ガザ、レバノン、シリア、スーダン、コンゴ、、国連安保理は毎日、血まみれの戦争対応に追われています。 安保理の命を受けたスタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使は、2年前から、安保理メンバーに西サハラの窮状を訴える好機を狙ってきました。 が、安保理は、イスラエルとアメリカが次から次へと撃ちだす魔弾に翻弄され、ますます西サハラから遠のいてきました。 そんな中、安保理に義務付けられた半年に一度の報告をするため、デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使は、現地巡りをしました。 <西サハラ紛争>非公開協議は、4月14日午前9時に予定されています。 が、緊急事態が生じたら、予定は未定になります。

デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使一行(左)を迎える ガリ西サハラ大統領(中央)とオマル西サハラ国連代表(右)
① スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使がモロッコ訪問:
2025年3月24日、スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使はまず、モロッコの首都・ラバトを訪れた。オマル・ヒラール・モロッコ国連大使が同席するブリタ・モロッコ外務大臣との会談でモロッコ代表団は、モロッコのサハラ(モロッコの西サハラ呼称)に対する主権とモロッコ自治イニシアチブのために、ムハンマド6世国王が推進するモロッコ支持の国際的な勢いを強調した。
国王が2024年11月6日、緑の行進の49周年に、国連に向けた「サハラ砂漠における、モロッコが主導する現実的で真っ当な地域と、昔の古い概念を引きずった非現実的で進歩のない地域との、大きな違いを明確にするように」との命令を、代表団は想起させた。
モロッコ代表団はまた、「モロッコの主権と領土保全の枠組みの中で、モロッコ自治イニシアチブのみに基づく、永続的で実用的、現実的、政治的な解決に到達するための国連事務総長と彼の個人特使の努力に対して王国は支持する」と、強調した。
その一方でモロッコは国連に圧力をかけるため、ルビオ米国務長官に「2020年、トランプがモロッコ国王に<西サハラの領有権はモロッコにある>との書簡を送った」と、しつこく食い下がり、4月8日に米国務省から「アメリカはサハラ砂漠に対するモロッコの主権を認めている」との言質を取った。
ポリサリオ西サハラ代表とアルジェリアは、4月9日、「西サハラは、国連が指定した非自治地域で、この領土の人々は、植民地の国と人々への独立の付与に関する国連総会の決議1514に規定されているように、民族自決権を持っている」と、米国務省の見解に強く反論した。
さらにサラ・グジル議長が仕切るアルジェリア国民評議会(上院)は4月9日、「西サハラ問題の解決策は、国連の監督と責任の下での公正で透明な人民投票にある」と、再度、確認した。
② スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使が西サハラ難民キャンプ訪問:
4月4日、スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使が。アルジェリア西端にある西サハラ難民キャンプを半年ぶりに訪れた。
MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)の調整官で国連西サハラ代表のオマル博士がデ・ミストラ特使に同行した。この日は、ムスタファ・モハメド・アリ・シディ・エル・バシール占領地担当大臣と、西サハラの政治囚やモロッコ占領地の状況について会談し、その後、オマル博士の案内で、西サハラ難民キャンプのいくつかの施設を視察し、様々な西サハラ難民活動家たちから状況報告を受けた。
4月5日、デ・ミストラ国連特使と協議したサハラ・アラブ民主共和国大統領でポリサリオ戦線事務総長のブラヒム・ガリ氏は、西サハラの人々の正当な権利を主張し、独立達成まで闘争を続けるという確固たる信念を強調した。そして、国連とAUアフリカ連合による和解計画<国連人民投票>の早期施行を促した。
アルジェリア西端のチンドゥーフ砂漠にある難民キャンプ訪問を終えたデ・ミストラ国連特使は、首都アルジェに戻り、4月6日の夜、アタフ・アルジェリア外務大臣に会った。
会談でアタフ・アルジェリア外務大臣は、「国連憲章と脱植民地化に関する国際的正当性の原則に基づいて、西サハラ紛争の政治的解決プロセスを復活させるための国連事務総長と個人特使の努力に、アルジェリアは全面的な支持をする」と、明言した。
