本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(497)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう( ほんまゆたか) : ポスト資本主義研究会会員
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2024.12.22

失脚が噂される習近平

現在の中国では、「習近平の失脚、あるいは、辞任」が噂される状況となっているが、この理由としては、ご存じのとおりに、「あまりにも稚拙な経済政策や外交」などが挙げられるものと考えている。つまり、「鄧小平の改革開放政策」により、短期間のうちに「世界第二位の経済大国」に急成長したものの、現在では、「人類史上、稀に見るほど急激な経済的没落」を味わっている状況とも言えるのである。

そのために、「中国共産党」としては、「習近平国家主席の交代」により、再度、「経済的な成長」を目論んでいるものと思われるが、この点に関する注意事項としては、「失った信用が、いつ、どのようにして回復されるのか?」が挙げられるものと考えている。具体的には、「マルクス主義的中華思想」とでも呼ぶべき認識、すなわち、「資本主義崩壊後に共産主義の時代が訪れ、その時には、中国が世界の覇権国になる」というような理解のもとに、「他国を侵略するような行為」を繰り返している状況については、今後、世界中の人々が、より一層、警戒心を抱くものと思われるのである。

しかも、現在の世界情勢については、「1980年代からの中国」、そして、「1990年代からのロシア」からも見て取れるように、「共産諸国が資本主義化し、グローバル共同体を形成した状況」が終焉した状況とも言えるのである。別の言葉では、「グローバル共同体の形成過程で、大量のデリバティブとデジタル通貨が創り出された状況」だったものの、現在では、反対に、「グローバル共同体や国家共同体の分裂」が始まっている段階とも言えるのである。

より詳しく申し上げると、「共同体の規模拡大に比例して膨張した世界のマネー」については、現在、急速に収縮を始めており、その結果として、世界のいたるところで、「大量の不良資産発生」や「資金面での枯渇」に見舞われる状況となっているのである。つまり、「1980年代からの中国の経済発展」については、きわめて異例な好条件下で発生した出来事とも考えられために、「今後、同じような展開が繰り返される可能性」については、ほとんど存在しない状況とも思われるのである。

そのために、これから予想される事態としては、「1600年前の中国」と同様に、「国家の分裂」が挙げられるが、実際には、「中国共産党の消滅」により、当面は、「内乱状態が繰り広げられる可能性」であり、その後に、「南北朝」のような「国家が二分される状態」とも言えるようである。

2024.12.23

軍事力と資金力による支配

50年以上もの長期間に及んだ「シリアの恐怖政治」については、実情を知れば知るほど、「独裁者の残忍さ」を思い知らされる状況であったが、一方で、「過去の独裁者と同様の末路」についても、改めて、歴史の教訓が繰り返されたものと感じている。つまり、「どれほどの恐怖政治が行われようとも、最後には、必ず、国民の力が勝る展開」のことでもあるが、この点に関して気になるのは、やはり、「北朝鮮と中国の今後」である。

具体的には、「1953年以降の北朝鮮で、70年以上もの長きにわたり、金一族による世襲政治が継続している状況」、そして、「1949年以降の中国でも、同様に、共産党の一党支配が継続している状況」のことである。別の言葉では、「シリアと同様に、軍事力を背景にした恐怖政治が継続している状態」とも思われるが、今後の注目点は、「いつ、北朝鮮や中国の国民が、政府に対する反旗を翻すのか?」だと考えている。

しかし、一方で、決して見逃してはいけない事実としては、「資金力による支配」が挙げられるものと感じているが、このことは、「水茹での蛙」といわれるように、「西洋先進諸国の人々が、気付かないうちに、いつのまにか、資金の力に支配されていた状況」である。つまり、「インフレ税による通貨価値の下落」が発生し、「時間の経過とともに、自分の資産が目減りしていた状況」のことだが、この点については、「軍事力による恐怖政治」とは違い、「百万人に一人も気付かないうちに発生する事態」とも理解されているのである。

このように、今までは、東側の共産諸国で「軍事力による支配」、そして、西側の資本主義諸国で「資金力による支配」が実施されていたものの、現在では、「国民の生活」に問題点が出始めるとともに、「国民の不満」が高まっている状況とも理解できるのである。つまり、今回の「シリア」と同様に、「北朝鮮や中国」においても、「独裁者」が排除され、「国民の自由度」が増す展開が想定されるが、注目すべき点は、やはり、「西洋諸国の人々が、いまだに、資金力による支配の実態に気付いていない事実」とも言えるようである。

より詳しく申し上げると、「1991年のソ連」のような状態が、間もなく、「東側諸国のみならず、西側諸国でも発生する可能性」が高まっているものと思われるが、実際には、ほとんどの人々が、依然として、「裸の王様」の状態である「デジタル通貨」に頼り切っている状況とも言えるのである。つまり、人類史上、初めて、通貨となった「数字」に対して、全世界の人々が信頼感を置いている状況でもあるが、今後の注意点としては、やはり、「王様は裸だ」と叫ぶ子供の存在が指摘できるものと感じている。

2024.12.25

インフレ統計指数の問題点

インフレに関する統計数字については、以前から、いろいろな議論が出ているが、私自身が考える「最も大きな問題点」としては、「債券や株式、あるいは、土地などの金融商品が統計数字に含まれていない事実」が指摘できるものと考えている。つまり、本来の「インフレ」については、「マネーの残高」と「商品の量」とを比較した数字から算出されるべきものが、実際には、「大量のデジタル通貨」と「いろいろな金融商品」が存在しながらも、「統計数字には、旧来の商品バスケットしか含まれていない状態」であることも理解できるのである。

別の言葉では、「デジタル通貨の海」とでも呼ぶべき「コンピューターネットワークで形成された大量のデジタル通貨」が、「2008年のGFC(世界的な金融大混乱)以降、債券や土地、そして、株式のバブルを発生させた状況」、すなわち、「債券や商業不動産、あるいは、株式などのデジタル化された金融商品に殺到し、価格を暴騰させていた状況」だったことも見て取れるのである。しかし、一方で、「インフレ指数に組み入れられている実物資産」などは、「価格統制」が実施され、「インフレ指数の上昇」に繋がらないような工夫がなされていたことも理解できるのである。

そのために、今後の注意点としては、「インフレの大津波」が、「債券」から「不動産」、そして、「株式」から「実物資産」へと移行する過程で、「既存のインフレ指数に対して、どのような影響を及ぼすのか?」を考えることが挙げられるのである。つまり、今までは、「大量のデジタル通貨が、インフレ指数に影響を及ぼさない資産の価格を上昇させてきた状況」だったものが、今後は、「未曽有の規模の資金が、インフレ指数に影響のある実物資産へと流れ始める展開」が想定されるのである。

具体的には、すでに価格急騰が始まっている「カカオ」や「コーヒー」、あるいは、「オレンジジュース」に加えて、「貴金属」や「原油」などの価格も急騰局面に入るものと思われるが、この時の注目点は、「急騰するインフレ指数に対して、人々が、どのような反応を見せるのか?」だと感じている。

つまり、「100万人に一人も気付かないうちに進行する」と言われる「ハイパーインフレ」については、基本的に、「インフレ統計指数の問題点」が存在するようにも思われるが、現時点では、「1991年のソ連」などと同様に、「紙幣の大増刷」が世界的に実施され始める段階に差し掛かっているものと思われるのである。

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
〔opinion14081:250131〕