美男のペドロ・サンチェス・スペイン首相が西サハラの難民と被占領民を捨て、モロッコの王様に忠誠を誓いました。 一体、サンチェスに何があったのでしょうか? モロッコは何を仕掛けたのでしょうか?
サンチェスを信じていた西サハラの人々は戸惑いました。 西サハラの支援国や支援者はサンチェス発言に抗議し撤回を求めました。 国連和平交渉を潰そうとするサンチェスに、国連は制裁を科すことができるのでしょうか?
グアポ(美男)と接頭語が付く、ペドロ・サンチェス・スペイン首相
① 突然の美男サンチェス心変わり:
2020年3月18日、「スペインはモロッコの西サハラ自治州案を現実的解決策だと考えている。半世紀近く長引いている西サハラ紛争の解決に、この案は有効だ」と、ペドロ・サンチェス首相が声明を出した。モロッコ国王は大喜びし、MAP(モロッコ国営通信)は連日サンチェスを褒め讃え、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)ではスペインのモロッコ支持を大々的に宣伝し、ヨーロッパ諸国にスペインのような声明を出せと、迫った。西サハラをモロッコの自治州にするというのは、モロッコの西サハラ領有権を認めることになる。「ウクライナをロシアの自治州にしろ」と言うのに等しく、民族自決権も独立も自由も踏みにじった、一方的な独裁だ。
2020年12月10日、トランプ前米大統領が「西サハラはモロッコの領土」とサイン入りの声明を公表した悪夢を思い出す。トランプを操ったユダヤ人娘婿の暗躍を思い出す。
メルケル・前ドイツ首相が欠けたEUヨーロッパ連合は、モロッコの庇護国フランスが仕切ろうとしている。そんなEUヨーロッパ連合の中で、サンチェス・スペイン首相は、西サハラの民族自決権を認め、国連主導による両当事者の話し合いを支持していた。サンチェス・スペイン首相は、就任直後の国連演説で西サハラ人民の民族自決権施行を訴えた。2021年にはモロッコの反対を押し切り、ガリ西サハラ難民大統領にコロナ治療をスペインで施し、ガリの命を救った。2022年1月のデ・ミストラ当該地域ツアーには飛行機を 提供した。一貫して西サハラ人民を支援してきたペドロ・サンチェス・スペイン首相が、弱い西サハラ難民と被占領民を、予告もなしに捨てた。
② ただただ驚く西サハラ人民:
西サハラ人民は、信じていた美男サンチェスの、思いがけない<モロッコ支援声明>に、驚愕した。
モロッコがサンチェス声明を発表した翌日の2022年3月19日、西サハラ難民政府の大統領府が、「金曜日の午後に西サハラ問題に関してスペイン政府が出した声明は、危険極まりない国際法に違反する決定だ。モロッコの自治州案は、モロッコの西サハラ領有権を認めることになる。<モロッコ自治州案>は、UN国連もAUアフリカ連合もEUヨーロッパ連合も国際司法裁判所もヨーロッパ司法裁判所も、容認していない。その不法なモロッコの自治州案を支持する元西サハラ宗主国の心変わりは、俄かに信じ難い。スペインは直ちにサンチェス声明を撤回し、我々が信じてきた真っ当なスペインに戻るべきだ」と、強い抗議声明を出した。
3月21日、マドリッドに駐在するアブドッラ・アラビ・スペイン西サハラ難民政府代表は、「ペドロ・サンチェス・スペイン首相のモロッコ植民地容認発言には、我々西サハラ人民だけではなくスペイン人民もスペイン国会議員も唖然とした。11のスペイン下院の党派がサンチェス首相に、西サハラ紛争に関する方針転換の説明を求めて、国会喚問を要求した。上院議員や下院議員の有志たちが、国会会議場で西サハラの国旗を振ったり西サハラ国旗を纏ったりしてスペイン首相の間違った独断に抗議する中、3月22日にはホセ・マニュエル・アルバレス外務大臣が緊急に国会で苦しい釈明に追われた。
3月21日、ベルギーのブリュッセルに駐在するウビ・ブシャラヤ・バシール・西サハラ難民政府ヨ―ロッパ代表は、「サンチェス首相が突然出した西サハラ・モロッコ自治州の容認は、モロッコ移民問題とのバーター取引だ」と、モロッコ得意の交換恫喝外交を非難した。<移民問題>はサンチェス首相が就任して以来、脅しの材料にモロッコが使ってきた。
