憲法9条を世界に広げよう

憲法大集会に3万8000人

「日本国憲法を世界に広げよう」。雲一つない快晴下の広場に設けられた舞台から放たれたゲストスピーカーの声が、広場を埋めたおびただしい人々の頭上に響きわたった。憲法記念日の5月3日(土・祝日)午後、東京都江東区の有明防災公園で開かれた「未来は変えられる! 戦争ではなく平和なくらし! 2025憲法大集会」。ウクライナ戦争、中東の戦争が止まない上に、米中の対立が進むといった世界情勢を機に日本政府が岸田政権以降、大軍拡に突進しつつある状況だけに、会場には「戦争反対」「憲法9条を守れ」「日本政府は平和外交に徹せよ」との声があふれた。

大集会の主催は、平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会。
護憲団体が統一して毎年、憲法記念日に開く憲法大集会は、2015年に始まった。今年の参加者数は主催者発表で3万8000人。昨年は3万2000人だったから、昨年よりは盛会だったと言える。

この日は連休の真っ只中とあって都内各地は観光客で溢れていたが、東京湾岸に広がる有明防災公園にも旗、のぽり、プラカードをもった労働組合員のほか、護憲団体、平和団体、宗教団体などの関係者、一般市民らが続々とつめかけた。一般市民では、夫婦づれ、友達同士が目立った。1人でやってきた人も多かった。戦争への不安、憲法への関心が国民の間に浸透しつつあるのではと感じさせた。

憲法12条の条文を書いたプラカードを持った男性に出会った。そこには「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」とあった。憲法大集会は全部見てきたが、こんなプラカードは初めて。私には、この男性が、「日本国憲法に書かれていることは、国民1人ひとりの不断の努力によって実現するのだ」と呼びかけているように思えた。

午後1時から始まったメインステージでは、菱山南帆子さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会共同代表)が開会あいさつ。菱山さんはその中で、「かつて戦争をして自滅した日本は、日本国憲法があったからこそ、これまでずっと平和に暮らすことができた。今こそ、私たちは街に出て、未来に向けて日本国憲法を活かす行動に取りかかろう」と訴えた。

スピーチでまず登壇した植野妙実子さん(中央大学名誉教授)は「米国でトランプ政治が続いているが、日本はたじろぐことはない。なぜなら、日本国憲法があるから。これは永久平和主義に基づく憲法だ。これを一国でなく全ての国がもつよう努めましょう。そうなれば、全ての国が平和で楽しく素晴らしい国になるでしょう」「平和でなければ何もできない。絶対に戦争してはいけない」と述べた。

次いでスピーチをした田中煕巳氏(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)は「日本被団協は、結成時から核兵器廃絶を訴え続けてきた。このため、これまで3回、ノーベル平和賞の有力候補にあげられたが、実現しなかった。これは、ノルウェーに、米国の同盟国だから米国にたてつくのは控えたいという思いがあったからではないかと思う。が、昨年、日本被団協にノーベル平和賞の授与があった。これは、ノルウェーが、今日の核状況では核戦争が起こりかねないとの危機感をもち、日本被団協に頑張ってほしい、と考えを変えたからではないかと思う」と述べた。

最後に登壇した古賀茂明氏(政治経済評論家・元経済産業省官僚)は「米国でトランプ氏が2回も大統領選で当選した。これは、米国でおかしい人が増え、おかしい考えが広がっているからだ。日本は米国との関係を直さなければならない。日本が拠って立つ基盤は日本国憲法の精神だ」「中国との関係も変えなくては。日本は中国にミサイルを向けているが、中国の人で日本と戦争をしようと考えている人はいない」「去年の衆院選挙で自民党が負け、政治が変わった。今度の参院選でも自民党を後退させなくては」と訴えた。

この後、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党、市民連合の各代表の連帯あいさつがあった。

集会後、参加者たちはパレードに移った。

初出:「リベラル21」2025.5.04より許可を得て転載
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