協同組合フェスティバルに4000人

協同組合の魅力を発揮した国際協同組合年行事

「見て、聞いて、体験協同組合フェスティバル」と題するイベントが、7月5日(土)、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれた。全国の協同組合が加わる2025国際協同組合年全国実行委員会と日本協同組合連携機構の共催で開かれたイベントだが、今年が国連提唱の国際協同組合年にあたるため、あえて今年の国際協同組合デー(7月の第1土曜日)をイベントの開催日に選んだ。全国の協同組合がまとまって一般市民を対象にイベントを行ったのは初めてで、予想を上回る4000人が会場を訪れた。

フェスティバルの入り口に掲げられた看板

2025国際協同組合年全国実行委員会と日本協同組合連携機構には、我が国の農協(JA)、漁協、森林組合、生協、医療福祉生協、共済組合、信用金庫、信用組合、労働金庫、労働者協同組合など、多種多様な協同組合のほとんどの全国組織が加入している。
フェスティバルの狙いは、「多くの方々に協同組合の特徴を知ってもらい、そして協同組合が持続可能な地域社会づくり・SDGs(持続可能な開発目標)に貢献していることを楽しく理解・実感していただくこと」だった。
一言でいえば、一般市民に協同組合の魅力をもっと知ってもらいたい、という催しだった。

フェスティバルの主会場は東京国際フォーラムの地下2階の大ホール。フェスティバルの開会は午前10時だったが、それ以前から大勢の人たちが大ホール入り口につめかけた。

開会とともに、その人たちは大ホールに入ったが、そこには38のブースが設置されていた。全国レベル、あるいは地域の多種多様な協同組合が、それぞれ自らの活動や事業を紹介する区画だった。JAや漁協、生協、大学生協、医療福祉生協、共済組合、森林組合、信用金庫、信用組合、労働者協同組合などが「出店」を並べていた。日本協同組合学会のブースもあった。これらのブース群はいかにも壮観で、またたく間にブースとブース間の通路は入場者でうまった。地方からやってきた人たちもいた。

協同組合のブースの1つ

開場直後の午前10時15分から、大ホールの一角にあるステージで開会セレモニーが行われた。JA、JA共済、コープ共済、国民共済、医療生協、パルシステムなど8団体のキャラクター(着ぐるみ)が次々と登壇、ステージ前のイス席を埋めていた入場者の拍手を浴びた。キャラクターに囲まれた日本協同組合連携機構副会長・日本生活協同組合連合会会長の新井ちとせさんは「きょうはフェスティバルを楽しんでほしい。きょう、ここで学んだことを明日からの生活に活かしていただきたい」と開会のあいさつをした。

開会式でステージに並んだ8団体のキャラクター
協同組合はSDGsの達成に貢献できる

この後、このステージでは、防災科学実験ショー、大学生によるビジネスプラン発表などのプログラムがあったが、こことは別の会場で、シンポジウムが行われた。
午前10時30分から行われたシンポジウムのテーマは「SDGsと協同組合~実戦践状況、達成への課題と期待」で、パネラーは日本協同組合連携機構専務の比嘉政浩、慶応大学政策メディア学部修士2年の落合航一郎、恵泉女学院大学名誉教授の大橋正明、全国社会福祉協議会会長・元厚生労働事務次官の村木厚子の4氏(村木氏はオンライン参加)。

SDGsとは、2015年の国連総会で採択された行動計画である。それは「貧困をなくす」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育を」「ジェンダー平等の実現」「安全な水とトイレを」「平和と公正をすべての人に」など17項目の目標を2030年までに実現しようという地球規模の計画だ。

シンポジウムではさまざまな意見が出たが、落合氏は「SDGsの達成度は15~16%で、難しい、苦しい現状だ」と述べた。大橋氏も「SDGsは危機的な状況にある。2030年達成に赤信号が灯っている」と語った。
なぜそうなってしまったのか。大橋氏によれば、まず、SDGsには法的な拘束力ないからだという。国連総会で決議しただけの計画で、条約ではない。したがって、SDGsは目標でしかない。それに、世界政治の上で多国間主義に反対する国が出てきたことも影響しているという。

こうした状況に直面している今、SDGsを達成するにはどうしたらいいか。大橋氏は「SDGsは法的拘束力がないからと政府が動かないなら、市民社会が声を挙げねば。協同組合も市民社会の1つだから、声をあげよ、と言いたい」と話した。
比嘉氏は「数千万人の組合員がいる協同組合はSDGsの達成に貢献しうる。加えて、協同組合の意思決定を握っているのは組合員であり、組合員の意識・行動こそが鍵を握っている」と述べた。

村木氏も、SDGsを達成する上で協同組合が持つ力が大きな役割を果たすとして、協同組合の持つ力を挙げた。それは、次のようなものだった。
●「助け合う」というコンセプトを持っている
●「食」に強い
●「場所」(施設)を持っている
●物流のしくみを持っている
●「物資」を持っている
●情報発信の手段を持っている
●「資金」を持っている
●「働く場」を持っている
●力を持った「組合員」がいる
●学習する文化がある

初出:「リベラル21」2025.7.08より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14314:250708〕