こいのち通信 2020年10月より
(世田谷こどもいのちのネットワーク通信)
前回に続き、また11月にまたぐような10月号です。発送作業の日が30日なんて、アリバイづくりみたいです。涼しく、時には寒いくらいの秋、いかがお過ごしでしょうか。 家にいる、出かけない、コミュニケーションはオンライン、会議はズーム・・・、あれよあれよという間に、それが当たり前のようになってきています。電車なんて、春以降乗っていない、と家にこもっている人と、私みたいに、どこでも行っちゃう人と、生活様式が極端に分かれてしまっているようです。それでも、GO TOトラベルとか、イートとかの誘いには、けっこうみんなノッているのですね。ま、払った税金の還付ということですから、ありがたくもないのですけれど。でもそういうことができるのは、ある程度余裕のある人たちで、本当に大変な思いをしている層には届かないのですから、そこでしょう、お金の手当をしなくてはならないのは、と複雑な思いです。経済優先で、緩和した結果、ヨーロッパは再び大変なことになっています。日本だって、収束への道は程遠く、なのに、スガ首相はオリンピックを開催すると豪語し、どういうつもりなのか、と呆れてしまいます。
なんでもかんでも中止、延期だった時期から、こわごわ、少しずつ工夫、配慮しながら活動を開始していっているようで、数ヶ月前は、予定も何も書き込んでいなかった手帖のスケジュールがけっこう埋まっています。11月にさまざまなイベントがあるのですが、参加希望の問い合わせを受ける日々です。10月31日、11月1日はボランティアセンターで、「干し柿づくり」。毎年、センターの入り口に、たくさんの柿がところ狭しと吊るされているのをごらんになっている方もあるでしょう。今年は、外で稲のわらを綯う作業をすることにしています。11月14日のこいのち主催の、世田谷区児童相談所の活動についてお話を聴き、「子どものいのちを守るということ」を考え合おうという講演会には、関心のある多くの方々からの参加希望をいただいています。11月29日、延期に延期を重ねた「映画とワインの夕べ」が、三度目の正直で実施の予定。午後と夕方、二回上映で対応します。いつものように、食べながら飲みながら、というわけにはいきませんが、昨年12月に非業の死を遂げられた中村哲さんのアフガニスタンで用水路を作る活動を映像で追い、中村さんと現地でお仕事をされていた方のお話に耳を傾け、中村さんの遺志を共にする機会にしたいと思っています。情報に振り回されずに、考えながら、悩みながら、一歩一歩進んでいきたいと思います。
真ん中が佐世さん、右は万千子さん
コロナ禍がずっとどんよりと世界を支配している中、10月4日、大切な仲間であった矢島佐世さんが急に旅立たれました。ちょうど一年前に、ふくしまっこの大切な仲間、首藤万千子さんを見送ったばかりだったのに・・・。佐世さんは、こいのちの事務局の一人でもあり、物静かだけれど、しっかりと自分の考えを持ち、いつも頼みにしていたのです。私は、もう20年くらいも昔、ピースボートの船上で彼女と出会い、仲良くなって、世田谷でのさまざまなイベントや自分自身の活動に声をかけるようになりました。「こどもいのちのネットワーク」、「神戸をわすれない」、「雑居まつり」、「福島のこどもたちと共に・世田谷の会」、「世田谷ボランティア協会」、「ボロ市」・・・、私が関わっている活動の傍らにいつも佐世さんはいてくれ、私の片腕でした。ボラセンの厨房で、どれだけたくさんの食事の準備を一緒にしたことでしょう。野沢三丁目の「テットー広場」では、小さい子どもたちをまるで自分の孫のように可愛がり、若いおかあさんたちに頼られていました。毎年の下高井戸シネマでの「ドキュメンタリー映画祭」、ロビーでは佐世さんが、区内福祉作業所で作られたクッキーや手作り品を、声をかけながら販売していました。着物がとても似合っていた佐世さん、着物についての造詣が深く、ボロ市でのチャイルドラインのお店では、着物選び、接客と大活躍。打ち上げ、懇親会、さまざまな場で、ワインの大好きな佐世さんとは楽しく飲みました。昨年から入退院をくりかえしていた佐世さんから、亡くなる一ヶ月くらい前に電話があって、「弥生さんのオムレツが食べたい」と言っていたので、持っていくからね、と、家に届けるのを楽しみにしていたのです。果たせなかったことが残念でたまりません。その頃、何人かの仲間にも電話をしていた佐世さん、そろそろお別れが来ることをわかっていたのでしょうか。先日、彼女が編集長をやっていた「ふくしまっこ」の、「広報チーム」で編集長だった矢島さんを偲ぶ会を行いました。6人集まって、ワインをしたたかに、そこにちゃんと一緒にいた彼女の分も飲みました。相棒、飲み友達を失ってしまいましたが、これまでのように静かに見守ってくれると信じています。合掌。(星野弥生)
『福島の子どもたちは今・・・―まだ終わらない放射線の影響と、私たちの課題―』
