20231104 松井和子
私は9月末、伊東英朗監督ドキュメンタリー映画「サイレント フォールアウト」を観る機会を得ました。この映画について少しは予想していたものの大変な衝撃を受けました。
1945年7月16日米ニューメキシコ州の砂漠で世界最初の原子爆弾の実験が行われ、そして8月6日広島・9日長崎に原子爆弾が投下されました。以後、世界は核による支配に左右され、日本は戦時下での‟唯一の被爆国“と言われてきました。
映画「サイレント フォールアウト」は、戦後世界で進められた核競争においてアメリカの人たちが遭遇したことを描いています。
1945 年から全世界で実行された2,000回以上の核実験。米国1,127回、ソ連726回・・・、その多くは大気圏で行われました。それらは、1963年7月25日部分的核実験禁止条約に関する交渉が成立するまで、砂漠で、海洋で、続いたのです。
アメリカでは、1951年から始った100回に上るネバタ州砂漠での核実験、1946年太平洋マーシャル諸島で始まった核実験、その放射性降下物はアメリカ大陸を覆いました。日本が大気圏内核実験時代のアジア大陸・南太平洋から、またチェルノブイリ原発事故時にも放射性降下物があり測定されたのと同じです。人工放射性物質Sr-90は白血病や免疫不全など健康への影響が大きいので、海側の各県で測定調査が行われました(http://hahainc.jp/strontium.html)。
伊東監督はそのことを追求し続け、前作の2本は日本のことでした。放射性降下物は日本でもそうですが、アメリカではもっと隠されていたのではと思います。
世界でどこよりも早く、核の時代を生きてきたアメリカの人たち。78年前の‟核とその技術“がもたらしてきたもの、そこで語られるひとつひとつは「想像もしなかった、教えられもしなかった」ことだったのです。
静かに、静かに、目にも見えず音もなく、放射性降下物は降り積もっていました。
21世紀、飛躍的な技術進歩の恩恵を受け、私たちの暮らしは便利になりました。が、その奴隷にもなって、生活は大きく変わっています。そのなかで起きてきた地球規模の気候変動や世界中を巻き込んだコロナウイルス感染、続く戦争と経済危機は、暮らしに大きく影響しています。
こうした変化を私たちはどう受け止めているのでしょうか。年老いた私などは、昔の穏やかな日々が懐かしい昨今です。
今年8月、世界の100を超す医学雑誌が、『核戦争のリスクの低減―医療従事者の役割』と題する共同論説を発表しました。「私たちは保険専門家に対し、公衆衛生と地球の不可欠な生命維持システムに対するこの重大な危険について、国民と指導者に警告を発し、それを防ぐための行動を促す」「核保有国は、我々を滅亡させる前に、核兵器を廃絶しなければならない」と呼びかけています。
ぜひドキュメンタリー映画「サイレント フォールアウト」を観てほしい。
アメリカの人たちの家族に起きたこと・子どもたちに起きたこと、そして今。
友だちと、家族と、目を合わせて言葉を交わし考えたい。お互いを感じる人間同士、そこからきっと何かが生まれると思うのです。
核兵器や原発のない、きれいな地球を望みます。
資料:
- 伊東英朗監督ドキュメンタリー映画「サイレント フォールアウト」
映画の予告編 (日本語版) https://www.youtube.com/watch?v=dPJGVpJJ6iY
(英 語版) https://www.youtube.com/watch?v=hchLgbpOBvg
FALLOUT PROJECT22 事務局
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核戦争のリスクを減らすためにー医療従事者の役割(翻訳:グローガー理恵)
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