が仕事(本業が終わった後のアルバイト)から帰ってきてもあまり鳴かなかった。今度からこの手で行きたいと思っている。
僕は今まで猫と犬はあまり仲好くないと思っていた。しかし、この認識は甘かった。この犬(雌)と、雄猫(5歳,Simba)は至極仲良しなのだ。朝早く、飼い主が犬の散歩に出掛けると、必ずこの猫(やんちゃでいたずら者)がついてくる。最初のうちは、帰りも一緒だったが、その内一緒には帰らなくなり、まさに野生に返ったかのように、公園中、あるいは近隣の家の庭などを自由気ままに荒らしまわっている。かつてはジャンプ一閃、蠅を捕る名人だったが、今は鳥を捕るほどの俊敏さを持つそうだ。
ところが、この猫、外で名前を呼んでも来る気配がないのに、犬を連れて公園に行けば、どこからともなく現れて、犬にじゃれついたり、序でにだろうがこちらにまで愛嬌をふりまいてくる。頭を撫ぜてやるのだが、うっかり手を出せば噛みつかれたり引っかかれたりする恐れがあるため、こちらはおっかなびっくりだ。
「チビ犬Mia」とは仲良く、臭いをかぎあったり、大きな尻尾を犬の背中に乗せたり、身体をすり寄せたりしてじゃれている。
他の犬が来ると途端に、猫の方は背中を丸めて臨戦態勢に入る。かなり大型の犬でも、この猫の敏捷性にはかなうまい。「チビ」の方は、すぐに仰向きに寝ころんで、お腹を見せながら無抵抗を示す…。
猫のご帰還は、夜遅くなってからの犬の散歩のときに、再び現れて、一緒に帰宅する(なんとなくこのところそれが通例になってきた)。飼い主に、外に出しっぱなしだと、車に轢かれて危ないよ、と注意した。
「でも、私が呼んでも来ないんだから仕方ないよ。あれは機敏だから車には轢かれないだろ」と、にべもない返事。
雌猫(この雄の母親Kimya)の方は、部屋の中や、時折ベランダで寝そべっている。実際にはこちらの方がかなり凶暴で、噛みついたり、引っ掻いたりは勿論、鳥や蝙蝠を捕って食ったりもするそうだ。飼い主がびっくりして泣いている時があった。ドイツは人も動物も虫もたくましく生きている。ゲルマンの野生の血が脈々と受け継がれているのだろう。
「哲学者の道」(Hardegsen)入り口
ドイツはいたるところに「哲学者の道」があるのかもしれない。上の写真はここHardegsenのものである。有名なのは、ハイデルベルクであるが、イエナにもあった。
近くの散歩道
2.このところの話題など
日本では15日の正午過ぎに、悪名高い戦争法案=安保法案が衆院平和安全法制特別委員会で、与党単独による強行採決で可決されたという深刻なニュースが飛び込んできた。
しかも、その直後の記者団との会話で、当の委員会の浜田靖一委員長(自民)は、「法律10本を束ねたのはいかがなものかなと私自身も思っている」だの「(政府側の)答弁内容ももっと分かりやすく、思い切った議論を本来はするべきだった。慎重になりすぎている部分もあるかもしれないが、少々質疑と答弁がかみ合わないところもあったのは事実だ」などとぬけぬけとほざいている。無責任さと今更の自己保身に怒りを覚える。
政権側の責任者の一人ですらこのように述べる、こんな暴挙は決して許されるべきものではない。かかる暴挙に対する国民的な闘いはまさに今から始まらなければならない。
一方、ドイツでは、やはり一番の話題はギリシャの債務危機問題である。“DIE ZEIT“の論調はこのところかなり苛立ってきている。これだけ時間をかけてやってきた(最後の詰めには17時間もの会議が行われた)のに、結局はギリシャの民族主義的な横車に振り回されただけではないか、という論調からの憤懣である。ギリシャ債権の最大の保有国はドイツである。そして、EU首脳、特にドイツのメルケル首相はギリシャへのGrexitをちらつかせながらの最後通牒を行い、その結果ついにチプラスから緊縮財政改革案の再提出の約束を取り付けた。チプラスはベネズエラのチャベスをモデルとして頑張ったようだが、ついには力尽きたのであろうか?(メルケルがプーチンに手を引かせた結果だ、との推測もあり得るらしいが…?)
ギリシャでは、総人口の4分の1が医療保険に入っていない、その上、銀行が事実上閉鎖されているため、国内では医療薬品の不足が深刻さを増している。それに追い打ちをかけるような、年金の切り下げ、公務員給与の引き下げ、などの緊縮財政改革案。一方で、金持ちたちには、いち早くギリシャからの脱出を試みる動きがあるようだ。
国民の間では当然、チプラスの公約違反、国民投票の結果への裏切り、に対する猛烈な反対運動が起きている。これらを暴力的にねじ伏せることが可能であろうか。ギリシャの債権危機問題はまだまだ予断を許さないように思う。
別の話題では、周辺国からドイツやフランスへの亡命者(難民)の急増問題がある。ドイツでは、南部バイエルン州のパッサウなどに政治的難民が大挙して押しかけてきている。これら難民は政治的亡命者(Asyl)と呼ばれているが、これら難民の受け入れ問題、あるいは当座の住居や食糧など、生活保障の問題などがあり、地方自治体は財政的にも音をあげているとのこと。新たな南北問題の深刻さを、特にヨーロッパでは強く感じざるを得ない。
中国への関心も高い。「中国の新シルクロードの夢」と題されたDIE ZEITの記事によれば、「Brics諸国家は西欧の主導権に対抗している:数十億の長期投資によって、中国はユーラシア地域を結び付けようとしている。ロシアは積極的(自発的)なパートナーである」とある。
中国は以前からヨーロッパの経済的な弱小国への援助などを積極的に行い、ヨーロッパ進出の地歩を固めてきた。当然その中国にとってギリシャは要衝である。日経新聞によれば、「中国国有の海運最大手、中国遠洋運輸(コスコ)はギリシャの最大港湾、ピレウス港のコンテナ埠頭の運営権を握り、港自体の買収を検討中」という。「2月には同港に中国の軍艦が寄港」。中国の新シルクロード構想にとって、ギリシャは格好の相手国になりうるかもしれない。この点、国内にEU脱退派を多く抱えているため、ギリシャ支援に国内資金は出せないとする英国のキャメロン政権とは大違いである。
<2015.7.16記>
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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