SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】637 死後49年経っても死にきれない殉教者

 アルジェリアにある西サハラ難民キャンプでも、6月6日から9日までイスラム教の犠牲祭を祝いました。 なけなしの羊を殺して神に捧げます。 

 一方、イスラエル占領下にあるガザでは、犠牲祭の前も最中も後も、ユダヤ人ファーストを唱えるネタニヤフ・イスラエル軍がイスラム教徒のガザ住民を殺し続けています。

 6月13日、ネタニヤフはユダヤ人の敵だと豪語し、イランをミサイル攻撃しました。

 ネタニヤフの盟友トランプは、ノーコメントでイラン攻撃を支持しました。

① 6月9日殉教者の日:

 もともと砂漠の遊牧民である西サハラ人は、5か所ある難民キャンプ群の夫々が、粗末な囲いを作って難民の残飯で羊を飼っている。 難民の食卓には、肉はおろか野菜も出てこない。年に2回の大きな祭りの時だけ、肉切れが配給される。

 6月9日の犠牲祭最後の日、1976年のこの日に虐殺されたエルワリを追悼し、エルワリの思想と政治と戦略を改めて学ぶセミナーが催された。49年前にエルワリが創造した西サハラ国家建設に向けての構想は、今もポリサリオ戦線の支柱になっている。が、AIは砂漠にも浸透し、次世代の西サハラ難民も心変わり様変わりを始めたようだ。難民の心を、独立に向け一つにするために、ポリサリオ戦線(西サハラ独立運動組織)の指導者たちは犠牲祭と殉教者記念日にスポットライトを当てた。

 ポリサリオ戦線事務局は、6月6日と7日に西サハラ難民キャンプ全域でイスラム教の犠牲祭を祝った後、その流れで、共和国大統領兼ポリサリオ戦線事務総長のブラヒム・ガリ、全国事務局のメンバー、政府、サハラウィ人民解放軍のスタッフが出席して、殉教者の49周年を記念するセミナーを開催した。

 続く数日間、ポリサリオ戦線幹部会議が開かれた。

 エルワリの後継者ブラアヒム・ガリ大統領が会議の議長を務め、檄を飛ばした。

 「サハラ人の権利を潰そうとするすべての試みは、失敗する運命にある。脱植民地化問題としての西サハラ紛争は、自決権と独立の権利の行使なしに解決できない」と、強調した。ポリサリオ戦線事務総長で共和国大統領のブラヒム・ガリ氏が議長を務めた会議で、彼は安全保障理事会に対し、MINURSO(ミヌルソ 国連西サハラ人民投票監視団)に課された任務を遂行するように」と、訴えた。

 ポリサリオ戦線事務局は、モロッコの占領者とその背後にいる者たちの悪巧みが、国際的正当性の決議と国際法の原則の全面的な尊重に基づく西サハラの平和構築を崩し、国際的な安全保障と安定に深刻な結果をもたらした」と、モロッコに対する批判を繰り返した。

 「西サハラの人々は犠牲を払おうとも、あらゆる合法的な手段と方法を駆使して、民族闘争を続ける」と、会議を締めくくった。

 「犠牲を払っても、、」と、犠牲を美化する西サハラ指導者たちだが、もともと<砂漠の遊牧民>西サハラ人は、マゾヒストではない。

     左からエルワリ・ポリサリオ戦線とRASD西サハラ民主共和国大統領の創設者、                    故アブド・ル・アジズ二代目大統領、ブラヒム・ガリ三代目大統領

② 西サハラ人は楽観的で勇壮な砂漠の民なのだ:

 民主党の故エドワード・ケネディーも共和党のジョン・ボルトンも、最後のアフリカ植民地。西サハラを知るアメリカの政治家たちは、超党派で、元米国務長官ジェームス・ベーカーが敷いた1991年の「国連西サハラ人民投票」という国連和平案が、唯一の西サハラ紛争解決策だと主張してきた。

 元アメリカ国連大使で第一期トランプ米大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたジョン・ボルトンが、2025年5月28日にワシントン・タイムス紙に発表した寄稿文で、「モロッコは、自由で公正な人民投票が西サハラの独立選択につながることを恐れて、決議を実施しようとする国連の取り組みを当初から妨害し始めた。ジェームズ・ベーカー元米国務長官は、両当事者を対話のテーブルに戻すことに成功し、人民投票の実施を改める約束を交わしたが、モロッコは再び公約を破り、何度も承認した人民投票を検討することさえ拒否した。残念ながら、それ以来、モロッコの妨害は続いている、、」と、国連和平案が暗礁に乗り上げている原因を明確にした。

