ちきゅう座の読者、関係者の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
先ず、この機会に感謝申し上げたく思いますのは、ウエブサイトちきゅう座の各領域にわたって文章をご投稿いただいている投稿者の方々に対してであります。本年もなにとぞご健筆をふるって戴けますよう心よりお願い申し上げます。更に日ごろちきゅう座の管理、運営面における実務的作業に尽力されている運営委員、編集委員、技術委員の方々に対してもこの場を借りて御礼申し上げますとともに、本年も一層充実した運営が行われますよう努められることをお願い申し上げます。
本年以後は日本社会も一層社会的諸情勢が厳しさを増していくことが予想されるからであります。これに伴って、ちきゅう座の様なメディアの社会的使命の実現が一層要請されるにいたっていると考えられるからであります。
新年は明けましたが、なんとなく気分がすっきりしないと感じられている方も多いのではないかと推察いたします。日本社会がいかなる方向へ動いていくか見定めることができないためかもしれません。それは主に昨年末の総選挙の結果においても現れたことといえるように思います。この選挙においては11月に衆議院を解散した安倍総理の思惑通りの結果が生じてしまったといえるかもしれません。同総理は、アベノミクスの続行をもってこの道しかないとするスローガンを掲げて選挙を戦いました。
アベノミクスの成否は既に明白となったのではないでしょうか。極端な金融緩和によって円安株高が生じ、株式を保有しているような富裕層、所有者階級は富を増大させましたが、資産を保有していないような国民大衆は一向に恩恵にあずかれず、中には貧困が一層進展してしまった人もいます。こうした二極化の進展は多くの人が指摘しています。今後アベノミクスを断行しても、格差、貧困を拡大させることなく大勢の有権者の生活を向上させることなど出来るでしょうか。私はそれは無理であると考えます。安倍政権は既に一年半以上前から巨額の政府資金を公共事業・建設事業に散布し、景気を回復させ成長を高めようとしてきましたが、成果ははかばかしくありませんでした。
このような経済環境であるにもかかわらずに有権者の多くはアベノミクスの続行を望んだのです。私は有権者の8割近くは、中小企業者とその労働者を含めた労働者階級であると思います。この労働者階級の大部分の人は、自らの階級的利益を放棄して、対立する所有者階級の利益のために投票したといえると思います。この社会的矛盾を何と考えたらよいでしょうか。有権者大衆は、低俗なメディアなどに思考力を奪われることなく、現在の社会経済環境はどのようなものであるのか、自らの社会的地位はどのようなもので、社会を前進させるにはどのように振舞えば良いかについて深く考え、主体性を持って投票行動を行うべきでしょう。そうでなければ、第二次大戦後に与えられた戦後民主主義は、いっそう形骸化していくでしょう。
安倍政権は、当面は経済の回復を第一の課題として掲げていますが、実際にはこの二年間に特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認の閣議決定等に布石をおいてきた点からも言えるように、最終的には平和憲法の改正こそが真意であろうとみる人が少なくありません。そのための来年の参院選で自民・公明が3分の2の議席を確保するまでは、あまりこの重大問題を表面に出さないように慎重に政権を運営していくだろうとの見方もあります。安倍総理はこれまで海外諸国の首脳と会見したりして派手なパフォーマンスを行ってきましたが、実際には政治的な仕事を多く行ってきたわけではありません。それ故、問題は山積しています。従って安倍総理は、山積した政治課題を次々に処理せねばならない立場にあるわけですが、自民、公明の与党議員数が3分の2を優に超えているからと言って、円滑に難問が処理できるということにも必ずしもならないのではないかと考えています。それは今日、安倍政権の暴走を許さない制約要因もあるからです。言うまでもなくそれは、政府が地方と共に1000兆円を超える累積債務としての借金を抱えているという事実です。もし、国債市場において国債価格の下落=国債金利の上昇が生ずるなら、日本政府の財政の赤字は火の車となり、財政破綻が生ずることは明らかで、日本はその瀬戸際にあるということです。
現在の日本は約80年以前の情況と似て来たという人がいます。国際関係と諸条件は違いますが、確かにそのようにいえる側面はあるように思います。79年前の1936年には、2.26事件が起き、陸軍内の派閥の一つであった皇道派の青年将校によって、当時の大蔵大臣・高橋是清が暗殺されるという事態が生じました。高橋氏は、ケインズ政策として政府が発行する国債を日銀が直接に引き受ける方策を採用したのですが、その方策は通貨量を増大してインフレを引き起こすので、インフレ増進を危惧して途中でやめてしまったのです。そのためには軍事費の拡大を抑止せねばならなかったので、軍事費を削ったため、青年将校の怒りをかったのです。この2.26事件が起きたため、その後、日本の軍部独裁体制が強化されるようになり、軍国主義化・戦争への道が必然化していったと思います。
国債増発の問題と関わって軍国主義化したという歴史的過程を私たちは改めて凝視せねばならないと思います。第二次世界大戦当時とは比較にならない程軍事技術が発展してしまった今日では、私たちはいかなる戦争でも決してこれを惹き起こしてはなりません。人間を殺す愚かな戦争への道を選択してはならないのです。そのためにも、ちきゅう座での情報や論議が、これをご覧になる一般の方々に少しでもお役に立つようであれば、ちきゅう座を運営する私どもにとってこれほど幸いなことはありません。どうぞ私どもの意のあるところをお汲み取り下さり、よろしくご支援のほどお願いいたします。
2015年元旦
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