トランプ現象

韓国通信NO765

トランプ大統領にウンザリする毎日。何を言い出し、何をしでかすか目が離せない。オーマイゴッド!大統領に選んだ国民の気が知れない。

アメリカ・ファーストーMAGA(アメリカを再び偉大な国に)は、自信をなくした約半数の国民から歓迎されても、国民の残り半分と世界は呆れて当惑するばかりだ。

アメリカ優先、その他はどうでもいいとはわかりやかすいが、子供じみていないか。

有罪判決を含め、数えきれない刑事被告人でありながら大統領に当選。なかでも首謀者とされる国会突入事件で服役中の1500人を出獄させた無法。国際刑事裁判所にまでイチャモンをつける国際的無法者。地球温暖化を認めず石炭も石油も「掘りまくれ」とは。関税の引きあげ。グリーンランドもカナダも、パナマもアメリカのものと平然と言い放ち、戦争も平和も金儲けのためという常識破り。

俄然、国連がピンチに陥った。

国連が目指す国際平和、人道主義、基本的人権の尊重と国際協調がトランプ就任2か月で崩壊したかに見える。

日本国憲法の精神と通底する国連憲章無視のトランプの傍若無人ぶりとヨーロッパ各国に広がる極右ナショナリズムは、世界を再び、不寛容、憎悪、無秩序の世界へ導こうとしている。

かつての西ドイツ大統領ヴァイツゼッカーの演説を思い出した。

「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」

あらためて日本を含む欧米先進諸国は過去から何も学ばなかったと感じる。ドイツのホロコーストの話はだけではない。揃いも揃って主張する自国ファーストは新たな「帝国主義」に他ならない。人道主義も人権もない世界が拡大再生産されようとしている。

気候変動による人類絶滅の瀬戸際に立つ「人新世時代」に、自国と自国民の利益だけを主張する愚かさを既に40年前にヴァイツゼッカーは警告していた。

<韓国の今、韓国は何処(いずこ)へ>

突然の「非常戒厳」宣言から3か月になろうとしている。ヒットラーもトランプも尹錫悦も選挙をとおして独裁者になりうることを知った。

過日、ある会合で韓国情勢を語らされる羽目になった。突然の戒厳令と撤回、市民の猛反発とその後の弾劾裁判と刑事訴追は周知の事実だが、会場が期待した事件の背景と今後の見通しについては「わからない」と言うほかなかった。

大統領の戒厳令を知った市民が国会議員と国会に集まって撤回させたエネルギーはとても真似ができない。いざとなったら私も国会へ行こう!そう決めたのは彼らのおかげ。何て素晴らしい韓国の友人を私たちは持ったことか。

だが、事態は意外な展開を見せる。大統領が「反対勢力が国政の妨害をした」「批判勢力は北のスパイ」と言い放ち、自己を正当化して驚かせた。トランプとそっくりな「すべてウソ」「陰謀」という主張だが、これに呼応した大統領を支持する市民が現れ、一大勢力となって国旗と星条旗を振り、各地で大統領の釈放を求めるという意外な展開を見せた。

2月25日、弾劾裁判はすべの審理が終えて判決を待つばかりになったが、政府系新聞「朝鮮日報」は連日のように大統領支持派の動向を伝え、「弾劾しろ」という主張と弾劾集会がかすむほどに大統領擁護の姿勢を見せている。韓国在住、留学時代のクラスメート(米国)から「韓国の民主主義の底力を確信した」という自信にあふれたメールをもらった。

また旧知の大学教授のメールは「弾劾は100%成立する見込みだが、分裂した国論をどう克服するかが今後の課題」と社会の分断を心配した。弾劾裁判

弾劾裁判最終陳述風景/ハンギョレ新聞より
<対立する韓国の国論>

よく知られることだが韓国は反共を国是とする。歴代大統領は南北統一を掲げながら北朝鮮の政治体制を批判してきた。

金大中、廬武鉉、文在寅大統領は北との緊張緩和に努力を傾けたが、容共ではない。もちろん三人の大統領とも反日、反米ではない。日本のアメリカべったりの政治家と違い、独立国家の代表としての矜持を持った親日、親米だった。それに比べ尹錫悦は主体性を欠く親日・親米派だった。反共の土壌の中でさらに過激な反共主義を主張する極右勢力が今回の非常事態騒動をきっかけに存在感を示し、国論があたかも真二つに分かれている印象を与えている。尹大統領は軍政時代に培われた反共、いわゆる「アカ」攻撃の記憶をパンドラの箱から引き出してしまった。韓国では積年の懸案である「国家保安法」の国民的議論が必要と思われる。

わが国のマスメディアにも中身の検証もなく安易にレッテル貼りに終始する傾向があるので要注意だ。

<緊急事態条項という改憲>

思いのままの政治を目論み戒厳令を公布して破綻した今回の事件。

戒厳令は無関係と思いがちなわが国で、地震や感染病、戦争に備えて国会、基本的人権、地方自治、言論を停止させる緊急事態条項を憲法に定めようとする動きが活発化している。緊急事態条項を憲法に書き込むことは国家非常事態を認めることだ。隣国の今回の事件から学ぶとすれば、わが国も非常事態独裁に突き進む危険性があるとういうこと。石破自公政権は国民民主党、日本維新の会を巻き込んで改憲に突き進もうとしている。緊急事態条項はその目玉といってよい。会合での拙い説明に加筆して、「韓国の今」のレポートとしたい。

初出:「リベラル21」2025.03.06より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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