鎌倉平和学習会「鎌倉市への抗議文」

神奈川県鎌倉市が2018年の憲法記念日に開いた講演会で、市民の実行委員会が講師として提案した憲法学者・木村草太さんの起用を、市側が2度にわたって拒否していたことがこのほど分かった。4月30日付東京新聞によると「講演で憲法9条に言及する懸念がある」というのが、市側の拒否理由。講演は別の講師を招いて実施された。この事実が明るみに出たあと、松尾崇鎌倉市長は「偏った講演、中立性を損ねる」と見解を述べている。
私たち鎌倉平和学習会は、鎌倉市による「講師拒否」や「市長見解」を日本国憲法に抵触する重大な問題と判断した。3年前の事態ではあるが、きょう松尾市長に宛てて「抗議文」を提出し、議会やメディアにも同文を配布した。以下は同市長に宛てた文面のコピーである。(2021年5月10日)

2021年5月10日
松尾崇鎌倉市長

鎌倉平和学習会
(代表 神谷扶左子、ほか6人)

抗議文

私たち鎌倉平和学習会は、鎌倉市で日本国憲法を拠り所に様々な問題を学びながら活動しています。無党派の市民運動として、これまで改憲の動きや教育の右傾化、原発再稼働などへの抗議活動に参加し、また安全保障関連法や沖縄の辺野古新基地建設など戦争につながる政策に反対してきました。

2018年の憲法記念日に起きていた鎌倉らしくない事態を、市長にはもう一度振り返っていただきたい。この日に開催された講演会のために、市民の実行委員会が講師として二度にわたって提案した木村草太さんを、主催する市側は重ねて拒否していたのです。拒否理由が「9条に言及する懸念」と報道され、私たちは鎌倉市民として大変ショックを受けています。9条への「懸念」について、松尾市長は「政治的に相違な意見がある中で、市がどちらかを推進するような講演会を主催すべきではない」との見解を示しました。

果たしてそうでしょうか。憲法記念日の講演会には、憲法を熟知する講師を選びたい。実行委員会がそう考えるのは自然なことです。日本国憲法には国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの原則があることを私たちは学んできました。憲法についての講演では、平和主義を支える9条に言及するのは避けられません。それに対して、市は「中立性を損ねる」として排除したのです。憲法への意見が異なるとき、市長には行政に対し常に憲法を尊重擁護する側に立たせる義務があります。講師拒否が報道され、市側こそ憲法を損ねている実態が明るみへ出たのです。

鎌倉市が「政治的中立性」を理由に、市民に開かれた講演会で特定の講師を拒否したことは、憲法学者である木村さんへの「差別」に当たる可能性もあります。また市側の拒否は、明示されたルールに基づいていません。市民に異なる意見があるテーマこそ議論を重ねるべきです。中立性を口実に議論を避ける市の姿勢は、市民の表現の自由を制限し、思想信条の自由を侵す行為であると考えます。私たち鎌倉平和学習会は憲法を学ぶものとして、市に対して真摯な反省と関係者への謝罪を強く求めます。(2021/05/09 AW)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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