前回のあらまし――ヘーゲルは、市民社会における社会的富の生産と交換とその取得における仕方様式の相違に基づいて、市民社会内に三つの身分(Stände)―農業身分・商工身分・普遍的身分(政治家・官僚・軍人)―が形成されるとする。身分という概念は世襲制を連想させるが、ここでは階級なり階層なりの用語に近い。なぜなら市民社会内では職業選択の自由が前提であり、それらは自由な経済活動により促進される社会的分業によって分節化された、社会全体の不可欠の構成要素(集団)とされているからである。ヘーゲルは、三つの身分ごとの役割とエートスの相違を述べる。農業身分が土地と伝統と共同体的関係に縛られ、安定を好み受動的な精神傾向を有するのに対し、商工身分は変化や冒険を志向する能動的な傾向を有するとする。ヘーゲルは、東洋と西洋、ならびに古代と近代のエートスの違いを農民身分と商工身分との違いにパラレルなものとみている。東洋には西洋が有する主観的原理と(人格的)自由の原理が欠けているとみている。
いずれにせよ、市民社会における諸個人は、その特殊的利害を追求しつつ、一定の身分に属しそのなかで職業的矜持と実直さを貫くことによって、相互に認め合い全体を成り立たしめることになる。
記
1.テーマ:ヘーゲルの市民社会論
中央公論社「世界の名著」の「ヘーゲル・法の哲学」から
第二章 市民社会(§182~§256)を講読会形式で行ないます。今月は、§208からです。
★国内では数少ないヘーゲル「法(権利)の哲学」の専門家であり、法政大学で教鞭をとられた滝口清栄氏がチューターを務めます。
1.とき:2023年11月25日(土)午後1時半より(毎月の最終土曜日定例)1.ところ:文京区立「本郷会館」Aルーム
――地下鉄丸ノ内線 本郷三丁目駅下車5分 文京区本郷2-21-7 Tel:3817-6618
1.参加費:500円
1.連絡先:野上俊明 E-mail:12nogami@com Tel:080-4082-7550
参加ご希望の方は、必ずご連絡ください。
※研究会終了後、近くの中華料理店で懇親会を持ちます。