 ボルトンは、ベーカー元米国務長官で当時国連西サハラ人民投票事務総長個人特使を手伝って、人民投票実現に尽力した。一方、金儲けファーストのトランプ米大統領は、西サハラの地下資源と戦略的利点をちらつかせた<モロッコ国王・クシュナー・ネタニヤフ連合軍>に唆され、当時の米大統領国家安全補佐官だったボルトンを首にし、<西サハラはモロッコ領土>とする書簡をモロッコ国王に送った。2020年12月10日、トランプ第一期末のことだ。
 「とっても馬鹿な奴」と、5月5日にトランプのことをボルトンに言わせたオーストラリアTVは、6月8日に<見えない女>と題してメラニヤ・トランプ(55才)の20分ドキュメンタリーを流した。メラニヤのセミヌード写真や、トランプの不倫相手ストーミー・ダニエルズの舞台映像を編集したりして、コールガール・イメージを作り上げようとした。が、逆に、メラニヤの美しさを、際立たせた。

 メラニヤを生んだスロベニアには、美人が多い。メラニヤ・ファーストレデイは、大学に入ったころユーゴスラビア内戦が起こりアメリカに渡り、モデルをやりながら2001年に永住権を獲得した移民で、2018年6月にはトランプの移民政策を批判した。自動車工の父と子供服メーカー従業員の母は、旧ユーゴスラビア下で、共に共産党員だった。

③ 最後のアフリカ植民地・西サハラ:

 アルジェリア人民民主共和国のアブデルマジド・テブーン大統領は、ナターシャ・ペレツ・モサール・スロベニア大統領の招待で、2025年5月12日から14日までスロベニアを公式訪問した。ナターシャ大統領はメラニア大統領夫人の弁護士を務めていた。

 共同記者会見で、共和国大統領とスロベニア大統領は、エネルギー協力から人工知能、移民、環境問題などの地球規模の問題の管理に至るまで、共通の関心事に関する意見を交換し、アルジェリアの首都アルジェとスロベニアの首都リュブリャナの間の永続的な戦略的パートナーシップへの道を開いた。

 テブン・アルジェリア大統領は、ヨーロッパで初めてパレスチナ国家を承認したスロベニア共和国の「勇敢で正直な立場」を称賛した。ナターシャ・スロベニア大統領は、国際社会に対して「イスラエルのガザに対する侵略を止めるための緊急行動のための対話を強化しよう」と、呼びかけた。

 彼女は西サハラ問題に関する自国の立場を強調し、「国際法性の枠組みの中で西サハラの人々が自決する権利」を訴えた。テブン・アルジェリア大統領は、西サハラ問題に対するスロベニアの立場を称賛し、それは西サハラの人々に自決権を保証する解決策に基づいていると述べた。アブデルマジド・テブーン大統領は、「国連の支援の下で解決策を見つけ、国民投票の組織を通じてサハラの人々の自決権を認める」という彼の主張を繰り返した。

 さらに、両大統領はアルジェリア・スロベニア・ビジネスマン・フォーラムの開会式で共同議長を務めた。共和国大統領は、アルジェリアとスロベニアのビジネスマンに、二国間の経済および貿易関係を強化し良好な政治関係のレベルに立つよう呼びかけた。共和国大統領はスロベニアのロベルト・ゴロブ首相と共同宣言に署名し、いくつかの協定と覚書の署名式を主宰した。

 6月9日から始まった国連脱植民地委員会で、アフリカ最後の植民地・西サハラが脚光を浴びました。 が、ユダヤ人ファーズトのネタニヤフ・イスラエル首相が、モサド情報機関が<Operation Lionライオン作戦>と名付けたイラン攻撃を始めると、国連はイスラエルが仕掛ける新たな戦争にシフトし、またもや西サハラは国際社会の隅に追いやられました。

 因みに<ライオン作戦>という言葉を、イスラエルの配下にあるモロッコが、軍事だけでなくスポーツや西サハラ対策でも好んで使っています。 西サハラの殉教者はモロッコのおかげで、イスラエルのおかげで、この世を彷徨い続けることになりそうです、、 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。                                   著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、                    定価:本体1,800円+税、                                                発行人:松田健二、                                                     発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。                   「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc                         「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。                    「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo                       「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2025年6月14日                    SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye5973 : 250614〕