戦後80年、私の8月15日 八首

『現代短歌新聞』に5首、『うた新聞』に3首寄稿いたしました。わずかな記憶も忘れないうちにという思いです。

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「オキナワ」という名のさつまいも(5首)              

疎開地の馬市場跡に居を得れば馬柵(ませ)というもの焚き木となりて

容赦なく変電所にも突き刺さる焼夷弾を見たり父にすがりて

共同の井戸より母は戻り来て「負けたんだって」とバケツを放つ

ふとんには青大将の落ち来たる敗戦の夜は兄たち黙しぬ

「やっとこさ」手に入れたると「オキナワ」を父は掲げて土を払いぬ 

五歳の夏 (3首)                 

兵士らは馬上の一人に従いて馬市場跡に列をなしゆく

行進の靴音止みて号令のあとの晩夏の闇は深まる

農婦らに哀れまれたか収穫後の畝に残れるニンジン拾う

初出:「内野光子のブログ」2025.8.15より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2025/08/post-c54bf3.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net
〔opinion14379:250816〕