大都市の空洞化
「村山節の文明法則史学」では、「800年ごとに東西文明が交代するとともに、その時には、約100年間の移行期間が存在する」と説明されている。そして、この時の注目点は、移行期間を象徴する「民族の大移動」に関して、複雑系の学問が指摘するとおりに、「前半の50年間が、大都市への人々の集中期(秩序の形成期)」であり、また、「後半の50年間が、大都市に住めなくなった人々が地方などへと移動する期間(秩序の崩壊期)」でもあるが、現在は、まさに、1600年前と同様に、「西暦376年から始まったゲルマン民族の大移動」の「前半部分」から「後半部分」への転換点のようにも感じている。
具体的には、「米国で顕著になった大都市の空洞化」が、「民族大移動の後半部分」に関する典型的な兆候とも思われるが、この理由としては、やはり、「マネーの縮小がもたらした経済的な困窮」が挙げられるものと考えている。つまり、「1971年のニクソンショック」以降に発生した現象は、世界的なマネー大膨張がもたらした「生活水準の向上」、すなわち、「支出の増加」だったものの、現在では、それに見合う金額の「収入」を得ることが難しくなったものと思われるのである。
より詳しく申し上げると、「1945年前後から始まった世界的な経済成長」により、最初に、「民間企業や個人のバランスシートが拡大し、多くの人々が裕福になった状況」だったが、その次の展開は、「経済の金融化」と呼ばれる「民間金融機関のバランスシート大膨張」だったことも見て取れるのである。つまり、「日本のバブル」に象徴されるように、「民間金融機関のバランスシート大膨張により、実体経済を上回る規模でのマネーが創造された状況」のことである。
その結果として、「犬の身体」を象徴する「実体経済」よりも、「犬のしっぽ」を表す「マネー」のほうが、より大きな規模となったが、この現象に拍車をかけたのが、「1997年の金融危機をキッカケに始まったデリバティブの大膨張」だったのである。つまり、「日本のバブル」と比較して「約30倍の規模」で、「民間金融機関のバランスシート」が大膨張したものの、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」により、「中央銀行のバランスシートが拡大するリフレーション期間」への移行が始まった状況のことである。
このように、冒頭の「米国の大都市における空洞化」に関しては、これほどまでに深い原因が隠されているものと思われるが、残念ながら、この理論が検証されるためには、「今後の数十年」という長い時間が必要なものと考えている。(2023.11.14)
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急増を続ける国家の借金
現在、米国では、「急増を続ける国家の借金」に対する警戒心が急速に高まっている状況であり、実際には、「33.7兆ドル(約5050兆円)にまで膨らんだ国家の借金残高」に関して、「今後、だれが、国債を買うのか?」、あるいは、「金利の支払い額が1兆ドルを超えるような状況下で、どのようなことが起こるのか?」などが懸念され始めているのである。つまり、「思考停止状態のような日本人」とは違い、多くの人々が、国家の財政問題を直視し始めるとともに、自己防衛策を行使し始めている状況ともいえるが、今回の問題点は、やはり、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」に対する理解が深まっていない事実が指摘できるようである。
より具体的には、「商品」のみならず、「貨幣」において、過去50年間余りの期間に、「質と量の劇的な変化」が発生したことにより、従来の経済理論が、ほとんど役に立たなくなってしまったのである。あるいは、「未熟な経済学」の欠点が、今回の「マネー大膨張」により炙(あぶ)り出されてきた可能性も考えられるが、今後は、この点について深い認識や理解を持った人々が、社会のリーダーとなる可能性も想定されるようである。
別の言葉では、「経済学」や「社会科学」の進歩、あるいは、次元上昇により、これから想定される「約800年間の東洋の時代」、すなわち、「西暦400年から1200年」と同様に、「東洋の唯心論的な文明」が発達するものと思われる期間に、「どのような社会が築かれていくのか?」が理解できるようにも感じられるのである。つまり、「11次元にまで進化した自然科学を、どのようにして人間社会に応用するのか?」ということであり、実際には、「量子力学や分子生物学、あるいは、複雑系の理論」などが、急速に進化する状況のことである。
ただし、現在は、いまだに、「急増を続ける国家の借金」に対してさえも解決策が見いだせない状態のために、「これから、どのような大混乱が待ち受けているのか?」が気になる状況でもあるが、実際には、「案ずるより産むが易し」という言葉のとおりに、「金融大混乱に直面した人類が、果敢な行動をとり始める可能性」も想定されるようである。つまり、「戦後の日本人」のように、「金融面の焼け野原」に陥った時に、人々の認識面での大転換が起こる可能性を考えているが、実際には、「西洋的な奪い合い」ではなく、「東洋的な分け合い」が共通の価値観となる可能性である。しかも、この点については、「マネーが結び付け、支配した、現在のグローバル共同体」の崩壊後に想定される「数多くの小さな共同体」において、強くなった「個人の力」が発揮される展開とも言えるようである。(2023.11.15)
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国債と貴金属を巡る攻防戦
過去20年以上の期間に及びならが、今まで、ほとんど報道されなかった「国債と貴金属を巡る攻防戦」が、現在、終焉の時を迎えるとともに、今後、大きな価格変動が始まるものと考えている。つまり、「国債」に関しては、「日本のYCC(イールドカーブ・コントロール)」に象徴されるように、今まで、「デフレの象徴のために、大量の買い付けが実施され、金利が低く抑え込まれていた」という状況だったのである。
また、「貴金属の価格」に関しては、「JPモルガンの違法行為」からも明らかなように、今まで、「デリバティブを利用した力任せの価格抑え込み」が実施されて来たものの、現在では、「国債価格の暴落」が、世界的に始まったことにより、「貴金属の価格抑え込み」の必要性が失われたものと想定されるのである。別の言葉では、「目に見えない金融ツインタワー」の一つである「約330兆ドルの世界債務残高」の崩壊により、もう一方の「約600兆ドルのOTCデリバティブ」が、間もなく、完全崩壊する可能性である。
より詳しく申し上げると、今までは、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」、すなわち、「影も形も存在しない、単なる数字が本位通貨となった制度」を維持するために、さまざまな行為が水面下で実施されてきたものと想定されるのである。具体的には、「法律の改正などにより、さまざまな障害が取り払われてきた状況」のことでもあるが、実際のところ、現在の「日銀」については、「20年以上前と現在とでは、法律の面において、大きな違いが存在する状況」ともいえるのである。
その結果として、現在の「世界的なマネー残高」については、「人類史上、未曽有の金額」となっており、しかも、「これ以上は、紙幣の大増刷か、あるいは、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の創設でしか増やすことができない状況」とも考えられるのである。別の言葉では、古典的な「財政ファイナンス」、すなわち、「債務の貨幣化」が、間もなく実施される可能性が高まっている状況ともいえるが、今回の問題点は、「大量のデジタル通貨が存在しながらも、行き場を失い始めている状態」とも理解できるのである。
つまり、「お金の性質」としては、「値下がりする商品」から「値上がりする商品」への移行が指摘できるが、現在の問題点は、「なんでもバブルの崩壊」により、「貴金属や原油、あるいは、非鉄金属や食料などの実物商品」などが、次の投資対象となり始めた可能性であり、このことは、「海中に押し込められていたビーチボールが、水面上に飛び出そうとするような状況」とも考えられるのである。(2023.11.16)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion13437:231215〕