雨季の始まり
10月の初め、部屋の湿度が70%を超えるという異様なジメジメ感を強烈に覚えた日が一度だけありました。このときいよいよ雨季の始まりかと覚悟しましたが、その日を除いておおむねカラリとした湿気の低い快適な日々を過ごすことができました。9月と10月のそれぞれの上旬に、ほんの少しだけ雨が降ったときがありましたが、それはどこか遠くからホースでまかれている水が風に乗ってそれを顔で少し感じるような程度のもので、瞬く間にやみました。9月そして10月とも乾季が続き、たとえ高温であっても軽やかに外を歩くことができました。
去年もそうでしたが、今年も本格的な雨の降り始めは11月の半ばです。11月に入ると、わたしの部屋の湿度が70%以上となるのは珍しくなくなり、如実にジメジメしてきました。乾季では日中は気温が高くても湿気が低くてすごしやすく、明け方には24~25℃まで気温が下がり涼しくなり、下手をすると冷えを感じるくらいで、快眠できます。そして11月14日の午後、傘をさすのは無駄な抵抗であるほど強く雨が降りました。本格的な雨降りの到来です(日本の雪国でいえば積雪に相当か)。あっという間に歩行者を雨宿りに駆け込ませ、道路わきは冠水してしまい、足首を水に浸すほどになりました。それと同時に道路わきに散乱しているゴミが雨水で寄せ集められ、どぶ川にはペットボトルが大量に浮かび上がります。改めて首都はゴミで溢れている町であることを実感させられました。このとき以来、明け方になっても部屋の気温は27℃ぐらいにしか下がってくれず、湿度は70%前後のときがおおく、非常に寝苦しい日々を強いられることになります。11月は季節の変わり目、体調管理に苦慮しますが、この高温多湿の環境にも12月に入れば身体の方が徐々に慣れてくるものです。
高温多湿そしてゴミの山とくれば喜ぶのは蚊です。本当に蚊が喜んでいるのかどうかはともかく、乾節より雨季に人間は蚊に悩まされることはたしかです。つまり雨季とは東チモールではデング熱との闘いの季節です。家の内も外もきれいにし、町内の住民が小径周辺のゴミをきれいに片付け、行政が適切に地域のゴミ処理を行うことができるか—-このことがまずはデング熱との闘いの第一歩です。わたしの感想ですが、個人から行政レベルまで、衛生意識は残念ながらあまり進歩していないように感じられます。あるいはたとえ衛生意識が進歩していても実践となるとおぼつかないのかもしれません。せめて自分の家のなかと周辺は町内の仲間内で衛生的な環境を造り出すような活動がほしいものです。本格的な降雨で改めて浮き彫りになったゴミだらけの町の環境を見て、このように想っている東チモール人もきっと多いはずです。
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ベコラ警察署前、2023年11月20日、ⒸAoyama Morito.
保健省による看板。デング熱にたいする心構えを告知する。
「デング熱は危険、あなたを殺すことができる。
- 水が溜まり蚊が集まる次のような所を毎週掃除してきれいにしましょう。
・タンクやドラム缶
・古くなったタイヤ
・古くなった缶からやペットボトル
- デング熱から自分を守りましょう
・蚊よけ剤を使う
・長袖の服を着る
・24時間高熱が続いたとき、最寄りの診療所へ行く
- 以下の症状が出たら、急いで診療所へ行きましょう
・発熱
・頭痛
・後頭部が痛い
・吐き気がする
・肌に赤い水ぶくれが出たり、全身または骨に痛みを感じる
すぐに診療所へ
わたしたちは愛情をもって奉仕します」。
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「スコ」首長選、女性に厳しい結果
今年の「独立宣言の日」(11月28日)は地方自治体の首長の就任式の日でもありました。したがって今年の「独立宣言の日」は、11月13日に実施された第二回目の投票となる決選投票で新たに選出された「スコ」首長の就任とその就任にたいして祝いと注文の言葉が各地各方面から発信された日でもありました。例えば首都では五つの「行政支部」(Posto Administrativo)に含まれる新しい「スコ」首長26人 の就任式が行われました。わたしの属する「スコ」首長は、新人二名(二名とも男性)による決選投票を経て選出されました。この決選投票に残った二名のうち一人はわたしの属する「村落」の首長であった人物でしたが、その人物は破れてしまいました。
11月28日をもって、「スコ」首長立候補受付け日となった10月14日から始まった東チモール版の〝統一地方選挙〟は終了です。次回の〝統一地方選挙〟は7年後の2030年です。
さて、全国442の「スコ」首長のうち女性首長(241名の女性候補者)が何名選ばれたのかというと、10月28日の第一回目の投票で6名、11月13日の決選投票で12名、合計18名でした(『タトリ』、2023年11月14日)。ジョゼ=ラモス=オルタ大統領は女性の「スコ」首長は全体の30%を占めるのが望ましいと声明を出していましたが、僅か4.07%に留まりました。
ちなみに前々回(2009年)の「スコ」首長選挙で当選した女性は11名で全体の約2.49%、前回(2016年)は21名の約4.75%だったので、今回の18名4.07%は躍進どころか後退したといえます。前々回に比べて前回は倍の女性「スコ」首長が誕生したので、今回はさらなる飛躍を期待した者にとっては残念で厳しい結果となりました。
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「スコ」首長決選投票所になったベコラ小学校。
2023年11月13日、ⒸAoyama Morito.
第一回目の投票では受付に並ぶ列が日向にできていたが(写真でいえば手前にのびる)、今回はちゃんと屋根の下の日陰に列をなしていた。ちょっとした工夫でみんなが幸せになれる。そして受付の机には第一回目の投票では係員が3人だけ座っていたが、今回は4人が座っていた。係員の人数が少ないという世論の批判の声が反映された。
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「スコ」首長決選投票所になったベコラ小学校、その2。
2023年11月13日、ⒸAoyama Morito.
わたしが投票所の写真を遠慮気味に撮っていたら、投票所の敷地内に腰かけていた住民たち(写真・左側の人たち)の一人から「もっと近くで撮りなよ!」と声をかけてくれた。敷地内に腰かけていた住民たちは暇つぶしをしているのではなく明らかに監視している人たちであった。住民一人一人の自主的な参加があって民主的な選挙運営ができる。それはそうなのだが、わたしに声をかけた人物はF-FDTL(東チモール国防軍)の特殊部隊の隊長であることを知るわたしにしてみれば、ちょっと緊張感を覚える場面でもある。もちろんかれはいち住民として決選投票所の様子を見ていたにすぎないが……。
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青山森人の東チモールだより 第504号(2023年12月6日)より
e-mail: aoyamamorito@yahoo.com
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion13419:231207〕