アルジェリア外務大臣はまた、西サハラにおける脱植民地化を完遂する唯一の方法は、紛争の両当事者間の直接交渉を、前提条件なしに誠意を持って再開することであると、アルジェリア政府の揺るぎない信念を強調した。「関連するすべての国連決議に従って、西サハラ人民の民族自決権を行使できる政治的解決が最終目的だ」と、大臣はくくった。
③ スタファン・デ・ミストラ国連西サハラ特使が国連安保理で報告:
4月6日、ジャン・ノエル・バロット・フランス外務大臣もアルジェリアを訪問していた。テブン・アルジェリア大統領とバロット・フランス外務大臣の会談には、ブアレム・ブアレム・アルジェリア大統領府首席補佐官、アフメド・アタフ・アルジェリア外務・海外国民共同体・アフリカ問題大臣、などが同席した。
バロット・フランス外務大臣は4月2日の仏国会外交委員会の公聴会で、「西サハラの現在と未来は、モロッコの自治計画の直接的な結果として、モロッコの主権の枠組み内にある」と、マクロン大統領が2024年7月にムハンマド6世国王陛下に宛てたメッセージを反復している。「フランスはあらゆる面でモロッコの西サハラ略奪を後方支援する」と、マクロン仏大統領は豪語している。
そのフランスが、国連安保理4月議長国を務めているのだ。バロット仏外務大臣が国連西サハラ事務総長個人特使の訪問中にアルジェリアへ乗り込んだ、その目的は何なのか?西サハラ紛争を国連安保理紛争メニューから削除させるつもりなのか? 植民地主義のフランスが動くと、非自治地域(植民地)西サハラで悲劇が大延焼する、、
一方、西サハラ紛争に関する安保理非公開協議のペンホルダーであるステファニー米国連大使が、3月末に突然、トランプ米大統領から指名を外された。理由は彼女が米共和党下院議員で、共和党と民主党議員数との差がさらに縮まるからだそうだ、国連軽視のトランプは、国連事務総長の再三にわたる面会要請を無視し、アメリカ代表部は臨時大使で間に合わせている。
4月7日の国連安保理では、ジャン・ピエール・ラクロアPKO平和維持軍のチーフを始め、紛争地のPKOトップが年次総会を兼ねた報告を行った。西サハラの国連平和維持軍MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)のチーフ・アレキサンダー・イヴァンコは、4月14日にスタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使に同席して、半年間の活動状況を報告する。
ところが、イヴァンコが安保理に宛てた機密扱いの報告書を、モロッコ諜報局がリークした。報告書には、「MINURSOミヌルソ(国連西サハラミッション(国連西サハラ人民投票監視団)が、モロッコ人従業員のグループに今後3か月以内に契約を終了するよう通知した。」とある。が、ニューヨークの国連本部は、新たな外国人従業員の雇用を拒否したと特筆している。特に戦略的優先事項でないPKOの支援を減らすという決定は、トランプ政権の意向なのだろうか?米政府効率化省(DOGE)を国連に適用する前に、定員1,800人プラスアルファが働いているという、アメリカ・ホワイトハウス自身に適用して欲しい。
因みに、国連PKO平和維持軍には、MINUSCA(中央アフリカ共和国)、UNMISS(南スーダン)、MONUSCO(コンゴ民主共和国)、UNIFIL(レバノン)、UNISFA(アビエイ)、UNDOF(ゴラン高原)、UNFICYP(キプロス)、UNMOGIP(インドとパキスタン)、MINURSO(西サハラ)、UNSOS(ソマリア)がある。
4月11日にウィトコフ・トランプ特使と会談したロシアのプーチン大統領は、3月28日に、「ウクライナを一時的に国連の統治下に置き、より<有能な>政府を選挙で選ぶ」と語り、国連に丸投げしようとしています。
一方、国連事務総長は、「グッドオフィスは、平和に向けたあらゆる努力を支援するために引き続き利用可能だ。(所場代はいただいて、)」と、再三にわたって表明してきました。 が、その国連自身が約束した西サハラ平和解決は、30年以上も放置されたままです。 つまり、国連自身は平和に向けて具体的な行動を起こしたりしないという、伏線を貼っているのでしょうか?
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 定価:本体1,800円+税、 発行人:松田健二、 発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2025年4月12日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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