2017年ドイツ紀行(1)ヨーロッパは異常気象か?

著者: 合澤清 あいざわきよし : ちきゅう座会員
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今年もドイツにやって来た-6月はフェストの季節

例年は6月終盤になってドイツへ来ることになっているのだが、今年はホームステイ先のPetra小母さんから22日に来るようにと要請があったため、急遽予定を変更して少し早めにやって来た。

Petraさんの話だと、この時期にいろんなところでFestがあるから、それを見せたいと思ったそうである。なるほど、我が家(Petraの住居)のすぐ側の瀟洒な公園(Kurpark)でも、23日~25日にかけてGartenfest(ガーデンフェスト)と名付けられたフェストが行われていた。公園の中に張られた多くのテント(Zelt)の内外に園芸品(いろんな花々や民芸品や園芸耕作用器具、あるいは農産物や紅茶など)が、所狭しと並べられている。

 

 

公園脇の坂道を少し上った所に立つ小さな古城(Burg Hardeg)の石垣の周辺には野外ビアホールのテントが立てられ、この近くの有名なBierstadt(ビール名産地)である「アインベック」で醸造される「アインベッカーEinbecker」ビール(なんでも1250年ごろから醸造されていると言われる)が飲める。

物の本によれば、かのマルチン・ルターがこのアインベッカーを飲んで、『人類にとって最もうまい飲み物は、アインベッカーだ』と絶賛したという。

ドイツの宗教家は、般若湯を隠れて飲む我が国の坊主と違って、堂々とビールを飲んでいたというのが面白い。

また、今年は行きそびれたのだが、ゲッティンゲンでもBierfestがあったらしく、その流れからか、われわれの行きつけの居酒屋は土曜日の夕方から大入り満員の大盛況で、表の道路に空席待ちの人垣ができるほどであった。私など、傍目には、よくぞドイツ人はあの相撲取りのような大きな身体で、あんな狭い席に縮こまって楽しめるものだ、と感心してしまう。平均身長180センチと言われ、おそらく体重は130キロ以上と思われる太鼓腹の大男が4人がけのテーブルに6人で座っている図を想像してもらいたい。噴飯ものである。

毎年フランクフルトでつまずくのが常態化してきた-ドイツの鉄道のいい加減さ

ここ数年、必ず起きるのがフランクフルト駅での列車の大幅遅延である。ICEはドイツ鉄道自慢の新幹線特急列車であるはずだ。そしてわれわれも毎年必ず数回はこれを利用している。また毎度毎度、怒りを通り越して、絶望的な諦めとDB(ドイツ鉄道)への失望を味わうことにもなる。どうしてこんなにいい加減なんだろうと。これがあの正確無比で、謹厳実直、生真面目といわれるドイツ人(英国やフランスでは、この種の大幅遅れは当たり前だそうだが)のやることなのか。

今回も、飛行機は予定より早く3:45にフランクフルト空港に着いた。Petraさんとの待ち合わせの約束(7:00~7:30の間にゲッティンゲン駅に迎えに来ることになっている)には十分な時間(フランクフルトからゲッティンゲンまではICEで約1時間50分)である。

ところが乗り込んだICEが一向に発車しないのである。しかも次々に乗客が増え、大きな荷物を引きずった人々(われわれもその中の一員だが)によって通路までふさがれてしまう。大柄のドイツ人が、大きなキャリーなどの荷物を持って車内をあちこちと動きまわり、挙げ句には通路に座りこむ有様である。

われわれも大きなキャリーとリュックを持ち、車両の片隅に立ちずくめで、彼らが歩き回るごとに身を小さくしてよけなければならない。飛行機の中での睡眠不足となんともいい加減な社内放送(いつ出発できるのやらも不明瞭)でイライラは募るばかり。

こういう環境下でも、よかったと思えることが一つある。すぐ近くで座っていた若い女性(多分女子大生)が、われわれのすぐ隣で立っていた老婦人に自分の席を譲ったのである。こんな大混乱の中で、なかなかできるものではないと感心した。また、同じその女性が、私が持っていた携帯電話(充電していないため、どこかで充電できないものかと電源を探していたのだが)を、充電してあげましょうと言って自分がもと座っていた席の下の方のコンセントにつないでくれたのである。非常に感じのよい親切な人に出会えたのは幸運だった。

