先の記事で、テレビ各局のコメントは「開き直り」の感が免れなかったが、それを裏付けるように、TBSは、はやばやと8月31日に、続いてフジテレビは9月4日に、ジャニーズ事務所のタレントをこれまで通り起用していくとの意向が示された。タレントと個人の問題ではないので、事務所とは切り離しての措置というのがその理由である。
一方、ジャニーズ事務所もあすの記者会見で、新体制が発表されるらしいが、文春情報によれば、東山紀之新社長、現社長が代表取締役で残るという。ということは、何も変わらない、変わろうとしない、ということなのだろう。ただ、退所のタレントは増えるだろう。
ちなみに、株式構成の変遷を時系列で見て欲しい。以下は、調査書6~7頁、13~14頁から作成した。これでは変わりようがないではないか。
ジャニーズ事務所の株式構成の変遷
ジャニー、メリー、ジュリーの関係
朝日新聞(202エ年8月30)より
先の調査書によれば、ジャニー喜多川の生存中は、「ジャニーズ Jr.のデビューやグループの所属などジャニーズ Jr.の誰をどのように売り出していくかについては、基本的にジャニー氏自らが決定していた。コンサートなどの公演における起用や配置等については、ジャニー氏に加えて振付師も意見を言うことがあったが、その場合でも最終的にはすべてジャニー氏が方針を決定して、その方針に沿って振付師も動いてい。このように、ジャニー氏は、ジャニーズ Jr.の誰をどのように売り出していくかというジャニーズ Jr.のプロデュースについてほぼ無制約の専権を有しており、ジャニーズ Jr.から見れば、自分がタレントとしてデビューして人気を博することができるかどうかを決める生殺与奪の権を握る絶対的な権限を有する立場にあった」(12頁)と報告されている。
さらに、ヒアリングによる性加害の実態と被害者の受けた影響について、詳しい記述がある(19~26頁)ので、これもぜひ合わせ読んで欲しい。
ところで、8月30日の朝日新聞の一面と「時々刻々」欄で、調査書の内容について詳しく報道するが、「天声人語」欄や先の社説に見る姿勢と同様、「マスメディアの沈黙」に対して「正面から取り上げなかったとか、報道を控えたのではないかとの指摘である。真摯に受け止めなければいけない」というにとどまり、あとは「事務所は被害者と向き合い、再発防止策を速やかに進めて欲しい」と事務所に責任を振って結んでいる。今日9月5日に社説を出した東京新聞も、事務所に解体的な出直しが必要だとしながら、「調査報告は、性加害が続いた背景に<マスメディアの沈黙>があったとも指摘した。重く受け止めなければならない」と結び、新聞社の社説は、ほぼ横並びといっていい。「真摯に」「重く」「受け止めなければならない」の先が何一つ語られていないのである。
しかしどうだろう。マスメディアは、<沈黙>していただけだろうか。たとえば、朝日新聞社の新聞とともに「週刊朝日」「Adra」でも、記事や表紙、グラビアに、ジャニーズタレントを起用している。その起用が、調査書にあるように、ジャニー喜多川の采配、振り付けを唯々諾々と受け入れていた結果だとしたら、さらに、それに合わせて、タレントやジャニー喜多川を「もち上げる」「ヨイショ」する記事を書き続けていたとしたら。朝日新聞社の責任はないのか。これは、朝日新聞には限らないメディア全般に通じることのように思える。
「ジャニー喜多川社長に聞く 我が子のように育てる」
朝日新聞(2017年1月24日)
初出:「内野光子のブログ」2023.9.6より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2023/09/post-51abdf.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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