スペインには、モロッコ移民が約300万人いる。不法移民を入れると推計500万人近くになる。ヨーロッパを震撼させた欧州多発テロ犯人の大部分は、モロッコ移民だ。さらに2021年、スペイン飛地領セウタに約8,000人不法移民を越境させた事件は、記憶に新しい。
3月21日、ブリュッセルでの記者会見で、ホセ・ボッレルEU(ヨーロッパ連合)外交政策上級代表は「EUの西サハラ紛争に関する立場は、変わらない。国連決議を全面的に支持する。国連決議に双方の合意を得たのだから、国連のみの枠組みで解決しなければならない。国連には特別な責任がある。」と、語った。
3月23日、ニューヨークに駐在するシデイ・オマル国連西サハラ難民政府代表はアントニオ・グテーレス国連事務総長に緊急書簡を送った。その中でオマル代表は、「もしマドリッド(スペイン)が、アフリカ最後の植民地を開放しようとする動きの中で役割を担いたいのなら、スペインが示したモロッコ支持の立場を、まず、覆さなければならない」と強調した。そして、「西サハラ難民政府はスペインに、人民の領土と運命に関する法的な歴史的な責任を、問い質す。スペインには今も植民地西サハラの宗主国として法律上の管理責任がある。1975年、正式手続きをせず勝手に西サハラ植民地を放棄した元西サハラ宗主国のスペインは、法律上、今も西サハラ宗主国だ」と、国際法上は今も西サハラの植民地であるスペインに対し、その無責任さを糾弾した。
③ どうなる国連和平交渉:
2022年3月21日の国連定例記者会見で記者の一人が、「今日(3月21日)、スタファン・デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使がブリュッセルで、スペインが方針を変えた件に関し、ホセ・マニュエル・アルバレス・スペイン外務大臣に会った。それは、国連特使の方針変更を意味するのか?アルジェリアはスペインの方針変更に抗議して、駐スペイン大使を本国召還したが、国連に影響があるか?」と、ステファン国連事務総長報道官に問いただした。報道官は、「我々は勿論、変わらず国連決議2602(2021)やその他の決議を遵守し、国連和平プロセスを続けていく。だから、私は、我々の方向性とデ・ミストラのそれとは変わりないと思う。ご存知のように、デ・ミストラは今日スペイン外務大臣に会い、引き続きアルジェリアを含む関係者たちに電話をし、精力的に動いている。大使の召還に関して、ある大使は去りある大使が来る、、この世界では当たり前の光景だ、、」と答えた。
翌3月22日、定例記者会見で報道官が、「スタファン・デ・ミストラは月曜日にブリュッセルでスペイン外務大臣に会い、最近のモロッコとスペインの関係に関して討議をし、外務大臣から、西サハラに関し国連が目指している方向性に支持をするという約束を取り付けた。それは国連決議2602(2021)に基づく、双方が納得できる解決策を模索するというものだ。ミストラが政治的解決の建設的な再稼働に向けて努力することを、全ての関係者が期待している」と、正式声明を出した。
UAE(アラブ首長国連邦)が議長を務める3月国連安保理で、西サハラ紛争を取りあげることはありませんでした。 ウクライナ戦争を止められない国連ですが、国連自身が提案した和平策は実行して欲しいと、切に願います。
テドロ・サンチェス:1972年2月29日マドリッド生まれ、21才までアマチュア・バスケットボール・クラブで活躍し、社会労働党書記長を経て、2018年6月2日、スペイン首相に就任。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年3月28日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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