本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(491)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
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2024.10.30

アベノミクスの後始末

10月7日に実施された「日本の衆議院選挙」における「与党自民党の大敗」については、「アベノミクスの後始末」が始まったことを象徴する出来事だったようにも感じているが、その理由としては、「アベノミクスの正体」が、単に、「日銀のバランスシートを大膨張させて、国債を買い付けるだけの状況」だったものと思われるからである。別の言葉では、「民間資金を借りて、将来の税金である国債の買い付けること」は、結果として、「目に見えないインフレ税を払うこと」だったものと考えられるのである。

その結果として、国民の生活が苦しくなるとともに、政府に対する不満が高まっていたために、今回の選挙で、「政治家による裏金問題」に対して、一挙に、不満が高まったものと想定されるのである。別の言葉では、「円安」と「金利上昇」という「日本国家の体力低下」を象徴する出来事が発生したために、多くの国民が「アベノミクスの正体」に気付くとともに、自己防衛を始めた可能性も考えられるのである。

そのために、これから予想される展開としては、「さらなる円安と金利上昇」により、「日銀による財政ファイナンスが実施される可能性」でもあるが、この点については、「日本の国家債務がGDPの250%越え」という実情に対して、現在、海外投資家が。「鵜の目鷹の目」で見守っている状態とも言えるのである。つまり、今回も、「日銀発の新たな金融政策」、すなわち、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の大量発行」や「大量の紙幣増刷」が実施される可能性が注目されているのである。

より詳しく申し上げると、「日銀のバランスシート」を吟味すると、「誰でも理解できるほどの危機的な状態」となっており、実際には、「約547兆円の当座預金」と「約587兆円の保有国債残高」などに関して、「今後の金利上昇が致命的な影響を与える可能性」が危惧されているのである。つまり、「日本国家の財政破綻」が危惧される状況となっており、そのために、多くの著名投資家が、「泥船から脱出するように、先進各国の国債保有残高を減らし始めた状況」となっているものと想定されるのである。

このように、今後は、単なる「リフレーション政策」にすぎなかった「アベノミクスと呼ばれた金融政策」に対して、きわめて大きな反動が発生するとともに、「日本人全体が、その後始末に追われる状況」も想定されるのである。具体的には、「約25年間にも及んだゼロ金利政策により、さまざまな矛盾が産み出された状況」に対して、きわめて短期間のうちに、大きな金融混乱が発生する可能性である。

2024.11.1

金価格上昇の真因

金(ゴールド)価格の上昇要因として、最近、頻繁に言われることは、「金価格が上がっているのではなく、通貨としてのドルの価値が下落しているからだ」というものがあるが、この点には、より深い説明が必要な状況のようにも感じている。つまり、「なぜ、ドルをはじめとして、通貨の価値が下落しているのか?」ということだが、この理由としては、「マネーの大膨張」、すなわち、「個人や企業」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行」の「バランスシート大膨張」が挙げられるものと考えている。

別の言葉では、「それぞれの部門で、順次に、資産と負債が膨張した状況」のことでもあるが、この結果として発生した現象が、「金価格の相対的な価値上昇」だったことも理解できるのである。つまり、最初は、「金とマネーの比率が1:1の状況」だったものが、その後、「マネーの残高が10倍に増えた時には、当然のことながら、金の価格も10倍に増える状態」が発生することが見て取れるのである。

ただし、この時の注意点としては、「100年前の1ドル」と「現在の1ドル」との間に、「名目上ではなく、実質上の違いが存在する事実」であり、このことが、「貨幣の購買力」と呼ばれている状況ともいえるのである。別の言葉では、「1オンスの金で、どれほどの商品が買えるのか?」ということでもあるが、この点に関して、頻繁に使用される例は、「スーツの価格」であり、実際には、「100年前の約20ドル」と「現在の約2700ドル」が、「一着のスーツの値段」とも理解されているのである。

そして、今後の展開を考える上で最も重要なポイントは、「これから、お金の残高がどのような変化を見せるのか?」であり、この点を考える際に必要なことは、「お金はストックであり、ハイパーインフレで消滅する事実」だと考えている。つまり、「民間企業や個人」と「民間金融機関」、そして、「中央銀行」との関係性においては、「個人や民間企業の預金が民間金融機関の負債になる」という状況であり、この結果として、「バブル崩壊で発生した民間企業などの不良債権が、最初は、民間金融機関に移行し、現在では、より巨大な組織である中央銀行へと、再度、移行した状況」となっているのである。

そのために、今後の注目点は、「最後の貸し手である中央銀行バランスシートを、どのように大膨張させるのか?」でもあるが、現在では、「民間部門からの借り入れによる国債の買い入れ」という「リフレーション政策」が限界点に達したために、今後は、「無制限の紙幣増刷によるマネー残高の大膨張」と「金価格の暴騰」を想定している次第である。

2024.11.3

世界的な政治混乱

今までの「世界的な金融混乱」に続き、現在では、「世界的な政治大混乱」に見舞われている状況とも思われるが、具体的には、「西洋先進諸国」のみならず、「中国」や「ロシア」などでも、「国民の政治に対する不信感が激増している可能性」のことである。そして、この理由としては、「下部構造の経済と上部構造の政治」というマルクス主義的な意見が挙げられるようにも思われるが、実際には、「景気の低迷で国民の生活が苦しくなり、政治家に対する不満が高まっている状況」のことである。

別の言葉では、現在の「根のない切り花」とでも呼ぶべき状況、すなわち、「根本の信用が失われているにもかかわらず、依然として、見せかけの華やかさだけを保っている状態」に関して、いよいよ、「表面上の綻びまでもが見え始めた段階」のことである。つまり、「資本主義そのものが、ポンジ・スキームだった可能性」について、いろいろな識者が、いろいろな意見を述べ始めている状況のことである。

より具体的には、「米国を中心とした国家債務の急増」に関して、多くの人々が、「間もなく、限界点に達するのではないか?」などの意見を述べるとともに、「今後、未曾有の規模でのハイパーインフレが世界的に発生する可能性」にまで言及しているのである。つまり、「1971年のニクソンショック以降、糸の切れた凧のような状態で、デリバティブの大膨張とデジタル通貨の大量発行が実施された事態」について、多くの人々が、正確な理解を深めている状況とも言えるのである。

ただし、残念な点としては、「村山節(みさお)氏の文明法則史学」が理解されていないために、「これから、どのような時代、そして、社会が訪れるのか?」が、ほとんど理解されていないことが指摘できるのである。つまり、「資本主義の後には、共産主義の時代が来る」と考える「ロシア」や「中国」などの存在により、世界全体が、混迷を深めている状態とも思われるが、このことを考える上で重要なポイントとしては、「自然科学と社会科学の次元上昇」が挙げられるものと考えている。

具体的には、「世界は絶えざる進化と創造の過程にある」という認識のもとに、「神が創った世界を研究する自然科学が11次元にまで進化した状況」でありながら、一方の、「人間が造った世界を研究する社会科学が、依然として、三次元にとどまっている事態」に関して、今後、「急激な社会科学の次元上昇が世界的に発生する可能性」であり、結果としては、「軍事力が不用になるとともに、戦争がなくなる可能性」も想定されるのである。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion14005: 241213〕