2024年12月15日、イスラエル・ネタニヤフ軍事政権は、在イスラエルのアイルランド大使館を閉鎖し、在アイルランドのイスラエル大使館を撤退させました。
しかし、アイルランドはパレスチナ支持を崩しませんでした。
そのアイルランドの、西サハラ支持を表明する外交文書が送られてきました。 紹介します。
① イスラエル・ネタニヤフ軍事政権がアイルランドを一方的に国交断絶:
2024年12月15日、イスラエル外務省は、アイルランドが反イスラエル政策を取っているとして、在ダブリンのイスラエル大使館を閉鎖すると、突然一方的に発表した。ギデオン・サール・イスラエル外相は「イスラエルに対するアイルランドの行動と反ユダヤ的な言質は、ユダヤ国家を非合法化し悪魔化しようとする、二重の企みに根差している」と強く反発し、「アイルランドはイスラエルとの関係において一線を越えた」と、アイルランドを敵対視した。
同日の12月15日、サイモン・ハリス・アイルランド首相は、「イスラエルの決定は残念だ、、しかし、アイルランドが反イスラエル的であるという主張は、お門違いだ。アイルランドは平和、人権、国際法を支持する側にいるのだ」とXに投稿した。2024年4月9日に就任したばかりの37才のサイモン首相も、平和外交のアイルランド伝統を継いでいる。アイルランドはパレスチナ国家を承認し、イスラエルのガザ・ジェノサイドをICJ国際司法裁判所に控訴した南アフリカを支持してきた。
イスラエルは、パレスチナ国家を承認する国や、ガザ・ジェノサイドを批判したりする国の大使館を、すべからく閉鎖していくつもりなのだろうか? 日本はパレスチナ国家を承認し、ガザ・ジェノサイド裁判を支持し、さらに、ネタニヤフに逮捕状を出したICC国際刑事裁判所の所長に赤根智子裁判官を送った。イスラエルは日本大使館も閉鎖するのだろうか?
12月17日に岩屋毅外務大臣は、イスラエルのゴラン高原併合を認めないとしたうえで、「イスラエルの入植活動は国際法違反で完全な活動停止を求める」と言明している。さあ、どうする?イスラエル??
因みに、アイルランドは、面積が7万300平方キロメートル(北海道の面積の約8割強)で人口が約515万人のちっちゃな国だ。アイルランドは、歴史的なつながりがある英国や米国との関係に気を配りつつ、EU外交や多国間外交を進展させてきた。一方で、軍事的中立政策を掲げ、NATO(北大西洋条約機構)には加盟していない。1949年に英連邦から離脱し、共和国として完全に独立している。
② 国連定例記者会見で露呈したモロッコ占領地西サハラに展開するモロッコ軍:
アイルランドは、1955年、国連に加盟した。PKO(国連平和維持軍)派遣者数は総人口比でみると、ダントツに多い。2023年9月の時点で、戦闘中のUNIFIL(国連レバノン暫定軍)を含み、PKO(国連平和維持軍)に約540名を派遣中だ。
このところ、国連定例記者会見では、紛争に巻き込まれて死傷者を出しているPKO(国連平和維持軍)の動向が取り上げられている。
12月16日の国連定例記者会見でハミド・パレスチナ記者の、「モロッコは、2人のモロッコ兵が西サハラとの国境で殺害されたと発表した。この事件について、MINURSO (ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団) から何か報告を受けたか?」という質問に、「確認させてくれ」と応じた報道官は、翌日、「西サハラで2人のモロッコ兵が死亡したのは地雷事故と、報告を受けた。モロッコ王国陸軍が実施した地雷除去作業中に、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)の責任範囲の北にあるトゥイズギで発生したものと理解している。
MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団) は、これに関するモロッコ軍からの追加情報を持っていない。モロッコ王立陸軍からMINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)への月次地雷除去報告によると、過去数ヶ月間、モロッコ陸軍はをトゥイズギを含むMINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)の責任範囲の北で掃討作戦を実施しているとのことだ」と発表した。
西サハラの国連緩衝地帯で何が起こっているのか?モロッコ占領地・西サハラで何が起こっているのか?なぜ国連はモロッコ軍の一方的な情報しか発表しないのか?モロッコ軍の掃討作戦とは?、、疑問だらけの国連報告だったが、誰も追及しなかった。
モロッコよりのファシATN記者が前の席に陣取って、目を光らせていた。
③ 西サハラを支援する旨のアイルランド外交文書:
アイルランドの西サハラ問題に関する見解を、西サハラ・ポリサリオ戦線国連代表でMINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)調整官を務めるシデイ・オマル博士に問い合わせた。すぐに、オマル博士から<Foreign Policy>と銘打った、2024年2月27日付アイルランド政府内の外交文書が転送されてきた。
文書は、連立政権に参加しているシン・フェイン党のクリス・アンドリュース議員と緑の党のパトリック・コステロ議員が提出した質問に、マイケル・マルティネス・アイルランド外相が解答するという形式をとっている。アイルランド外相の解答を以下に紹介する。
「2月14日、私の省の職員は、西サハラで進行中の政治状況について話し合うために、ポリサリオ戦線の訪問代表者と会った。この会議は、この地域での武力紛争の再燃、MINUURSO(国連西サハラ人民投票監視団)の関与、和平プロセス、サハラ難民キャンプ内を含む人権問題など、さまざまな問題について議論する機会となった。代表団は、EU・モロッコ漁業協定について欧州司法裁判所で進行中の訴訟も提起した。西サハラに対するアイルランドの長年の立場は、MINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)、国連主導のプロセス、そして、この問題に関する決定的で相互に受け入れ可能な政治的解決をもたらすための事務総長の努力、、などに対する賛同に基づいている。
アイルランドは、在ラバト大使館などを通じて、建設的な関与を行い、2023年9月のデミストラ同地域訪問など、国連イ二シャテイブを支援し続けている。アイルランド大使館はチュニジアとモーリタニアにも設置されており、この問題に関連して両国との接触が可能だ。特にモーリタニアは、2023年10月30日に採択された決議2703を含む、西サハラに関連する国連安保理決議でその名前が挙げられている。
私が以前に述べたように、アイルランドは西サハラを国際法の下で非自治地域として認めている。私たちの長年の政策は、西サハラの人々の自決に関する国連安保理を支持することだ。その決定が平和的に、そして真の自己決定の行使によって決定される限り、私たちはその決定の結果について見解を持っていない。」
アイルランド外交文書に出てくるポリサリオ西サハラ政府代表団は、ポリサリオ戦線事務総長兼SADR大統領ブラヒム・ガリ、モハメド・サレム・ウルド・サレク内務大臣(外交問題担当)、オマール・マンスール(欧州・欧州機関担当大使)、シディ・オマルポリアリオ戦線代表でMINURSO調整官、アブダティ・アブリカ大統領顧問、などで構成されていました。 我らが友・オマル博士もいます!
代表団は2024年2月14日と15日にアイルランドを訪問し、その間、マイケル・ダニエル・ヒギンズ・アイルランド大統領とも会談しました。 その席で代表団はサハラウィ問題の進行状況や国際社会での連帯活動を報告し、アイルランド大統領とは将来の行動計画について話しを詰めたそうです。
アイルランド大統領官邸で、左から、ガリ西サハラ難民大統領、オマル西サハラ 国連代表兼MINURSO調停官、マイケル・ヒギンズ・アイルランド大統領
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 定価:本体1,800円+税、 発行人:松田健二、 発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2024年12月21日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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