2024.11.4
紙のゴールドとシルバー
最近の貴金属価格上昇に伴い、「紙(ペーパー)の金(ゴールド)や銀(シルバ-)」などの表現が頻繁に見受けられるようになったが、この点には、「金融システム」に対する人々の理解が進んだ事実と同時に、いまだに誤解が存在する状況が表されているものと感じている。具体的には、「1971年のニクソンショック」をきっかけにして誕生した「新たな通貨制度」、すなわち、それまでの「金(ゴールド)を本位とした金本位制」から「信用(クレジット)を本位とした信用本位制」への移行のことである。
別の言葉では、「人々の間に存在する信用」を形にしたものが「マネー(お金)」であり、今回の「信用本位制の誕生」についても、「過去6000年間のマネーの歴史」を考えると、当然の流れだったことが理解できるのである。しかし、一方で、大きな問題としては、「信用本位制の崩壊後に、どのような社会が形成されるのか?」という点が指摘できるが、この時に必要とされるのは、「1971年から現在までに、どのような金融システムが形成されたのか?」に関する正確な理解であり、また、「紙の金や銀」ではなく、「デジタルの金や銀」という認識とも言えるのである。
より詳しく申し上げると、過去50年あまりの期間に生じた大きな変化は、「コンピューターネットワークの発展によるデジタル通貨の誕生」であり、実際のところ、現在の「お金(マネー)」は、「紙(ペーパー)」ではなく、「デジタル」、すなわち、「影も形も存在しない単なる数字」へと変化したことも見て取れるのである。そして、今回の「紙の金や銀」についても、実際には、「デジタルの金や銀」であり、このことは、「コンピューターネットワークの中だけに存在する金融商品」とも理解できるのである。
そして、このような「デジタル型の金融商品」の特徴としては、「世界中のどこでも、瞬時に決済が可能な状況」でありながら、「紙幣や実物での決済が、きわめて難しい事実」が指摘できるのである。つまり、「日本人が米国債を買う場合に、デジタル通貨ならば、ほぼ瞬間的に決済可能な状況」でありながら、「紙幣による決済を行おうとすると、紙幣の運搬や保険などに莫大な費用と時間がかかる状況」であることも理解できるのである。
そのために、現在の金融当局者は、「デジタル通貨の存続」に注力し、その結果が、「国債の買い支え」と「貴金属の売りたたき」であり、実際には、「超低金利状態を維持しながら、デリバティブやデジタル通貨の温存に励んできた状況」だったものと思われるが、現在では、「すべての仕組みが、世界的に理解され始めた状況」のようにも感じられるのである。
2024.11.5
経済成長の実態
日本のマスコミでは、依然として、「経済は成長すべきものである」というような意見が頻繁に見受けられるが、この点については、「失われた30年」、すなわち、「日本経済が、ほとんどゼロ成長だった30年間」に関して、「なぜ、このような事態が発生したのか?」の分析や反省が行われなかった状況を表しているものと感じている。別の言葉では、「戦後の奇跡的な経済成長の亡霊」に捕らわれ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代が再来すると考えている人々が、いまだに、数多く存在する状況とも言えるようである。
しかし、現在では、「世界的な金融システムや通貨制度の崩壊」までもが危惧されるような状況となっているために、現時点で必要なことは、「産業革命後の過去200年間に、どのような商品が産み出され、また、その時に、どのようなマネーが創り出されたのか?」の理解だと考えている。具体的には、「200年ほど前の第一次産業品や羊毛などの軽工業品」に始まり、次に、「100年ほど前の自動車産業や化学産業」などの発展、そして、その後に、「1980年代の金融商品大膨張」へとつながった展開のことである。
そして、一方で、「お金(マネー)の変遷」としては、「1816年に始まったイギリスの金本位制」、そして、「1933年から1945年にかけての金本位制の変化」、すなわち、「金貨本位制」から「金地金本位制」、そして、「金為替本位制」へと変化し、最後の段階では、「1971年のニクソンショックにより、金本位制の廃止へとつながった状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「実体経済の成長に伴い、より多くの資金が必要とされ、結果として、通貨制度が改正された状況」とも言えるのである。
その結果として、現在では、「実体経済をはるかに上回る規模のマネーが、デジタル通貨として世界を駆け巡っている状態」となっており、また、「世界の国家債務も、これ以上の膨張が難しくなった状況」とも理解できるのである。別の言葉では、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」と似たような状態になっているために、これから必要なことは、「今後、どのようにして経済を成長させるのか?」ではなく、「今後、どのような社会が形作られるのか?」にあるようにも思われるのである。
より具体的には、「村山節(みさお)の文明法則史学」などを参考にしながら、「1600年前に、どのような社会が形成されたのか?」を考えることでもあるが、実際には、「西暦476年の西ローマ帝国滅亡」という事実が示すとおりに、「信用の消滅が進展する世界では、経済成長などは夢物語の状況」だったようにも感じている。
2024.11.6
英国の増税と日本の減税
現在は、「リフレーション政策」から「ハイパーインフレ」への転換期であり、「何らかの出来事をキッカケにして、未曽有の世界的な金融大混乱が発生する可能性」を危惧しているが、この点に関して、「英国の増税」と「日本の現在」が、何らかの影響力を及ぼすものと感じている。別の言葉では、「四種類の税金」、すなわち、最初が「所得税など、目に見える現在の税金」、二番目が「国債の発行がもたらす、目に見える将来の税金」、そして、三番目が「中央銀行が民間から資金を借り入れ、国債の買い付けを実施する、国民が気付かない形のインフレ税」であり、最後が、「財政ファイナンスによる国家債務の充足という、国民が気付く形のインフレ税」に対して悪影響をもたらす可能性である。
より詳しく申し上げると、「日本の財政」は、「1945年の敗戦」以降、約20年間は、最初の「現在の税金」だけで賄ってきたものの、「1965年からは、二番目の将来の税金が追加徴収される状況」となったことも理解できるのである。そして、「1990年の日本バブル崩壊」以降は、「不良債権が民間金融機関に移行するとともに、中央銀行が三番目のリフレーション政策を実施し始めた状況」だったことも見て取れるのである。
また、このような「国家の財政危機」については、「アメリカを始めとした先進諸国」も同様の状況であり、その結果として発生した変化としては、「1980年代初頭に誕生したデリバティブが、2000年前後から急速な大膨張を見せた事実」だったことも理解できるのである。別の言葉では、「民間金融機関が、オフバランスシートで資産と負債を大膨張させたことにより、大量のデジタル通貨が作り出された状況」のことでもあるが、この結果として発生した現象は、「世界の金融市場が、さらなる大膨張を見せるとともに、西洋先進諸国の財政問題に時間的な余裕が生まれた状況」ともいえるのである。
つまり、「ポンジ・スキーム」のように、「さらなる資金投下により時間稼ぎが行われた状況」のことだが、一方では、「大膨張した不良債権が、将来的に、より大きな金融混乱を引き起こす可能性」も危惧されたのである。具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降に発生した「金融のメルトダウン」であり、このことは、「大量のデジタル通貨が、徐々に、何でもバブルの発生と崩壊を繰り返した状況」とも言えるのである。しかも、現在では、「米国を中心とした株式から。貴金属などへの実物資産へと、世界の資金が移行し始めた状況」であり、このような状況下で実施される、「英国の増税」と「日本の減税」は、結果として、「税収減」や「国債の買い手減少」に繋がり、「1991年のソ連」のような危機を引き起こす可能性を危惧する次第である。
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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