「夏越の大祓(なごしのおおはらい」をし損ねて

  6月29日、京都のガーデンパレスでポトナムの全国大会が開催された。昨年は東京での開催だったので、めずらしく連続の参加となった。顔見知りの会員が々少なくなっていくのが寂しい。それでも、誌上で名前しか知らない方々の幾人かと話をかわすのは、楽しい。誌上での作品にもおのずと親しみを覚えて読むことができる。

 恒例の選者賞や互選賞には、まったく私には縁がない。今年は、選者同士というのが幾組かあった。互選賞のトップも選者のお一人だった。講演は、吉川宏志さん、新しい、若い歌人たちの作品の傾向、読み方についてであった。雑誌などで、断片的には、接する歌人たちの作品が例に挙げられていたが、私には、歌集としては読む機会がないものだった。「わからない歌があってもいい」「快い雰囲気や気分が伝わったり、抱えて持つのがかっこよかったりする歌集も多い」のでは・・・とも。中で、私が読んだのは、唯一、屋良健一郎さんの『KOZA』だったが、重い、しっかりしたテーマを持つ歌集だったと思う。

 コロナ以降、ポトナム大会は、日帰りとなり、懇親会は夕方の6時半には解散である。今回、私が大会に参加の間、同行の夫は、長い学生時代を過ごした京都だったので、ひとり、思い出の地をめぐって来た由。


2階の会場近くのロビーから蛤御門を望む。右手手前は土御門内裏跡の石碑がある。

 ホテルは、向かいが京都御所の蛤御門、敷地は土御門内裏跡の一部ということだった。翌日は、ゆっくり目にホテルを出たが、ともかく暑い。地下鉄の丸太町まで、歩いて7・8分ながら、行きには気づかなかった、いくつかの見どころがあった。

 護王神社~6月30日は「夏越の大祓」本番

 6月30日は、年の半分を過ぎたところで、つぎの半年が無事に過ごせるようにと、「茅の輪」を何度かくぐり巡ると、お祓いができるとのこと。午後からはその神事もあるらしい。平安遷都に尽力した和気清麻呂公を祀る。かつて清麻呂公の災難を助けたというエピソードから、狛犬に替わって「狛イノシシ」が拝殿前に置かれている。


午後3時から大祓いの神事が行われるそうだが、午前中からにぎわっていた。茅の輪の右手にはイノシシが、さらに右手には、この輪の正式なくぐり方の説明があったが、何やら複雑でもあり、省いて先を急いだ。「大祓い」はできなかったのである。


居の右手には、樹齢百年を超える花梨の木があって、そのわきには、吉井勇の歌碑があった。「風なきに榠樝の實またほろと落つかくて極まる庭のづけさ」とある。 説明版では「榠樝」に「くわりん」と仮名が振ってあり、とくに、この境内の花梨を歌ったものではなく、歌集『残夢』から採ったという。2009年11月「昭和天皇陛下御即位二十年奉祝記念」として建立との記載があった。

有栖川家旧邸~その持ち主の変遷

 明治初期に京都御所の建礼門前に建てられ、地裁の仮庁舎になり、1891年に現在地に移築。地裁所長の官舎として使用された後、2008年に大学校舎などが隣接する平安女学院が取得し、茶道や華道の授業やクラブ活動に使われてきた。2148㎡の敷地に木造平屋の主屋のほか登録有形文化財になっていた。
 ところが、平安女学院は、創立150年を迎えるにあたって、経営上、入札を経て、大手「森トラスト」に売却したというのが去年のことである(読売新聞 2024年6月2日)。女子大学経営はどこも厳しいらしい。京都ノートルダム女子大学の2026年からの学生募集停止のニュースも報じられたばかり。

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聖アグネス教会

日本聖公会聖アグネス教会は、1923年10 月、平安女学院(St.Agnes’School)の生徒・教職員による教会として認可された。第二次大戦中は、軍需資材置場に充てられたり、戦後は占領軍将兵の礼拝に用いられるなどされたが、現在は、日本聖公会の京都教区の大聖堂Cathedralとして、地域に根差す一つの教会(Parish Church)、そして平安女学院の礼拝堂(Chapel)としての3つの役割で持って、信徒を学校関係者に限ることなく、信仰活動の拠点となっているそうだ。大聖堂は1898(明治31)年に竣工し、設計は立教学院初代校長も務めたアメリカ人建築家ジェームズ・マクドナルド・ガーディナーによるもので、外観は煉瓦造のゴシック様式、三層の鐘楼が特徴でもあるという。

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大丸ヴィラ

イギリス風の洋館に「大丸ヴィラ」とあるので、百貨店の施設のようにも思われたが、調べてみると、この洋館は大丸百貨店店主の下村家が居宅として1932年に建てられ、イギリスのチューダー様式でまとめらているという。京都市登録有形文化財に指定されている。

やっぱり京都は奥が深い。一つ一つ、丁寧に見学したいものである。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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