1月以来、NY株式市場の大幅下落が続いています。ウクライナという一過性の危機が主因ではない。2008年金融危機以来、中央銀行による金融資産買い取りという「異次元金融緩和」を続けてきたアメリカ連邦準備制度は、40年ぶりのインフレ昂進[ドル価値の低下]に直面して、利上げ(金融引き締め)に転換し、世界金融危機への再度の突入――アメリカの金融依存資本主義の崩壊――に向かっています。
この事態をどう捉えるか。戦後国際金融の枠組とブレトンウッズ体制崩壊後の「ドル本位制」とは何であったか。入江恭平氏は、貨幣論・信用論を踏まえて、世界金融危機を理解する見取り図を提案しています。
世界資本主義のこれからに関心のあるみなさまの、参加を呼びかけます。
●主催 世界資本主義フォーラム
●日時 2022年3月19日(土)13時30分~16時30分
●開催方式:オンライン
●講師 入江恭平(中京大学経営学部教授)
1949年生まれ。大阪市立大学経営学研究科博士課程単位取得退学。日本証券経済研究所主任研究員を経て、中京大学経営学部教授。研究テーマは、国際金融市場と国際銀行業との関係史。著書に『戦後国際金融の歴史的諸相 帰結としての世界金融危機』日本経済評論社2019。『金融の世界現代史』(共著、一色出版2018 第10章 アジア通貨・金融危機)。『金融の世界史』(共著、悠書館2012 第11章 現代国際金融の諸相)。『金融のグローバリゼーションI』(共著、1988年)、『アジアの証券市場』(共著、1993年)、『図説 イギリスの証券市場』(共著、2012 年)。論文に「世界金融危機 シャドーバンキング・証券化・ドル不足」(『中京経営研究』2012年)など。
●テーマ 戦後世界経済と国際金融危機
・ 経常収支危機から資本危機(capital crisis)へ
・ 2つのドル不足(dollar shortage)
●主旨(報告レジメ)
Ⅰ.世界金融危機の教訓
・世界金融危機を説明できないバーナンキと識者
Ⅱ.世界金融危機の動態
・パリバ・ショック(97年8月9日)からリーマン・ショック(2008年9月15日)へ
・ドル不足の発生(07年12月)からそのピーク(08年9月15日)へ
・パリバ・ショック以降のユーロ不足(Euro shortage)
・ユーロ危機(2010年5月~)におけるユーロ不足とドル不足
・コロナ・ショックにおけるドル不足
・―ドル不足やユーロ不足は一過性ではない=構造的
・その構造の実体は非米国籍銀行、あるいは非ユーロ域国籍銀行の資金調達構造にある。
・その帰結:中央銀行スワップ網の形成(米連銀、ECBが主導)
Ⅲ.資本勘定取引とはなにか?
・-経常勘定取引とはなにか?
・国際収支均衡概念の歴史性
Ⅳ・プレ・ブレトンウッズ体制下の外貨(foreign exchange)不足―日本のケース
・ポンド不足(pound・sterling)とドル不足の重層性
Ⅴ.プレトン・ウッズ体制下のドル不足とスワップ網、ドル・金防衛とスワップ
Ⅵ.金融危機の歴史:金融危機の主流は投資会社=金融仲介であって銀行危機
・金融危機と銀行
・リーマン・ブラザース破産をどう見るか
・パリバ・ショック以降のドル不足・ユーロ不足をどう見るか
・流動性危機=貨幣恐慌(Geld Krise=money crisis)である。
Ⅶ.結論
●参考文献
Allen,W.A.(2013)、International Liquidity and the Financial Crisis.
『資本論』1巻、1篇第2章~第4章
Borio,C (2019):”On money ,debt,trust and central banking “.BIS Working Papers no 763.january.Octorber
Borio,C and P Disyatat(2010):”Capital flows and the current account : taking financing (more) seriousry ” ,BIS Working Papers no 525.Octorber
Borio,C and P Disyatat(2010):”Global imbalanance and the finacial crisis : link or no link?”,BIS Working Papers,no 346,June.
Financial Crisis Inquiry Commisin(2011),The Financial Crisis Inquiry Report,January.
Keynes,J.M.”World Crisis and the way of Escape “,(london ,1932), The Collected Writings XXI Activities 1931-1939,World Crises and Policies in Britain and America,pp.50-63.
Marx.K.transrated by Moor,S.(1886):Capital .
Mcguire,P.et al.(2009b):”The US dollar shortage in global banking and the international policy response”,BIS Working Papers, No 291.
Shenk,C.R.,et al.(2020):”Central bank swaps then and now:swaps and dollar liquidity in the 1960s”, BIS Working Papers, No 851,April.
浅井良夫(2015)『IMF8条国移行-貿易・為替自由化の政治経済史』日本経済評論社
伊藤正直『戦後日本の対外金融―360円レートの成立と終焉ー』名古屋大学出版会
入江恭平(2019)『戦後国際金融の歴史的諸相』第5章 日本経済評論社
金井雄一(2014)『ポンドの譲位 ユーロダラーの発展とシティの性格』名古屋大学出版会
鈴木俊夫(1998)『金融恐慌とイギリス銀行業-ガーニィ商会の破綻』
西倉高明(1998)『基軸通貨ドルの形成』勁草書房
マルクス・エンゲルス 全集12巻、ニューヨーク・トリビューン寄稿論文(1856年6月21日第4735号。~1858年10月4日付け、第5446号)
Marx,K.(1857),Grundrisse der kritik der Kritik der politischen Okonomie,Ⅱ.Das Kapitel vom Geld
●参加方法 どなたも参加できます
(1)前日[3月18日]までに、yazawa@msg.biglobe.ne.jpまで、
・氏名[所属・立場など]
・ZOOMに接続するメールアドレス[申込みの際使ったメールアドレスと異なるとき]
をお知らせください。
(2)参加申し込み者に、事前に資料配付します。早めに申し込みを。
(3)フォーラムの1週間前までに、ZOOM接続情報を参加申し込み者に送信します。1週間前になっても届かなかったら、矢沢yazawa@msg.biglobe.ne.jpまでメールください。当日朝「リマインダー」(再送信)します。
(3)参加費 500円[あと払い]、支払い方法は、世界資本主義フォーラムのサイトをご覧ください。
https://www.worldcapital.online/
■2022年3月~4月のフォーラム予定 *いずれも13時30分~16時30分
3月19日(オンライン) 入江恭平「戦後国際金融と世界金融危機」
3月26日(オンライン) 伊藤誠「ソ連・東欧体制の崩壊と社会主義論」
4月16日(会場) 田中素香「ブレグジット後のEU」
4月30日(オンライン) 下斗米伸夫「プーチン・ロシアの世界戦略」