電車が動き始めたのはそれから約1時間後で、ノロノロと走って、次の駅フルダ(Fulda)まで40分ぐらいかけて(普通には20分程度)やっとたどり着いた。そこでまた大勢が乗り込んで、先ほどと同じことが起きる。もう車内も通路も満員の有様である。車内放送は無責任にも、「また遅れることがあります」とすましている。車掌が来たので、先ほどの若い女性が、どういう時間の予定になるのかと聞いていた。車掌曰く「I don‘t know.」

フルダから次の駅カッセルまでまたノロノロ運転が続く。いつの間にか、Petraとの約束時間は過ぎている。カッセル駅に着いた時に先ほど充電した携帯で彼女に電話した。「今カッセルにいるが、電車がここに止まったままで、いつ動くか分からない」と。Petraらしい返事が返ってきた。「わかった。そこで降りて待っていなさい。すぐ迎えに行くから」

列車を降りるときに先ほどの女性に挨拶をした。「どうも色々有難う。友人の女性がここまで迎えに来てくれるそうだから、ここでおります」

この後ICEはいつごろ動き始めたのであろうか?このまま乗っていたら、ゲッティンゲンには何時に着いたのだろうか?こんなことを考えながら電車を降りてカッセル駅前でPetraさんを待った。

ヨーロッパは異常気象か?

Petraの車に乗って教えられたのは、このところゲッティンゲンやハーデクセンは連日の雨や風(小台風Gewitter)が続いて、町中が水浸しでさんざんな目にあっているという情報である。ひょっとしてそれが原因でICEが大幅に遅れたのかも、とも思う。しかし、毎年同じような遅れが繰り返されるとなると、やはりDB(ドイツ鉄道)の側にそれなりの責任はあるだろう。民営化されて、毎年確実に運賃は値上がりしている。サービスは、よくなったところはあるが、こういう大幅遅れやなんとも無責任な対応などが改善されたとは思えない。このままでは長距離バスなどに客足を取られることになるのではないだろうか。長距離バスの運賃は比較にならないくらいに安いし、座席も快適で、混雑した客車内での不快感もない。日本でもやたらに高級感をあおる豪華列車ばかり走らせているが、社会全体が低迷の一途をたどるなか、所詮は一時的なブームで終わるのではないだろうか。いつまでも格差に胡坐をかく時代でもなかろう。

それはともかく、24日付のちきゅう座の記事(童子丸開氏の「スペインのクソ暑い6月」https://chikyuza.net/archives/73939 を読んで、やはり今年の夏はヨーロッパは異常気象に見舞われているのではないか、との恐れを持った。スペインやポルトガルでは夏至前というのに連日カラカラ天気の40℃という日照りが続いているという。

一方ドイツでは、少なくともここ中央部のニーダーザクセン州では、連日の雨続きで地面は緩み、道路工事もストップしたままである。ハルツ台地での山崩れも心配である。気温は、日昼は日本並みの蒸し暑さで35℃くらいにもなるが、寒暖差が激しいため、朝晩は異常に冷え込むこともある。

異常気象もさることながら、この童子丸氏の記事を読んで、スペインばかりではなく、わが日本も同様に社会内部が支離滅裂で、支配者階級の腐敗・堕落(アベシンゾーが関係していると疑われている、加計学園、森友学園問題をおざなりにしか追求しない国会、司法界。またタックスヘイブンによる脱税への追求が一向に進まない状況など)は誰の目にも明らかなはずである。それなのに、相変わらずノーテンキでその日その日を野球やサッカーや享楽に費やして面白おかしく過ごしている選挙民たち。両者は同じ根拠よりなる双生児であろう。社会の腐敗、それ故にやがて来る崩壊は一方の側だけで成り立っているのではなく、両者が相まって成立しているのである。それ故にその根底に向けた闘い抜きには解決しえない課題を持つのである。

 

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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