SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】652 それでも国連は機能せざるをえない

 「英国は、ここにパレスチナ国家を承認する」英国労働党党首で英国首相のキア・スターマー卿は、2025年9月21日、ビデオで歴史的な重大声明を発表しました。 

 「1917年にバルフォア宣言を発し、ユダヤ人にイスラエルの建国を認めたその英国で、その宣言を覆すパレスチナ国家の承認をした。まさしく、パレスチナ人民の勝利だ」と、フサム・ゾムロット駐ロンドン・パレスチナ代表は、パレスチナ大使館と刻印された表札とパレスチナ国旗を高々と掲げました。 

① パレスチナ国家承認:

 ユダヤ人がパレスチナ住民を銃で故郷から強制退去し、その跡地にイスラエル国家を作ったのは、第二次大戦後の1948年だった。その時、世界をさ迷っていたユダヤ人がパレスチナに集まってきたのは、1917年11月2日にイギリス外相バルフォアが、「パレスチナの地にユダヤ人の国を作ってもいい」という約束をしたからだ。

 バルフォア英国外相は、ユダヤ系英国貴族院議員だったロスチャイルド男爵に対して送った書簡を送り、その中で、イギリス政府のシオニズム支持表明をし、この宣言をアメリカシオニスト機構に伝えるようロスチャイルド卿に依頼した。バルフォア宣言では、イギリス政府の公式方針として、パレスチナにおけるユダヤ人の居住地(ナショナルホーム)の建設に賛意を示し、支援を約束している。

 このバルフォア宣言をお墨付きに、ユダヤ人はパレスチナ人に対して、土地を強奪、虐殺、追放、入植、とあらゆる悪行を重ね、その財力と知力で世界を牛耳ってきた。が、今や、ネタニヤフのジェノサイドが。全てをひっくり返そうとしている。

 パレスチナの地にイスラエル建国を提案し強行した張本人の英国がパレスチナ国家承認したことは、アメリカや日本の承認とは訳が違う。大英帝国連邦のカナダやオーストラリアも、パレスチナ国家を承認した。ポルトガルも続いた。

 国連総会一般討論演説ウィークの前日、9月22日に、フランスとサウジアラビアは、紛争の二国家解決計画に焦点を当て、国連総会で首脳会談を主催した。G7のドイツ、イタリア、米国は出席しなかった。エマニュエル・マクロン大統領は、「平和の時が来た」とし、「ガザで進行中の戦争を正当化するものは何もない」と述べた。サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン・アル・サウード外相も、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に代わって演説した。二国家解決がこの地域の恒久的な平和を達成する唯一の方法と繰り返した。

 国連事務総長は、ガザの状況を「道徳的、法的、政治的に容認できない」と述べ、二国家解決がイスラエル人とパレスチナ人の間の平和のための「唯一の信頼できる道だ」とした。

 ベルギー、ルクセンブルク、マルタ、アンドラ、サンマリノもパレスチナ国家を承認し、193国連加盟国のうち総計150か国を超え、その数はドンドン増えていく、、

 

② 難民キャンプを訪れた国連西サハラ事務総長個人総長:

 ジェレミー・コービン前労働党党首は、英国の英断を絶賛した。

 コービン前労働党党首は、社会主義キャンペーン、パレスチナ連帯キャンペーン、アムネスティ・キャンペーン、核軍縮キャンペーン、ストップ・ザ・ウォー・キャンペーン、、と、キャンペーン好きで、筋金入りの社会主義者だ。2015年から2020年まで労働党党首を務めたが、2024年5月に労働党を除名された。2024年総選挙には無所属で立候補し、かつて所属した労働党の候補者らを破って議席を維持した。コービン氏は、西サハラの独立運動も熱烈に支持している。

 一方、国連外交官僚のスタファン・デ・ミストラ国連西サハラ事務総長個人特使は、2025年9月21日、アルジェリア西部チンドゥフ州にある西サハラ難民キャンプを訪れた。10月半ばに予定している、国連安保理年次報告のためだ。デ・ミストラ国連特使は、まず、ブラヒム・ガリ西サハラ難民大統領から、西サハラ難民とモロッコ占領地にいる被占領民の、半世紀変わらぬ独立に向けての強い意志を告げられた。

 ガリ大統領は、「国連憲章とその決議の目的と原則、アフリカ連合の目的と原則、および関連する国際法に従って、アフリカ最後の植民地である西サハラの脱植民地化のための平和的、公正かつ永続的な解決策を模索している、国連とアフリカ連合に引き続き協力する」と、改めて表明した。 さらに、ガリ大統領は国連、特に安全保障理事会に、MINURSO( ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団 ) が、西サハラの脱植民地化のため、国連の下で自由かつ公正な人民投票を実施するよう、強く求めた。            

 その後、国連特使は、政府幹部や若者たちとの会談を重ね、個人特使は、西サハラ問題の最終解決を模索する5回目の訪問で、国連ミッションの性質について語ったそうだ?

