2025年が明けた・・・!・・・?

「2001年の米国における9・11同時多発テロをきっかけに、アフガン戦争、イラク戦争、パレスチナ紛争、北朝鮮による核実験、イランの核疑惑と、世界を揺るがす事態が続出し、いまだ世界の前途に明るい展望が見えてこない・・・・」

今から18年前の3月、このブログを始めるにあたって、われわれは市民の発言を必要とする理由をこう述べた。(本ブログの「発刊にあたって」)

しかし、その後も地上から戦火は消えず、さらにここ数年は消えるどころか、誘導ミサイルやドローンなど、その間に「進歩した」兵器が日常的に飛び交い、大量の人命を 奪い、広範囲の生活インフラを破壊し続けている。そしてその惨状がやはり「進歩」した伝達手段によってほぼ同時的に世界中に伝えられ、それを見ることが全人類のほとんど生活習慣の一部となっているという、なんとも名状しがたい状況が続いている。

しかも、その戦いの内容がなんとも理解しがたい。2022年春に始まったロシア大統領・プーチンのウクライナ侵攻にせよ、23年秋からのイスラエル首相・ネタニヤフのガザ攻撃にせよ、第三者が理解できるような、とまでは言わなくとも、すくなくとも理解させようとする戦闘開始理由はさっぱり聞こえて来ない。

プーチンの場合、ウクライナの東部4州の領有権や現在のウクライナによる統治に異議あり、などが侵攻理由とされているが、それをきちんと国際社会に理解してもらうべく説明することなしに、いきなりウクライナの首都キーウにミサイルを撃ち込んだ。「特別軍事作戦」などと、自ら「特別」と言ったのはおそらく第三者に理解してもらえるような理由なしの身勝手な行動であることを本人も心得ているからであろう。

ネタニヤフの場合もそうだ。反イスラエル勢力「ハマス」がミサイルをユダヤ人地区に撃ちこんだ、百何十人(?)かの人質を返さない、という理由で始めた攻撃を1年以上も休むことなく続け、住民を4万人以上も殺し、ガザをほとんど焦土と化しても、なお攻撃の手をゆるめない理由はなんなのか。仕返しという以上のことは、われわれは聞かされていない。理由は人には言えない、ということなのであろう。

しかも、イスラエルの場合、これだけ武力を振り回すと、武力に対するブレーキがすっかり緩んで、ことあるごとに他国にむけてもそれを発射するようになった。そんな無法行為にも国際社会はもう「慣れた」ということなのか、驚いたふりさえしなくなってしまった。恐ろしいことである。

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そこでもう少し考えてみると、今、続いているプーチンとネタニヤフの戦争はこれまでの多くの戦争とは違う点がある。それは戦争といえば、われわれの常識ではすくなくとも国家の意思、あるいは国家に準ずる組織の意思によって起こされるものであった。最近は聞かなくなったが、「戦争の大義」などという言葉があった。そして第三者はその「大義」、戦争の主体の意図や意思について論じ、対処の仕方を考えてきた。

しかし、プーチンにしろ、ネタニヤフにしろ、せいぜい「相手がけしからん」という程度のことしか言わない。国連など国際組織やほかの国々が何と言おうと開き直って黙って武力行使を続けても、ロシア自身が国連安保理の常任理事国である以上、国連軍や多国籍軍を組織することはできない。

なぜ彼らは武力を振り回しているのか。私見ではプーチンにしろ、ネタニヤフにしろ、自国内で圧倒的に支持をもつ指導者でありたい、あり続けたい、という私欲からである。もし彼らが権力を失ったら、これまでの彼らに対する反感が吹き出してきて、それこそ命さえ危ない。ウクライナとの戦争ではからずも世界が目にした、これまでプーチンの協力者であった民間武装部隊オーナー、プリゴジンのあの奇怪な死にざま(殺され方)を見れば、その闇の深さがわかる。

今、ウクライナに対するプーチンの攻撃に対してはかなりの国からウクライナに支援の手がさしのべられてはいるが、それも時とともに徐々に息切れしてくることは避けられない。なんとも奇妙な歯がゆい状況である。この状態が続けば、プーチンはいずれ「ピョートル大帝の生まれ変わり」といった称号をまとって、終身大統領も夢ではなくなるであろう。

ネタニヤフの場合はもっとひどい。さまざまな理由があるのであろうが、まず米がはっきりネタニヤフを悪いと言わない。独をはじめ欧州の国々もなんとなくそれに追随しているように見える。これではネタニヤフの野望は怖いものなしである。彼はその政治経歴において、さまざま怪しげなことを重ねてきたため、無官になればその法的責任を追及されるだろうとはかねて伝えられてきたところだが、おそらくこのパレスチナ人大量殺りくによって「ユダヤ民族の救いの星」といった称号を手に入れたいのであろう。

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こう見てくると、いったん開き直れば、武力行使というとんでもないことも、やればやったでなんとかなるという風潮が今後、世界に広がることが恐ろしい。北朝鮮がプーチンの頼みに応じて1万人(あるいはもっと?)もの兵員をウクライナ戦線に送り込んだ。こうして恩を売っておけば、自らの「来るべきその日」にしかるべく助けてもらえると計算してのことであろう。

中国がウクライナの戦況および国際社会の反応を真剣に研究していることも当然である。かつて「民主の証し」と自ら誇った「国家指導者の任期は2期10年まで」という憲法の規定を自分の手で反古(改定)にして、3期目に入ったものの、さすがに国民に飽きられてきた習近平政権は宿痾ともいえる不動産不況の深刻化もあって、足どりは重い。

そこで「台湾統一」という民族の課題を自らの手でなしとげることが習自身の悲願でもある。プーチンがウクライナで成功すればおおいに奮い立ったであろうが、現況はそうは運んでいない。しかし、習が台湾統一をあきらめることは絶対と言っていいほどない。ウクライナがどういう形で決着するかがカギとなる。世界がウクライナに「飽きて」、目を離す時が危険である。そしてその時が迫っているような感じを私はもっている。

世界はネタニヤフにもっときびしくなければならない。自分の命令で4万人以上もの人間が死んだことを彼は誇りにこそ思え、罪深いとはつゆ思わないらしい。しかし、黙って見ていることは彼をますます傲慢にするだけであろう。どうすればいいのか。

報道(エルサレム=共同)によれば、ネタニヤフは1月20日のトランプ米次期大統領の就任式に出席する見込みだとイスラエルのメディアが12月25日に報じた、そうである。ネタニヤフに対しては国際刑事裁判所(ICC)が11月に逮捕状を出しているが、米はICCに非加盟であるために同氏をこうそくする義務はないということである。

日本の石破総理が就任式に招かれているのかどうか、私は知らないが、もし招かれているのなら、是非とも「ネタニヤフとは同席できない」と言って、出席を断ってほしい。そしてなるべく同調者を募って、世界の風をネタニヤフに感じさせてもらいたいものだ。         今年、世界の風はどちらに向かうのか・・・。

初出:「リベラル21」2025.01.01より許可を得て転載
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