FoE Japanの満田です。
原子力規制委員会が、4月3日(金)まで、原子力災害対策指針改定に
関して、パブコメを募集しています。
http://www.nsr.go.jp/procedure/public_comment/20150305_01.html
もともと、原子力災害対策指針は、避難の基準となる空間線量率が非常に
高いこと、原子力防災重点区域(UPZ=原発から30km範囲内)が狭いこと
など、問題の多いものでした。しかし、この改定案は、さらに問題の多い
ものとなっています。
以下にパブコメ情報および何が問題かのポイントをまとめてみました。
http://www.foejapan.org/energy/action/150327.html
お気づきの点があれば、ご連絡ください。
また、ぜひ、みなさまからもパブコメを出していただければ幸いです。
【ポイント1.
SPEEDIなどの放射性物質の拡散予測の活用について削除された】
「SPEEDIのような大気中拡散シミュレーションを活用し、放射性物質の放出
状況の推定を行う」という文言が削除されました。モニタリングによる実測
値によって対策が判断されることになりました。
これについて、原子力規制委員会では、「福島原発事故の際にSPEEDIは機能
しなかったため」としていますが、SPEEDIが機能しなかったのは、SPEEDIの
問題ではなく、運用する側の問題でした。予測ではなく、モニタリングに
よる実測を用いるということは、放射性物質が拡散して、空間線量率が
あがってから、すなわち被ばくしてから、避難や屋内退避を指示が行われる
ということを意味します。
パブコメ例:
福島原発事故時にSPEEDIが機能しなかったのであれば、運用を強化する
ための対策をとるべき。実際に空間線量率が上昇してからの判断では、
判断が遅くなる。SPEEDIと実測モニタリングを組み合わせ、判断を行う
べきである。
【ポイント2.
30km以遠の防護措置は屋内退避だけ。安定ヨウ素剤の配布はなし】
新たに書き込まれた30km以遠の放射性物質の防護措置としては、屋内退避
だけで、ヨウ素剤の配布などは盛り込まれていません。
パブコメ例:
30km以遠の防護措置として、屋内退避だけでは不十分である。ヨウ素剤の
配布や、早めの避難判断などについても、盛り込むべきである。
【ポイント3.
あいまいにされたPPA=プルーム(放射性雲)通過時の防護措置の範囲】
現在の原子力災害対策指針では、「プルーム(放射性雲=放射性物質を
含んだ気体のかたまり)通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する
地域(PPA)の検討」とし、プルーム通過時の防護措置の必要性について
記述してあり、それらについては、「PPAの具体的な範囲および必要と
される防護措置の実施の判断については今後検討」とされています。
これが、報道などでいう30km以遠の対策に該当します。
今回の改訂案ではPPAの概念は削除されています。
原子力規制庁文書によれば、「プルームに対応するための特別な枠組みを
新たに設定する必要はない」としています。
また、30km以遠について対策が必要な区域については、「重点区域外に
拡張される屋内退避の実施範囲は予防的に同心円を基礎として行政区域
単位等の実効的な範囲で設定するべき」としています。
しかし、福島原発事故の教訓を踏まえれば、30kmをはるかに超えて、
プルームが通過し、影響は同心円に広がったわけではありませんでした。
原子力規制委員会は、プルームによる放射能汚染の対策が困難であるため、
検討を逃げ、PPAの文言自体を削除してごまかしたのです。
パブコメ例:
PPAの概念について指針に明記である。また、放射性物質の影響は、
同心円上に広がるべきではないことを踏まえ、気象条件等も考慮し、
SPEEDI等を活用することを明記すべきである。
【ポイント4: 高すぎる避難基準、遅すぎる避難指示の判断】
もともと原子力災害対策指針で、即時避難の基準はOIL1=500μSv/時、
一時避難の基準はOIL2=20μSv/時と非常に高い基準が設定されています。
OIL2は観測してから1日程度で判断し、1週間以内に一時移転の指示が
出されることになっています。
今回の改訂で、OIL2の測定方法がさらに改悪されました。
「緊急時モニタリングにより得られる空間放射線量率(1時間値)が
OIL2の基準値を超えたときから起算して概ね1日が経過した時点の空間
線量率(1時間値)で判断することが実効的」としています。
たとえ、実測で20μSv/時を超えたとしても、その時点では判断せず、
1日通過した時点の空間線量率が20μSv/時を超えてるかどうかで判断
することになります。
パブコメ例:
OIL1、OIL2の基準が高すぎる。また、OIL2である20μSv/時が観測されて
1日経過した時点での空間線量率で判断するとしているが、20μSv/時は
十分高い値である。このような運用では、避難指示の遅れや被ばくの
過小評価につながる。
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急ではありますが、以下のように、政府交渉とパブコメ・セミナーを
開催します。ぜひご参加ください。
【原子力防災に関する政府交渉&パブコメ・セミナー】
どなたでも参加できます。パブコメ・セミナーは、今回の指針の改定の
ポイントの解説と、パブコメをその場で書いてしまうというものです。
◆日時:4月2日(木)
【政府交渉】16:00~17:30
【パブコメ・セミナー】18:00~19:45
◆場所:参議院議員会館 B107会議室
◆資料代:500円
◆問合わせ:原子力規制を監視する市民の会/FoE Japan(090-6142-1807)