友好団体がキューバに連帯支援金を贈る

米国による経済封鎖で3カ月遅延

少し前のことだが、やはり書いておかねばならないことだなと思ってパソコンに向かった。
7月22日(月)午前中に、東京都港区東麻布にある駐日キューバ共和国大使館で、ささやかな集会があった。キューバとの友好を目指して活動している民間の諸団体が、キューバ共和国へ連帯支援金を贈るための集いであった。

話は七カ月前にさかのぼる。
昨年暮れ、キューバの実情に詳しいラテンアメリカ現代史研究家の新藤通弘氏が「キューバは、今年、革命勝利後、最も困難な一年だったかと思います。CEPAL(国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)などの国際機関では、GDPはマイナス2%下落と推計していますし、私のキューバ人の友人のエコノミストたちは、マイナス4-5%後退と言っています」「こうした中で、市民の日常生活は、モノ不足、長時間の停電という厳しいものです。それでも、キューバ国民は、革命の精神を堅持して頑張っていると思います」「でも、トランプ政権のもとでの、超反キューバ主義者のマルコ・ルビオ国務長官の対キューバ政策は、家族送金、里帰り訪問を厳しく規制して、キューバの外貨収入を大幅に減収させ、経済は、一層困難なものとなるでしょう」として、キューバへのカンパ(連帯支援金募金)を呼びかけた。

これに対し、キューバ友好円卓会議、活動家集団思想運動、キューバの主権を擁護する有志の会、全日本民主医療機関連合会、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会 、日本キューバ科学技術交流委員会 、日本キューバ友好協会、CUBAPONキューバ連帯委員会の8団体と個人30人が募金に応じ、今年4月末までに309万2492円が集まった。

8団体としては、直ちにこれをキューバに送金する予定であったが、厚い壁に突き当たった。本来なら直ちに完了する海外への送金だが、キューバの場合、それが不可能だったからである。
米国政府はキューバ革命直後の1962年以来、キューバに対して経済・貿易・金融封鎖を続けてきた。なんと60年以上に及ぶ封鎖である。国連総会は1992年以来、米国は対キューバ封鎖を解除せよという決議を毎年、圧倒的賛成で採択してきたが(昨年で32回連続)、米国政府は止めようとしない。キューバ政府によれば、この封鎖によるキューバ側の累積損害額は1641億ドル余に上るという。
この封鎖は、米国以外の国々にも適用される。このため、各国の金融機関は、キューバへの送金を受け付けない。米国による制裁を恐れるからだ。今回の連帯支援金のキューバ送金を日本の金融機関は受け付けなかった。ヒセラ・ガルシア駐日キューバ大使によると、スイス、ドイツの金融機関に送金を打診してみたが、どちらも実現しなかったという。

万策つきて浮上したのが、来日するキューバの人に直接現金で渡すという案だった。そしたら、たまたまキューバ政府のエドアルド・マルティネス副首相が大阪・関西万博の行事出席のために来日することになり、冒頭で紹介したキューバ共和国大使館での、ささやかな集会が計画されたわけである。

さて、そのささやかな集いだが、対キューバ友好団体の関係者とキューバ大使館員ら約30人が集まった。ガルシア大使、友好団体代表のあいさつの後、活動家集団思想運動の大村歳一理事からマルティネス副首相に連帯支援金目録が手渡された。金額は315万9492円であった。4月末の時より増えていたのは、4月以降も募金を続けた友好団体があったからである。
目録を手にしたマルティネス副首相は「私たちは自由と主権のために闘っているが、世界の最も強い国にひどい封鎖を受けている。遠い国の皆さんにたくさんの支援をいただき、御礼を申し上げる。帰国したら、皆さんのことを国民に伝える」と語った。

最後に、友好8団体は「共同声明」を朗読した。その全文を紹介する。

「現在、キューバは、1959年の革命勝利以来、最大の危機に直面していることを、私たちは、キューバ政府発表のいろいろな文書を通じて承知しています。長期にわたる計画停電、国際的な経済危機と一層強化された不当な経済封鎖、テロ支援国家指定に起因する経済停滞、インフレ、モノ不足の状態にキューバ国民は、団結して懸命に耐えていることを私たちは知っています。
今回お渡しする連帯支援基金は、ささやかなものですが、私たちのキューバ国民とキューバ革命への連帯の気持ちにあふれたものです。私たち、8団体と30数名の人たちは、キューバ革命が行ってきた、より公正な社会の実現の努力、国民すべてへの無料の医療・教育サービスの提供に強く心を打たれています。
私たちは、この未曽有の困難を、キューバ国民は自らの力で必ず克服するものと確信しています。同時に、この度トランプ政権が発表した大統領覚書は、政治・経済・社会面でキューバに対する主権を侵害し、内政干渉の政策でキューバ経済の息の根を止めようという、様々な国連決議、国際法に違反するもので、私たちは断固反対するものです。私たちは、対等平等、相互尊重、領土保全、内政不干渉の原則に基づいた、アメリカとキューバの関係の確立を希望します」

初出:「リベラル21」2025.08.01より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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