真のバリュー投資
「日本株を巡るPBRの1倍割れ」の議論には、大きな違和感を覚えざるを得ないが、その理由としては、「株価を決定するのが企業ではなく投資家である」という点が指摘できるからである。つまり、過去数年間は、「多くの日本人投資家が、大量の資金を米国のGAFAMなどに振り向けていた」という状況であり、また、「日銀のTOPIX買い」などにより、「大型株の優位」が継続していたことも見て取れるのである。
別の言葉では、今から40年ほど前の米国で、私自身が教えられた「真のバリュー投資」が思い出される状況でもあるが、実際には、「株式の価値(バリュー)は、将来の利益と株価との関係性で決定される」というものである。つまり、「分子に位置する将来の利益」に関しては、「これから数年間の企業利益を正確に予想する必要性」が強調されるとともに、「その利益の成長性が、現在、どれほど分母に位置する株価に織り込まれているのか?」を認識することである。
より詳しく申し上げると、「どれほど成長性がある企業でも、株価が高くなっていれば株式の価値がなく、反対に、成長性の低い企業でも、株価が安ければ価値がある状況」のことである。そして、この反面教師としては、「20年ほど前のITバブル」の時に言われた「IT銘柄はニューエコノミー銘柄であり成長性に富んでいるが、一方で、その他の銘柄はオールドエコノミー銘柄であり、成長性に欠ける」という認識が指摘できるようである。
しかし、その後の展開としては、ご存じのとおりに、「ITバブルの破裂」であり、また、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」でもあったが、この時の問題点は、やはり、「世界的な量的緩和(QE)」がもたらした「金融のメルトダウン」、すなわち、「世界的な何でもバブル」であり、また、「米国のGAFAMバブル」とも言えるのである。そして、これから必要とされることは、「アマチュアのゴルファー」のような「たまに当たる相場見通し」ではなく、「プロのゴルファー」のような「たまに発生するミスが、何故、起こったのか?」を追求する態度だと考えている。
より具体的には、「実体経済だけを見る、重箱の隅を突くような相場観」ではなく、「世界の金融界を見る、全体的な相場観」のことであり、この観点からは、間もなく、「OTCデリバティブの完全崩壊」が想定されるものと感じている。つまり、「1971年から始まった信用本位制と呼ぶべき通貨制度の崩壊」とともに発生が予想される「世界的なハイパーインフレ」のことである。(2023.5.23)
------------------------------------------
民主主義と衆愚政治
現在の「米国における債務上限問題」については、「民主主義が堕落し、衆愚政治に変化した典型例」のようにも感じているが、この点について、シュペングラーの「西欧の没落」では、より具体的な指摘がなされている。つまり、「都市化現象である政党政治」という表現を使いながら、「民主主義そのものが、大都市の誕生と密接な関係を持つ状況」を説明しているのである。
しかも、この時には、「職業政治家によるバラマキ政治が実施される」とも述べられており、このことは、「政治を専門とする人々による税金の奪い合い」であり、また、「法律による支配」、すなわち、「国民の行動を法律で縛りながら、合法的に税金を徴収する制度」とも理解できるのである。つまり、「西暦1200年から2000年」という「西洋の時代」の末期、すなわち、「西暦1800年から2000年」においては、「巨大都市のみならず、数多くの職業政治家が跋扈していた状況」だったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「マネーの膨張とともに、共同体の規模が拡大した展開」のことでもあるが、この時に発生する現象は、やはり、「分業体制が産み出した社会の闇」とも言えるようである。つまり、「社会の規模」と「個人の力」の関係性において、「個人が理解できる部分」が、きわめて小さなものとなり、その結果として発生する事態が、「政治への無関心」であり、また、「政治の暴走」とも考えられるのである。
具体的には、「政官業の癒着」であり、また、「通貨の堕落」などのことでもあるが、実際には、「税金の無駄使い」が加速するものの、「社会の木鐸」である「マスコミの堕落」などにより、「国民に実情が知らされない状況」が産み出されるのである。別の言葉では、「民主主義という名の衆愚政治」のみならず、「デモクラシーの終末と皇帝政治への移行」が発生する状況のことである。
そして、この時の注目点は、「権力の暴走が、いつまで続くのか?」ということでもあるが、実際には、「非理法権天」という言葉のとおりに、最後の段階で、「権力者による貨幣の破壊」という展開が想定されるのである。具体的には、「信用消滅が引き起こす通貨の堕落」、すなわち、「紙幣増刷によるハイパーインフレ」のことであり、この時に発生する現象は、「目に見えない税金」、すなわち、「インフレ税の徴収」とも理解できるのである。つまり、「目に見える税金の徴収」が難しくなった結果として、「目に見えない税金」が、「インフレ」という「国民に理解される方法」で課される状況のことである。(2023.5.24)
------------------------------------------
金融システム崩壊と国家財政破綻
現在、「戦後の26年サイクル」が示す「2023年8月15日」に注目している状況でもあるが、実際には、この前後の日までに、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」が完全崩壊する可能性のことである。つまり、「1945年8月15日」の「第二次世界大戦の終戦日」から26年後の「1971年8月15日」の「ニクソンショック」により、「マネーの大膨張」と「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」が始まった展開のことである。
そして、この点に気づいたことにより、「1997年8月15日」に関して、その一年ほど前から警告を発したが、実際には、「二日前の8月13日からタイの信用収縮が始まった」という状況だったのである。しかも、その後は、「デリバティブの大膨張」により、「究極のバブル」が形成された展開でもあったが、具体的には、「G-SIBs(グローバルな金融システム上重要な銀行)により、オフバランス(簿外)で、大量の資産と負債が積み上げられた状況」のことである。
別の言葉では、「極めて多額のシニョリッジ(通貨発行益)」がメガバンクに発生したことにより、「世界の金融市場において、価格操作が実施された状況」のことだが、実際には、「金利」のみならず、「株式」や「為替」、そして、「商品」までもが、さまざまな「プログラム売買」により価格が操作されたのである。しかし、このような異常事態が、いつまでも継続可能なはずはなく、実際には、「2008年前後のGFC(世界的な金融危機)」により、「デリバティブの膨張限界点」が示されたことも見て取れるのである。
つまり、「デリバティブのバブル崩壊」が始まったわけだが、その後の問題点は、「先進各国の金融当局者が、量的緩和(QE)の実施により、デリバティブのバブル崩壊を隠蔽しようとした事実」とも理解できるのである。具体的には、「民間からの資金借り入れで、中央銀行が国債の大量買い付けを実施し、超低金利状態を作り出した方法」のことでもあるが、現在では、「国債買い付けの資金が枯渇した段階」に追い込まれてしまったのである。
そのために、今後は、「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」という最後の手段に頼り始めるものと思われるが、このことは、典型的な「金融システムの崩壊」であり、また、「国家財政の破たん」を意味するとともに、そのような状況下では、事実に気づいた世界中の人々が、慌てて、「換物運動」を始める展開も想定されるようである。(2023.5.28)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13094:230623〕