写真は、西サハラ難民キャンプのレセプションで、左からスタファン・デ・ミストラ国連事務総長個人特使、ブラヒム・ガリ共和国大統領兼ポリサリオ戦線事務総長、オマル西サハラ国連代表、アブダティ大統領顧問

③ トランプ米大統領は、国連一般討論演説でも言いたい放題やりたい放題:

 「国連は完全に機能不全だ、エスカレーターは止まってしまうしプロンプターは故障だし、、」と、始まったトランプ節は、割り当て時間を全く無視して1時間も続いた。

 「国連に代わって、私が世界各地の紛争解決に尽力している。7件も解決した」と、ノーベル平和賞向けの宣伝をした。「国連は問題を解決しないばかりか、逆に、我々が解決せざるを得ない新たな問題を生み出している、、国連が移民に財政的支援を行ったことが、西側諸国で移民流入を招いている」と国連を非難した。さらに、「地球温暖化に関する国連予測は間違い」と、断言し、気候変動対策を「史上最大の詐欺」と批判した。

 「国連はトラブル大量生産工場」と糾弾するトランプ米大統領のほうこそ、米国内で、トランプ・トラブルを故意に乱発し、しかも朝令暮改、、トランプ氏の論理は単純で、トランプに逆らったり悪く言ったり気に入らない者は、<民主党の危険な極左>と分類する。そして、証拠もなく病的な粛清を粛々とやる。

 9月20日には、自身のSNSでパム・ポンデイ司法長官に向け、「元司法長官ジェームス・コーミとカリフォルニア州のアダム・シフ上院議員とニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズに対して法的措置を取ってない、さっさとやれ!」と、不満をぶちまけた。この3人は2023年に、トランプ財団の不法収益を有罪に追い込んだからだ。

 米CNNに対し、上院民主党トップのチャック・シューマー院内総務は「司法省を政敵を追い込むための道具にすることは、対象者が有罪かどうかに関わらず、それは独裁への道だ。独裁国家だ」と強く非難した。 クリス・マーフィー上院議員はABCテレビに、「米国は<バナナ共和国(三流国家)>に変わりつつある」と言い、「米国大統領は現在、連邦政府の全権力、FCC(連邦通信委員会)、司法省を使って、すべての政敵を罰し投獄し、放送から排除しようとしている」と、糾弾した。

 米ディズニーは23日、人気の深夜トーク番組「ジミー・キメル・ライブ!」を再開した。米ディズニー傘下のABCテレビは17日、司会者ジミー・キメルの<反トランプ発言>を懸念して、同番組の放送を無期限休止にきめた。が、親会社のデイズニーは<言論の自由>を盾に、「大統領が好まないコメディアンを政府が黙らせようとするのは、反アメリカ的だ」と、キメルと一緒になって、突っぱねた。再開したトーク番組は熱狂的に盛り上がり、ケメルは、この日に国連総会に出席したドナルド・トランプ米大統領が乗った途端にエスカレーターが停まったことなどを含めて、いろいろとからかった。

 が、多くのTV局はキメル・トークショーを放映しなかった。「放送権を取り消す」というトランプ脅しが効いたようだ。

 言論の自由はトランプ米大統領にしかありません

 パレスチナの詩人ダルウィッシュが書いたパレスチナ独立宣言の一節を、フサム駐英パレスチナ大使が、ガザで惨殺された約66,000人の住民を含むジェノサイドの犠牲者に捧げました。

 「われわれの聖なる殉教者たちの魂に、われわれのパレスチナ・アラブ人民全体に、そして世界中のすべての自由で名誉ある人民たちに、われわれは占領が終わるまでわれわれの闘いが継続され、われわれの主権と独立の基盤がそれに呼応して、強化されていく、、」

 ダルウィッシュの独立宣言は、1988年11月15日アルジェリアでアラファトが読み上げました。

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。                               著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、                    定価:本体1,800円+税、                                             発行人:松田健二、                                                     発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。                        「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc                         「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。                 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo                      「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2025年9月27日                        SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/                            〔eye6023 : 250927〕