量的引き締め(QT)の実現可能性
1月26日に実施された「米国のFOMC (連邦公開市場委員会)」では、「利上げの後に、量的引き締め(QT)の実施」が述べられていたが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「大膨張した中央銀行のバランスシート残高を、どのようにして正常化するのか?」、あるいは、「今後、誰が国債を買うのか?」ということでもあるが、実際には、きわめて至難の業とも考えられるのである。
より具体的に申し上げると、「過去数年間に、中央銀行が大量購入した国債」については、その裏側に、「中央銀行の負債」である「民間金融機関からの借り入れ」が存在するのである。つまり、「日本」の場合には、「民間金融機関から約520兆円の資金を借りて、約521兆円もの国債を買い付けた」という状況であり、このことは、「米国のFRB」や「欧州のECB」についても、似たり寄ったりの展開だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「1999年から始まった日本の実質的なゼロ金利」が「世界のお手本」となり、その後、「先進各国が、きわめて無謀な金融政策を実施した」という状況だったわけだが、この理由としては、「1995年前後の米国の金融大混乱」、そして、「その後に大膨張したデリバティブのバブル」が指摘できるのである。つまり、現在の「量的緩和(QE)」と呼ばれる政策については、「1971年のニクソンショック以降、どのようにして、マネーの大膨張が発生したのか?」を理解する必要性があるのである。
しかし、実際の議論としては、単純に、「実体経済の回復により、金利やインフレ率が上昇を始めている」というような「的外れの議論」が、いまだに頻繁に聞かれる状況となっているのである。つまり、政府や中央銀行による「大本営的な発表」が、現在では、「マスコミ」にまで影響を与えた状態とも思われるが、このような状況下で必要なことは、「どのようにして、自己防衛を図るのか?」を、深く考えることでもあるようだ。
具体的には、「中央銀行のバランスシートを減少させると、市場に資金が回らず、1929年の大恐慌のような状態に陥る」という事実を理解しながら、「残された方法としては、以前から指摘していたとおりに、紙幣の増刷以外に存在しない可能性」を考えることである。つまり、「中央銀行のバランスシート残高」については、「今後、より一層の大膨張が予想される展開」のことでもあるが、この時の注意点は、「大量に増刷された紙幣が、貸付金などの名目で民間銀行に行き渡り、その後、われわれの手元に届く展開」に関して、決して見過ごさないことだと感じている。(2022.1.27)
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金融政策の転換催促相場
「1月26日」に発生した「金利の急騰(国債価格の急落)」については、本来、私が「2021年の11月23日」に想定していたものだったが、実際には、「暦のフラクタル(相似形)」のとおりに、「2021年末」に相当する「2022年の1月末」にまで、時間的な遅れに繋がったものと考えている。そして、今後の注目点は、「いつ、デリバティブの バブル崩壊が発生するのか?」ということであり、この点については、「2月に発生する出来事」を見ることにより、「正確なタイミングが予想可能ではないか?」と感じている。
より詳しく申し上げると、いまだに「約6京円」もの残高が存在する「デリバティブ(金融派生商品)」に関して、今までは、「量的緩和(QE)」の名のもとに、「隠蔽工作」が行われてきたものの、現在では、「紙幣の大増刷しか残されていない段階」とも言えるのである。つまり、「中央銀行のバランスシート」に関して、「紙幣を大増刷して、より一層、大膨張させる政策」のことでもあるが、今回は、このような「金融政策の大転換」に関して、明確に述べることができなかった状況だったようにも感じている。
そのために、表面的には、「金融政策の正常化」、すなわち、「利上げ」と「バランスシート残高の縮小」という発表に繋がったものと思われるが、この結果として発生したのが、「市場の過剰反応」とも言える「株価の急落」だったことも見て取れるのである。つまり、「市場の誤解」というべき反応に見舞われたわけだが、この点については、過去のパターンと同様に、「金融政策の転換を催促する相場」とも言えるようである。
具体的には、「1991年のソ連」や「1945年の日本」、あるいは、「1923年のドイツ」などと同様に、「大インフレを発生させることにより、過剰な規模にまで大膨張したマネー経済を縮小させる方法」のことである。別の言葉では、「実体経済を名目的に大膨張させることにより、マネー経済と釣り合わせる方法」のことでもあるが、今後の注目点は、「世界中の人々が、いつ、この転換に気づくのか?」だと考えている。
つまり、「中央銀行のバランスシート縮小」は、「1929年の大恐慌」のような状態につながるものの、一方で、「中央銀行のバランスシート大膨張」は、古典的な「大インフレ」に繋がる政策だからである。そして、「世界の金融当局者が、どちらの政策を選択するのか?」が、間もなく、判明するものと思われるが、実際には、過去の歴史が教えるとおりに、「大インフレによる国家債務の実質的な消滅」が選ばれるものと考えており、この時に、「デフレからインフレへの大転換」が本格的に発生するものと感じている。(2022.1.28)
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世界のマネー事情
最近の経済報道で驚かされることは、いまだに、「実体経済だけの議論」に終始し、「マネー経済に対する認識」が広がっていない状況でもあるが、今後の展開として予想されることは、「既存の経済学が、より一層、無力化し、その結果として、人々の混乱状態が加速化する可能性」だと考えている。別の言葉では、「世界のマネー事情」に対する興味と関心の高まりのことでもあるが、実際には、「現在の世界に、どれほどの債務残高が存在し、また、金利上昇により、どのような影響が発生するのか?」などの問題意識のことである。
より詳しく申し上げると、今までは、「金融のコントロール」が効いており、その結果として、「金融界のブラックホールにデジタル通貨を押し留める方法」、すなわち、「デジタル通貨が実物資産へ流れる事態」を阻止することが可能な状況だったのである。別の言葉では、「実体経済の議論」だけに終始することにより、「世界のマネー事情」や「お金の謎」などから、人々の興味と関心を逸らすことに成功していた状況のことである。
しかし、現在では、「中央銀行による国債の買い付け」などにより、「国民の預金」などの「デジタル通貨」を使い果たし、その結果として、「世界的な金利上昇」が始まった段階とも言えるのである。つまり、既存の経済理論では理解できない「大膨張した世界のマネー」が、「仮想現実」から「リアルの世界」へ移行を始めたものの、多くの人々は、いまだに、「景気が良い時にしか、金利やインフレ率は上昇しない」という誤解を持っており、そのために、「何が何だか、訳が分からない状態」となっているのである。
そして、過去の歴史が教えるとおりに、「大混乱の極みになって、ようやく、真理や実情が理解される展開」が繰り返されるものと思われるが、この点については、「日本の明治維新や第二次世界大戦の敗戦」などが典型例のようにも感じている。つまり、「心の底では、『何かおかしい』と感じながらも、意識や行動が変化しない状態」のことでもあるが、実際には、「周りの人が、徐々に、意識や行動を変化させることにより、全体としての変化が発生する展開」とも言えるようである。
別の言葉では、「時代の流れが、どのようにして決定されるのか?」という点に関して、結局は、「人々の意識と行動」が、大きな役割を果たしているものと思われるが、今後、最も注目すべき変化は、「世界のマネー事情が認識された時に、人々の行動が、大きく転換する可能性」であり、実際には、すでに始まった「通貨価値の下落(真のインフレ)」が、「決して、一時的なものでない」と、広く理解されることである。(2022.2.2)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion11801:220301〕