アジア・太平洋地域の2025国際協同組合年がスタート

東京でキックオフイベント

東京・渋谷の国連大学で2月19日、「2025国際協同組合年キックオフイベント」が開かれた。日本の協同組合によって結成された「2025国際協同組合年(IYC2025)全国実行委員会」、国際協同組合同盟アジア太平洋地域(ICA―AP)、国際労働機関(ILO)駐日事務所の3者共催で、日本をはじめとするアジア・太平洋地域の29カ国の協同組合団体の関係者750人(うち500人はオンライン参加)が集まり、この地域の2025国際協同組合年を本格的にスタートさせた。

2025国際協同組合年のロゴ

国連が推進する「国際年」とは、各国に共通する特定のテーマに国際社会が1年間を通して集中的に取り組む企画である。最初の国際年は1957年の「国際地球観測年」。その後、「国際婦人年」「国際児童年」「国際平和年」などが設定された。そのテーマに協同組合が初めて選ばれたのは2009年の国連総会で、そこで「2012年を国際協同組合年とする」と決議された。

世界で10億人を超える協同組合組合員

世界には農業、漁業、林業、信用、保険、住宅、エネルギー、消費生活、労働などあらゆる分野の協同組合があり、国際協同組合同盟(ICA)に結集している。ICAの本部はジュネーブにあり、現在、112カ国の318の協同組合全国組織が加盟している。ICA傘下の組合員は10億人を超える。
日本からは、15団体(全国農業協同組合中央会、全国農業協同組合連合会、全国共済農業組合連合会、農林中央金庫、家の光協会、日本農業新聞、全国漁業組合連合会、全国森林組合連合会、日本生活協同組合連合会<、日本コープ共済生活協同組合連合会、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会、全国労働者共済生活協同組合連合会、全国労働金庫協会、全国大学生活協同組合連合会、日本医療福祉生活協同組合連合会)がICAに加盟しており、傘下の組合員数は延べ(重複加盟)て1億820万人にのぼる。日本国民の大半が協同組合員なのだ。

第1回の国際協同組合年は2012年に実施されたが、施行前の国連決議は、次の3つの目標に向けて国連、各国政府、協同組合関係者が活動するよう奨励していた。
①協同組合についての社会的認知度を高める
②協同組合の設立や発展を促進する
③協同組合の設立や発展につながる政策を定めるよう政府や関係機関に働きかける

SDGsの実現に向けた協同組合の実践に期待

2025年に実施される国際協同組合年は、いわば2回目となったわけだが、これに向けて昨年11月3日に採択された国連総会宣言は「協同組合の取り組みをさらに広げ進めるため、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた協同組合の実践、社会や経済の発展への協同組合の貢献に対する認知を高めるために、国連、各国政府、協同組合が、この機会を活用することを求めています」としていた。

SDGsとは、国連が定めた、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等の実現」「質の高い教育をみんなに」「人や国の不平等をなくそう」など17項目の国際目標である。
日本でも目下、協同組合や企業がこれらの目標の実現のために活動しているが、国連としては、協同組合陣営にさらに大いに頑張ってほしいというわけだ。国連としては、2012年に国際協同組合年を実施してみて、協同組合がもつ実行力、結集力に改めて目を見張ったということだろう。

「格差と分断の世界で連帯の力を発揮しよう」

さて、19日の2025国際協同組合年キックオフイベントは多彩なプログラムであった。
第1部は式典で、山野徹・日本協同組合連携機構会長/全国農業協同組合中央会会長の挨拶、アントニオ・グテーレス国連事務総長のビデオメッセージ、橘慶一郎内閣官房副長官(石破首相の代理)の日本国政府挨拶、森山裕・協同組合振興研究議員連盟会長(自民党幹事長)の挨拶、アリエル・グアルコICA会長のビデオメッセージ、チャンドラ・パル・シン・ヤダフ国際協同組合同盟アジア太平洋地域(ICA―AP)会長の挨拶、高碕慎一・国際労働機関(ILO)駐日事務所代表の挨拶、シメル・エシム国際労働機関(ILO)協同組合・社会的連帯経済ユニット長のショート・プレゼンテ―ション、イラン協同組合会議所代表とマレーシア協同組合中央会代表による活動計画紹介などがあった。

キックオフイベントの会場は国連大学国際会議場

いずれも、協同組合を発さらに展させる決意を語ったが、とくに印象に残った挨拶やメッセージの1つはグレーテス国連事務総長のビデオメッセージだ。その中で、同事務総長は「皆さまは…貧困や社会的排除と闘い、食料安全保障を強化し、地域の事業者が、国内市場・国際市場にアクセスできるよう支援し、さらに多くのことを行っています。私たちの世界が複雑な課題に直面し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け取り組む中で、皆さまの団結した努力は不可欠です」「皆さまのテーマにあるように、協同組合はよりよい世界を築きます。国連は、この重要な取り組みにおいて皆さまとともにあることを誇りに思います」と述べた。
高碕ILO駐日事務所代表の「これから先、世界は一層、格差と分断が深まるだろう。協同組合が、連帯の力を発揮するよう祈念します」という挨拶も印象に残った。

協同組合のねらいはBetter Worldをつくること

キックオフイベントの第2部は国内・海外からのプレゼンテーションや組合員・役職員からのメッセージだった。さまざまな協同組合関係者から活動報告があったが、全国大学生活協同組合連合会の髙須啓太・理事がプレゼンテーションの中で「協同組合のねらいは、Better World(よりよい世界)をつくることにある」と発言した。

キックオフイベントの最後は、比嘉政浩・国際協同組合年(IYC2025)全国実行委員会幹事長(日本協同組合連携機構代表理事専務)による行動提起。その中で、比嘉氏は、国際協同組合年(IYC2025)全国実行委員会の活動目標は「持続可能で活力ある地域社会の実現に資することにある」として、次の4つの活動を進めようと呼びかけた。

  1. 協同組合に対する理解を促進し、認知度を高めること
  2. 協同組合の事業・活動・組織の充実を通じてSDGs達成に貢献すること
  3. 地域課題解決のため協同組合間連携やさまざまな組織との連携を進めること
  4. 国際機関や海外の協同組合とのつながりを強めること

初出:「リベラル21」2025.02.25より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座https://chikyuza.net/
〔opinion14119:250226〕