(2023年1月15日)
参議院議員・井上義行と言えば、安倍晋三側近として知られた政治家。昨年7月10日の参院選で、安倍晋三がとりまとめた統一教会信者票によって当選した国会議員である。
井上義行当選後に、世論は統一教会批判一色となった。当然に、統一教会との癒着の深かった自民党・清和会への風当たりも強い。その渦中の井上が、朝日新聞の単独インタビューに応じた。思惑あってのことではあろうが、安倍後継勢力の心情を吐露して興味深い。
インタビュー報道の標題は、「旧統一教会の支援受けた自民・井上氏 山上容疑者へ『甘ったれるな』」というもの。朝日新聞デジタル1月11日19時の記事である。
「事件の一報をどう知りましたか」という問で始まる前半部分は、紹介にも批判にも値しない。後半をご紹介して、私の感想を添えておきたい。
――容疑者は犯行動機として、旧統一教会への恨みから「深い関わりがあった安倍氏を狙った」と供述したとされます
最初は、政治信条が合わないアンチ安倍さんの人物の犯行なのかと思いました。宗教団体とか、ましてや旧統一教会の存在が犯行動機になっているとは、みじんも考えませんでした。ただ、どんな理由でも人を殺すことは許されません。私の認識ではテロ行為だと思っています。
容疑者は絶対的加害者で、安倍さんは被害者なのになぜ安倍さんが統一教会と近かったと報道され、容疑者が気の毒だったみたいな風潮になるのか。そこに腹立たしさを感じています。
(「容疑者は絶対的加害者で、安倍さんは被害者」との認識が、社会とズレている。「山上は安倍晋三殺害に関しては加害者だが、その生育歴においては統一教会による虐待被害者であり、安倍晋三と自民党もこのこの虐待に加担している。また、「なぜ安倍さんが統一教会と近かったと報道され、容疑者が気の毒だったみたいな風潮になるのか」と言えば、「安倍さんが統一教会と近かった」ことも、「山上が気の毒だった」ことも、安倍陣営には如何に「腹立たしさを感じた」としても、真実だからである)
――母親による教団への高額献金で苦しんだと供述したとされることについてはどう思われますか
容疑者が言ったことをうのみにするって、テロリストの思うつぼじゃないでしょうか。まだ容疑者の供述は報道ベースで一部分に過ぎません。そもそも、教団を憎んでいたのに安倍さんを狙う動機にも矛盾を感じています。捜査当局が意図的に都合の良い情報を流している可能性さえあると思っています。
その上で、報道ベースの供述を信用していません。別の勢力によるテロの可能性だって十分にあり得るはずです。まずは裁判で本人の口から語られる動機を聞きたいと思います。
(なるほど、人は自分に不都合なことを信じない。あるいは、自分の信じたいようにしかものごとを理解しない。山上の報道ベースの供述は、陰謀論の類いだというのだ。さすがに、安倍晋三側近である)
――事件が起きてから、教団から選挙支援を受けていたことはまずいと思いませんでしたか
特に何も思いませんでした。選挙中に関わった教団側の人たちは皆優しかったです。必ず集合時間の30分前に集まり、まじめでもありました。容疑者が語る教団像と私が目の当たりにした教団像は違って見えました。
(この人には、まったく何の反省も悔恨もない。そして、今なお、統一教会と立場が同じなのだ。今に至ってなお、統一教会と手を切ろうという意思は毫もない。岸田自民党執行部はこれを放置しておいてよいのか)
――安倍氏が教団票を差配し、参院選ではあなたへの支援を指示したという指摘もあります
教団票について、私から安倍さんにお願いしたことも、安倍さんから聞いたこともありません。安倍さんが教団票を巡って、どのような動きをしていたのか、教団との関係がどうだったのかはわかりません。
(これを発言の通りに信用する人はまずあるまい。保守の政治家が、自分のボスの票のまとめ方に無関心であるはずはない。井上君、ウソをついてはいけない。キミの7代先に祟ることになる)
――安倍氏が亡くなった背景に、あなたが参院選で支援を受けた教団があった可能性を考えたことはありませんか
その質問自体が容疑者の供述を元にしていると思います。
(その回答自体が問題に向き合わない逃げの姿勢を意味している。警察が、安倍晋三を擁護する方向でのリークをすることはあり得ても、敢えて安倍批判につながる捏造リークをすることはあり得ない。このことは、井上の知悉するところであるはず)
たとえ、容疑者がそう言っていたとしても、私は全く同情しません。私は大根1本で1週間暮らしてきた経験があります。40歳にもなって、親の財産のことで苦しむなんて、甘ったれるなと思います。
(「私は全く同情しません」は、政治家として失格ではないか。せめて、「だからと言って、人を殺してはなりません」と言うべきだろう。その上で、山上の不幸を繰り返さない手立てについて語らねばならない。なお、「40歳にもなって、親の財産のことで苦しむなんて、甘ったれるな」は、加害者側を擁護したい一心でのトンチンカン。この人、貧しい人、弱い人、苦しんでいる人、差別されている人に、常にこう言っているのだろう。「私は全く同情しません」「大根1本で1週間暮らしていける」「甘ったれるな」と)
――事件後に明るみに出た教団が抱える献金問題や2世問題についてはどう感じていますか
2世問題や献金問題というのは教団だけの話ではなくて宗教全般に関わる話なので、私としてはコメントを差し控えたい。
(逃げてはいけない。「教団が抱える献金問題や2世問題について」、あなたは逃げられない立場にある。あなたに投票したすべての人に対する責任という見地からも、安倍政権を支えてきた保守陣営に対する責任としても、あなたは明確に述べなくてはならない。たとえ、その回答が「私は、統一教会と同意見です」「信教の自由を尊重すべきであって、信仰による高額献金規制はあってはならない」「2世だって、自分自身の意思で信仰を選び取っているはず」でもよい。その回答を是とするか否とするかは、有権者に任せればよい。何も言わずに、黙り込むのは卑怯千万、民主主義社会における政治家の態度ではない)
少なくとも、私は教団の教義についてどのように教えられ、どのように運用されてきたかは知らずに、家族の問題や反共産主義など共通のところで共闘していたので、教団そのものに着目している報道とは大きく認識が違っていると思います。
(こう言う弁解をするようでは政治家失格だ。「私は教団の教義についてどのように教えられ、どのように運用されてきたかは知ら(なかった)」ことが本当なら、無責任極まる。訳の分からぬ怪しげな団体から票をとりまとめてもらって当選したその不明を恥じなければならない。即刻、議員を辞職すべきではないか)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2023.1.15より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20622
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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