本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(490)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主義研究会会員
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タダほど高いモノはない

今回の「日本の衆議院選挙」については、「政治家のばらまき予算」と「無償化を喜ぶ日本人」の存在が目立った状況のようにも感じられるが、このような状況下で思い出されたのが、「タダほど高いモノはない」という言葉だった。つまり、「目先の違いにとらわれて、結局は同じ結果であることを理解しないこと」を意味する「朝三暮四」という言葉のとおりに、「現在のタダ」は「将来の高いモノ」に変化するものと思われるからである。

そして、この点を、「戦後80年間の税金」で考えると、現在は、今までの「三種類の税金」に加えて、「四種類目の最後の税金が加わる段階」に差し掛かってきたものと感じられるのである。具体的に申し上げると、「1945年から65年までの約20年間」については、「戦後の経済復興期」であり、「所得税などの目に見える現在の税金」が課されていた状況でもあったが、その後は、「二種類目の目に見える将来の税金が、国債の形で課され始めた状況」だったことも理解できるのである。

また、その後は、「経済の金融化」という「実体経済よりもマネーの残高が上回る状態」が始まり、その結果が、「1980年代の日本バブル」だったが、「1990年代」は、一転して、「バブル処理に追われた期間」だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「日本の民間金融機関が、破綻寸前の状態の追い込まれた事態」のことでもあるが、この危機を救ったのが、「欧米の金融機関を中心にして作り出されたデリバティブのバブル」とも言えるのである。

より具体的には、「世界的な金融システムの崩壊」を救うために、「日本バブルの約30倍の規模で、新たなバブルが形成された状況」でもあったが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が意味することは、「デリバティブのバブル」が崩壊するとともに、「三種類目の税金である目に見えないインフレ税が、国民の気付かない形で課され始めた状況」だったことも見て取れるのである。

つまり、「中央銀行のバランスシートが、国民からの借り入れにより膨張した状況」のことだが、このことは、「将来的に、国民が返済せざるを得ない性格の借金」とも理解できるのである。そして、現在は、今までの「三種類の税金徴収」に限界点が到来するとともに、「四種類目の目に見えないインフレ税が、国民の気付く形で徴収される段階」に入ったものと思われるが、実際には、「中央銀行が通貨発行益を得るとともに、ハイパーインフレで、実物資産の価格が急激な上昇を見せ始める事態」だと考えている。(2024.10.21)
 
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全ての道はインフレに通ず

米国の著名投資家である「ポール・チューダー・ジョーンズ氏」は、先日、CNBCに出演し、驚くべき内容の意見を表明したが、それは、「全ての道はインフレに通ず」というものであり、また、「この時の注目ポイントとしては、『ミンスキー・モーメント』が挙げられる」とも述べている。つまり、「ミンスキー・モーメント(ミンスキーの瞬間)」とは、「信用循環または景気循環において、投資家が投機によって生じた債務スパイラルによりキャッシュフロー問題を抱えるポイントである」と説明されているが、私自身としては、「中央銀行の資金繰りに問題が発生した瞬間」のようにも考えている。

より詳しく申し上げると、私が今まで述べてきたように、「1971年のニクソンショックから始まった『信用本位制』と呼ぶべき通貨制度」、あるいは、「1913年に創設された米国のFRB」については、現在、「崩壊の危機」を迎えているものと想定されるのである。別の言葉では、「1991年のソ連」と同様の状況が、世界的に発生している可能性のことでもあるが、実際には、「米国を中心にして、国家債務の膨張が急激に進展するとともに、買い手の消滅により、国債価格の暴落が発生する危機」のことである。

このように、「一国だけの国家破綻、そして、ハイパーインフレ」というのは、「過去100年間に30か国以上で発生した状況」だったものの、実際の状況としては、「三種類の金本位制」と「1971年からの信用本位制」により、「世界的なマネーの残高が、時間の経過とともに大膨張した展開」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「1600年ほど前に崩壊した西ローマ帝国」が、唯一の参考例になるほどの、きわめて異常な「マネーの大膨張」を、過去100年間に、世界の人類が経験したわけだが、現在では、「すべての人々が、そのツケを払わされる瞬間」に差し掛かったものと想定されるのである。

ただし、この点については、「村山節(みさお)の文明法則史学」や「シュペングラーの西洋の没落」、あるいは、「ライプニッツの予定調和説」などで、ある程度、予想されていた変化であるとともに、我々が理解できない「深い意味」が隠されている可能性も考えられるようである。別の言葉では、「800年に一度の東西文明の大転換期には、驚くべき大事件が発生する可能性」が想定されるものの、結局のところ、「絶えざる進化と創造の過程にある人類社会」にとっては、「これから想定される世界的な金融混乱も、進化のために必要不可欠な出来事」のようにも感じられるのである。ただし、これからの金融大混乱を生き延びるために、最も気を付けるべきポイントは、やはり、「前代未聞の規模での世界的なハイパーインフレが発生する可能性」とも言えるようである。(2024.10.23)
 
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米国大統領選挙の影響力

米国大統領選挙が近づいた現在、いろいろな識者が、「選挙の結果が、どのような影響を与えるのか?」についてコメントしているが、私自身としては、「トランプ氏とハリス氏のどちらが大統領に選出されようとも、大した違いが存在しないのではないか?」と感じている。別の言葉では、現在の「大統領の影響力」に関して理解できることが、以前とは違い、きわめて小さな状態になった可能性のことでもあるが、この理由としては、「米国債務残高の急激な上昇」が挙げられるものと考えている。

具体的には、「約35.8兆ドル」にまで達した「米国の債務残高」については、今まで、「約3か月でⅠ兆ドルの増加」というペースだったものが、「10月」においては、「約3週間で0.5兆ドルの増加」というように、急激な増加ペースの加速が見られる状況とも言えるのである。しかも、今まで棚上げされてきた「債務残高の上限問題」については、「2025年の1月に、再度、引き上げられる必要性が存在する」という状況のために、今後は、より一層、「米国の金利上昇」が危惧されるものと想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「世界的な金融システムの実情」としては、「西洋の先進諸国が、デリバティブ大膨張の恩恵を受けて、今まで、超低金利状態を享受できた状況」だったものの、その他の国々は、「40年前から始まっていた国家財政の連鎖破綻」というコラムで指摘したように、「体力の弱い国々から、徐々に、国家財政の破綻が始まった状況」だったことも理解できるのである。

そのために、今後の「米国を始めとした西洋先進諸国の財政問題」については、「今までと同様の方法では、決して、破綻を免れない状況ではないか?」とも感じているが、この点について、現時点で、特に注目すべき事実は、「ポール・チューダー・ジョーンズ氏などの著名投資家が、国債の売りと実物資産の買いを推奨し始めた状況」だと感じている。つまり、今後は、「国債の買い手」が急減するとともに、「大量の資金が、貴金属などの実物資産に殺到する可能性」が認識され始めているのである。

そして、今後の展開については、「1991年のソ連」が参考になるものと考えているが、実際には、「長期国債の買い手」が減少し、「長期金利の上昇」が始まった後に、「短期国債の買い手」が減少し、「短期金利の上昇」が始まった状況のことでもあるが、現在の「西洋の先進諸国」は、「長期国債の買い手」が減少するとともに、「長期金利の上昇が始まった段階」とも言えるのである。(2024.10.29)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion13995 : 241206〕