ミャンマー、余りに情けない日本政府の対応

 3月28日、内戦による殺戮と破壊で人道的危機状態にあったミャンマーを、未曽有の大災害が追い打ちをかけた。詳しい論評は後日を期したいが、ここでは一点、日本政府の対応に警鐘を鳴らしたい。
 大地震後、中国とシンガポール、ロシア、インドは、人命救出を第一に救援隊を可及的速やかにマンダレーなどの被災地に派遣し、直ちに救援救助活動に入った。日頃西側社会から非人道的強権的と批判されることの多い権威主義国家群が、人命救助に決定的な初動に速やかに着手した。それに対し、わが政府は「地震で被害を受けたミャンマー側のニーズや治安状況を確認する目的で、JICA=国際協力機構を通じて調査チーム5人を派遣すると発表した」と報道されている。度重なる自然災害で救援活動の政策と技術を学んできたはずの日本政府の、なんたる及び腰!中国やロシアはあざけりの高笑いをしているであろう。「黄金の72時間」――人命救助におけるタイムリミットは、災害発生後72時間(3日間)とされている。それであるのに、「今後、医療支援を念頭に緊急援助隊を派遣することも検討していて、現地で調整を行う予定である」としている。緊急性については世界のだれよりも熟知しているはずの日本政府であるが、典型的な官僚用語である「検討、調整」という言葉が躍っている。なんという体たらくか!

 手作業では間に合わない。             イラワジ

 ミャンマーの事情を把握しているはずの日本大使館=外務省であれば、過去2008年のサイクロン・ナルギスの経験が蓄積されているはずである。あのとき災害復旧の最大の障害は、土木建設用重機の不足であった――国中の重機は、秘密裏に建設中の新首都ネイピードウに集められていた。重機とまでいわなくとも、崩落したビルの鉄筋コンクリートを打ち砕く装置道具が大量に必要であろうことは、容易に想像できるではないか。石破政権は、国軍と協力していると非難されるのを怖れているのかもしれない。つい最近まで、麻生氏らは日本政府は国軍との太いパイプを有していると自慢していたのだが。
 アセアン諸国をめぐる主導権争いは、今後苛烈を極めるであろう。ミャンマー社会における評判の悪さを知っている中国は、千載一遇のチャンスとばかり救助のあらゆる手を打ってくるであろう。高度な政治判断と迅速な具体的な対処が、政府間の優劣を決する。国内でリベラル派には極端に嫌われた安倍政権であったが、アセアン諸国での受けは悪くはなかった。問題はあろうとも、アジア太平洋戦略らしきものを掲げ、資金のばら撒きも厭わなかったからである。それに比べれば、石破政権の内向き志向や消極的姿勢は、中国やロシアにとって願ったりかなったりである。中露の覇権拡大は、ミャンマーに幸せをもたらさない。当然であろう、自国の権益を守るために、国民の殺戮を厭わない軍事政権を全面的に支えているのであり、戦火が収まれば、いや戦火の拡大するさなかにあってさえ、ミャンマーからの収奪と搾取を厭わないのであるから。過去日本は、アセアン各国に対し、様々な問題を抱えつつも、総じてインフラ整備に金と技術をおしまず注ぎ込んできた。その努力を無にしてはならない。アウンサンスーチーの敷いたレール=民主化と法の支配を柱とする近代化のコンセプトは、実は内戦にも生きている。非暴力か武装闘争かの違いはあるにせよ、武装闘争のめざすのは権威主義体制ではないということが重要である。少数民族も含め、全国民的規模で「民主主義の実現」という一致点でまとまりうるというのは、アセアン諸国でも初めての経験ではなかろうか。民族解放の戦いが、権威主義国家体制に収斂しない可能性が、そこにはあるのである。

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