新着情報 No. 11 2020年7月17日
良く知られているように、日本金属学会欧文誌編集委員会は2019年3月末、研究不正が疑われた井上明久 元東北大総長を筆頭著者とする複数の論文について、科学的に不適切な箇所を具体的に示した上で、「撤回措置」としました。この学会の動きを踏まえ、東北大学の調査委員会(*)の元メンバーの二人 あるいは日本金属学会の元会長ら六人が、研究担当理事等へ申し入れをしました(2019年5月10日、11月14日付)。また、研究者有志65名が大野英男東北大学総長に対して、要望書を提出しました(2019年9月26日付)。それでも、東北大学首脳部は沈黙を続け、まだ説明責任を果たしていません。「学術研究の信頼回復のチャンス」のはずなのに、この状況は誠に遺憾です。この「学術研究の信頼回復が滞っている現状」を憂いた2人の東北大学の名誉教授が、それぞれの立場から、改めて「論文不正疑惑問題」に関する寄稿をされたので、紹介します。
齋藤 文良名誉教授の記事
(「河北新報」2020年7月10日朝刊)
河北20200710齋藤
早稲田 嘉夫名誉教授の記事
(「週刊金曜日」2020年7月10日1288号)
週刊金曜日20200710p
(*)この調査委員会は、「99年論文に97年論文データの無断転用の事実や、二つの論文でジルコニウム基合金のものとして掲載していた写真が、96年論文で公表済のネオジウム基合金の 直径3mm、5mmおよび7mmの3本の写真の流用であった事実(#)」等を認定しています。でも、それらは故意であったと疑われるという少数意見もあったが、『それを証明しうるだけの証拠もなかったため、告発事項に関する研究不正があったと認定することはできなかった』 とまとめています。しかし 委員6名全員が「研究不正とは認定できない」という結論を支持したわけではありませんでした。半数の3名が「問題あり」との意見でしたが、3年にも及ぶ調査中に3名のうち1名の委員が病気で亡くなられました。その後、残った2名の委員は、調査報告書に「問題あり」との付帯意見を反映させること等を条件に、委員長らに押し切られる強制終了が実態だったこと、さらに報告書には付帯意見の一部しか記載されない等の問題点が判明しています。 [参考:たとえば 河北新報・朝日新聞 2019年5月11日]
(#)ジルコニウム基合金の写真に、全く別のネオジウム基合金の写真が流用だった事実を報じる新聞記事
河北新報-井上問題2013-3-22
初出:「東北フォーラムホームページNo.4 井上元東北大総長の研究不正疑惑の解消を要望する会」より許可を得て転載:https://sites.google.com/site/forumtohoku4th/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔study1131:200719〕