10月10日 OurPlanetTV 白石草さん講演会
続くコロナ禍で人々が集まりにくい中、「福島のこどもたちとともに・世田谷の会」が活動広報のため一般に向け例年行って来た講演会を今年はどうすべきか、議論の末選んだ手法がZOOMとリアル併用のかたち。運営委員の中でもデジタルに強いメンバーがタッグを組んで、なんとか当日に漕ぎつけました。会場36名、ZOOM16名の参加を得て行われた試行錯誤の試みでした。
IAEA、UNSCEAR、WHOなどの国際機関がチェルノブイリ原発事故の影響として唯一認めている小児甲状腺がん。白石さんは、福島でもこれが認められない限り他の問題が認められることもないはずだと、まずはそこに焦点を当てて追い続けておられます。福島復興特措法に基づき、福島県では2011年から「県民健康調査」を実施。原発事故当時18歳以下だった福島県民38万人を対象に2年ごとの甲状腺エコー検査を実施しています。現在5巡目とのことですが、1巡目からのう胞2㎝以上、しこり5㎜以上の子どもたちは2次検査に回されることになっていました。しかし、2017、2018年以降は2次の対象者の結果を公表せず一般の保険診療に回す、穿刺細胞診を見合わせるなど、結果の全体像が見えなくなっています。悪性疑いの公表数は199とされていますが、総数は350ぐらいではないかと推測されるとのこと。通常100万人に数人程の確立のところ、それを遙かに超える数字が出ている事実を隠そうとする力が働いているようです。
2巡目で悪性ないし悪性疑いの判定を受けた71人のうち9割が1巡目では二次検査不要のA判定でした。がんは2年かけて成長し、3.56㎝に育っているものもありました。福島の手術では甲状腺半摘出が多いのですが、そのために再発が起こっています。全摘の後、その先にできるのはアイソトープ治療。これは本人が放射線源になるほど大量の放射性ヨウ素を服用する完全隔離の厳しい治療で、家族にも会えず、副作用が酷くても看護師すら診に来てくれません。高校3年の夏休みに手術を受けたある娘さんは、大学には入学したものの、その後の検査で肺転移が認められ、半年で大学を中退せざるを得ませんでした。首元の手術の傷跡のためにファッションも楽しめなくなるなど、年頃の若者が人生の入り口で味わうには酷な体験です。一番の心の負担は、地域での差別を恐れて、内緒で治療しなければならないことです。
このような事態が進行しているのに、この2年マスメディアはまともに取り上げることもなく、聖火リレーの出発点になったJヴィレッジは美しく整えられ、子どもを地域に戻したいと富岡、双葉でも学校が再開される動きが続いています。しかし、戻ってきているのは他の地域では生きにくく困難を抱えた家庭や子どもたち。彼らは人が少なく刺激も少ない地域で不便な生活を余儀なくされています。
今、子どもたちの安全を無視する力が強く働いており、原発推進派が言っているのは、除染はしない、避難もしない、検査もしないということ。事故が起きても何も怖くないという新しい神話が作り上げられようとしています。
お話の後、会場から発せられたのは、このような流れに対して、私たちは一体何ができるのか、という問い。白石さんからの提案は次のようなものでした。県は今後検査を続けるかどうか調査をしようとしているので、モニタリングポスト廃止の動きを撤回させた時のように、みんなで大声を上げて騒ぐこと、さらに環境省にも継続して市民の声を届け続けるべきだ、ということ。また、コロナ禍の中で保養も中止になり孤立しがちな福島の方々に、こちらからメッセージカードを送るなどできるだけ連絡をとること。そのような細やかな繋がり作りの積み重ねによって、汚染の中にいても余り意識を持たず暮らしている親御さんたちにも、あらためて食や生活の在り方を見直す必要性が伝わるかもしれない。たくさんの人数でなくても、一人一人に触れるお付き合いが大事であると。
そうですね。大きく声を上げる動き、小さく地味であっても丁寧に繋がりを作り続ける動きを織り交ぜ、諦めないで声を上げること、支えることを継続して行きたいものです。(佐藤由美子)
【当日のアンケートから】
●メディアからは伝わって来ない、現場の真実を知ることができた。
●「事故が起きても怖くない」神経と原発再稼働、最終処分場などの動きは、表裏一体と思います。なんとかしなければ。
●あったこと(あること)をなかったこと(ないこと)にして、核(原発)保有を継続しようとする勢力に怒りを新たにしました。
●東京にいる一個人でもできることを、やり続けようと思います。そのためにも、このような情報を得ることは大切だと感じました。
★世田谷こどもいのちのネットワークの仲間になってください。つうしん、お知らせが届き、講演会などの参加費が無料になります。 年会費3000円 郵便振替口座00100-9-396998
連絡先:星野弥生 Tel&Fax 03-3427-8447 070-5554-8433 email:marzoh@gmail.com