自民党・村上誠一郎の「国葬批判・アベ政治批判」

(2022年8月1日)
 猛暑とコロナ禍のさなかの8月である。異様な暑さの中で身近なコロナ感染者が少なくない。感染を自覚しても為す術もないとの声もここかしこに。こんな環境での感染は恐い。不要の外出を控えるしかない。不穏な2020年の夏の盛り。

 一抹の希望は、岸田内閣の支持率急落との報。「支持率が急落した理由は、国葬、旧統一教会、コロナの3つだ」というのが、元気のよい「日刊ゲンダイ」の見立て。その通りだろう。国葬と統一教会問題は、安倍批判と密接に結びつく。コロナも安倍以来の無策の象徴。結局、国民世論に急速に浸透してきた安倍批判が、安倍後継の岸田不支持となってきているのだ。この3点セット、もうしばらくは解決の兆しが見えない。この夏の暑さが身に応えているのは、実は、岸田と自民党なのかも知れない。

 こんな中、産経新聞のメールマガジンが、国葬賛成で鬱陶しい。
 「安倍氏は憲政史上で最長の8年余りの間、首相として公務についた人でした。選び続けたのはほかならぬ、われわれ有権者です。また、民主主義の根本になる選挙のさなかの暴挙に対し、民主主義の国として抗議の意思を示し、多くの人と主体的に確認し合う機会を持つことは、許容できることではないでしょうか」「今回の事件は、宗教団体に対する容疑者の私怨から端を発した凶行であり、民主主義とは切り分けるべきだという意見には首肯しがたいものを感じています。多分に衝撃や情緒に流されているかもしれないと顧みつつも、しかしながら民主主義への挑戦が、国家改造や政権転覆を狙うクーデターに限るものとは言い切れないのではないかと思うからです」
 
自信なく歯切れ悪く言い訳がましい産経の国葬賛成論。その怨み節が現在の情勢をよく表している。驚いたのは、これに続く次の記事。
 「安倍氏の歴史認識や憲法改正への意欲をかつて懐疑的にとらえていた米紙の社説、これが産経の紙面に「米紙 異例の『改憲支持』」という主見出しで掲載されています。」

 安倍も産経も、「アメリカに押し付けられた憲法」だから見直せ、と言っていたはずではないか。手のひら返して、アメリカの『日本国憲法改憲支持』を手放しで喜んでいるのだ。恥ずかしげもないあまりのご都合主義に、頭がクラクラする。あらためて暑さが身に沁みる。

 猛暑の中、配達された毎日新聞の夕刊に、「安倍政治の見直し、今こそ」の大見出し。おお、かくも機敏に自民党に代わる政権を求める声が、と思ったのは早とちり。「今こそ安倍政治を見直せ」と吠えているのは、自民党の村上誠一郎である。ウーン、安倍やその腰巾着や産経ばかりではない。村上のような硬骨漢も抱えているのが、自民党の強みなのか。

 彼の語るところはなかなかのものである。国葬の是非は、安倍政権の功罪に関わっている。彼の語るところを抜粋してみよう。

 「先日、ある首相経験者が私に言ってこられました。『どうして国葬なんですか』と。いったん流れができてしまうと、異論を言いにくくなる。これが人間社会の同調圧力かなと思う」

 「今回は非常にお気の毒な亡くなり方をされたから、非業の死を遂げた方を弔うのは自分としても感情的には理解できる。ただ、判断の明確な基準が必要です。例えば佐藤栄作さんや中曽根さん、おじいさまの岸信介さんも国葬ではなかった。なぜ安倍さんだけ国葬なのかというと、なかなか説明が難しい」「時の政権の恣意的なやり方だとの批判を免れない。もう少し腰を据えて幅広く考えるべきだったのではないか」

 「森友・加計・桜を見る会は国民の不信を完全には払拭できていないのではないか。森友問題では近畿財務局の職員が自死に追い込まれた。これらの政治的、道義的責任は安倍氏の功績とは別次元の話です」

 「解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認して立憲主義を否定し、そんたくするイエスマンばかりを登用する縁故人事がはびこり、財政・金融・外交が非常に厳しい状況になった。自由闊達な議論ができる本来の自民党に戻すべきです」

 「ロシアの民主主義が見せかけだと言うけど、日本も同じようになりつつあるのではないかと心配しています。堂々と議論し、適正な人事や正しい政策が実行されるべきですが、残念ながらそうなっていない。まっとうな批判勢力がないために選挙だけは勝つ。それは本当の信任ではないのです」

 「アベノミクスは成功したとは言えないと思います。財政出動と金融緩和というカンフル剤を打つだけで結局、成長戦略は十分な成果が上がってきていない。金融緩和をダラダラ続けているうちに円安・ドル高が進んだ。食料もエネルギーも輸入頼みだから、日本の富がどんどん流出しているわけです」

 「岸田さんに、アベノミクスを総括した上で新しいステージに移る気持ちがあるかどうか。世界最悪の借金財政なのに防衛費を2倍にするというのは非常に難しい」
 
 「野中広務元幹事長も言っていましたが『自民党は常にベストな政策をめざす』ということで党内の議論が活発化していました。亡くなった方のご冥福を祈り、事件の再発を防ぐことと、政策論争は全く別の次元の問題です。合理的な政治が行われなくなって被害を受けるのは国民ですから」

 これって、自民党? これもホントに自民党なの? 自民党って、いったい何なの? 

初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.8.1より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=19651
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12239:220802〕