あけましておめでとうございます。
<ハートランドとリムランド>
昨年8月、占領20年にして米軍はカーブルを撤退した。旧ソ連軍は軍事介入10年にして1989年撤退し、2年後にソ連は崩壊した。その70年前、幾度ものアフガン戦争を重ねて1919年に大英帝国は撤退した。昨年の米軍撤退の180年前、1841年にイギリス軍がカーブルから撤退していた。
かつて世界の海洋を支配し植民地帝国を築いた大英帝国、後を引き継いだアメリカ帝国は海洋支配に加えさらにグローバルな宇宙編成部隊構築してユーロアジアであるハートランド(ユーラシア大陸)を包囲している。
植民テロ国家イスラエルと共に「反テロ戦争」策謀を編み出し幾つもの国をカオスに陥れた帝国アメリカは、いま中東から中央アジアからつぎつぎと撤退を余儀なくされている。このハートランド(世界島)の奥深くには、中国が地政学的土台を着々と築いている。
振り返れば、香港はイギリス軍がカーブルから撤退した翌年1842年に大英帝国に割譲された地であり、台湾は日清戦争の結果1895年に大日本帝国に割譲された島である。その香港と台湾を、大日本帝国の公然たる植民地侵略と闘ってきた中国共産党が取り戻そうとするのは理の当然だ。
いま、「中国脅威」「台湾有事」が叫ばれ、「日米同盟盲進」の愚が実行されつつある。先島・沖縄・奄美の島嶼戦略は、住民を再度生贄にするだけで「有害無益」(中村哲)である。また、朝鮮戦争の特需だけでなく分断継続の利を貪り続けてきた戦後日本のあさましさは、己の悪事を棚に上げて盗人猛々しい恫喝を繰り返している。
カーブル陥落後、タリバンはまんまと罠に嵌ってしまった。国庫はすでに空でありアメリカ制裁の資産凍結後ただちにIMFの引出権(SDR)停止措置が追い打ちとなり、何百万人もの無辜の民が「人道危機」に陥っている。自らの根拠なき軍事介入の失策には口も目も塞ぎ、人道危機をつくっておいて「人道と民主主義の国」とは、呪いあれだ。
イスラエルが事あるごとにハマースを叩いてはガザ攻撃をしてきたように、「敵」をデモナイズ(悪魔化)しては、制裁・扇動・軍事介入を恣にしてきたカウボーイ帝国アメリカの尻馬に乗ったまま一国内の思惑だけでは、人権や正義、脱植民地主義という普遍的視点を見失うことになるだろう。(米国プロパガンダに乗じた典型が、自公政権の島嶼戦略と軍事費急増だ。)
ハートランドとリムランドの役割、中軸国と周縁国、海洋国と内陸国の地政学的役割は自ずと異なるものであろう。世界の国々の多様性が尊重される所以でもある。
もはや7年前の古証文だが、拙訳2篇をわがリムランド(周縁地域)の脱植民地の道すじを紐解くよすがにしていただければ幸い。パレスチナ連帯・札幌:松元保昭
■アルフレッド・マッコイ「地政学からみたアメリカの世界的凋落―21世紀におけるワシントン対中国」(ここ数年で、すでに中国は著者の予測の過半を実現している。) https://bit.ly/3JDFwZ2
■ペーター・ケーニッヒ「勝利ではなく―カオス、これが帝国の眼目だ」(帝国の所業の実態です) https://bit.ly/3eMqmT6