安倍晋三首相は、憲法96条改正発議(各議員の3分の2以上の賛成)を過半数に変えることを企図している。そこには9条改正、国防軍設置、さらに集団的自衛権の解釈拡大を目指す方向が隠されている。
樋口陽一、奥平康弘教授ら学者が「96条の会」結成
この改悪を重大視した憲法学者・政治学者の有志が5月23日、「96条の会」を結成した。
代表の樋口陽一東大名誉教授らが同日、東京・永田町で記者会見した。護憲派だけでなく、改憲派の論客として知られる小林節慶応大学教授も発起人として参加。奥平康弘、上野千鶴子、坂本義和、長谷部崇男、高橋哲也、山口二郎氏ら知名学者が発起人に名を連ねている。
過半数で〝国民に丸投げ〟など許せぬ
東京新聞5月24日付朝刊によると、樋口代表は「憲法改正権(96条)によって、その条文自体を変えるのは、法論理的に無理な話」と指摘。「国民が決断するための材料として、国会で3分の2の数字を集めるのが国会議員の職責。それを軽視し、過半数で国民に丸投げするのはおかしい」と述べた。世界的にも、改憲手続きを緩和する改憲をした例は「知る限りない」と指摘。山口氏も「96条の争点化は前代未聞で、保守政治の劣化だ」と話し、強い危機感を表明したという。
その「96条の会」の会見に小林教授が出席したことに驚かされた。同氏は超党派の議員らの前で講演。「生まれて初めて、(護憲派の)樋口名誉教授と同じ側に座った」と笑いを誘い、それほどの危機的状況であることを強調した。
小林教授は約30年間、自民党の勉強会で指南役を務め、自衛軍や新しい人権の規定を唱える改憲論者。96条先行改憲の問題が浮上して以降は、テレビやインターネットの討論番組に精力的に出演し、真っ向から反対の論陣を張っている。
一方、一般公開された立憲フォーラムは、小林教授を講師に招き講演会を行った。国会議員約100人も参加。幹事長の辻元清美衆院議員は「立憲主義という言葉が広がり、国会の空気は変わってきた」と話した。
憲法は国民ではなく、「権力者」を縛るもの
小林教授は「『憲法を国民に取り戻す』と言いながら、権力者が国民を利用しようとしている」と安倍首相を批判。国民の義務規定を増やした自民党の憲法草案についても「憲法は国民でなく権力者を縛るもの、という立憲主義を理解しておらず、議論にならない。 この数週間の議論で国民の立憲主義への理解が深まったと感じている。今後も、(衆参両院の)3分の2の賛成を獲得できるような改憲論を堂々と語りたい」と持論を述べた。
著名学者が「96条改悪」阻止のため大同団結したことは稀有なことで、安倍政権の意図の危うさを警告したものと評価される。
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