終わりの始まり

韓国通信NO779

国民の信頼を失った自民党の総裁選びには呆れた。自民のデタラメぶりを棚に上げた茶番劇を外野席で3か月も見せつけられた。「下駄の雪」と言われ続けた公明党に代わって維新が与党入りと言うおまけつき。いずれにしても不安定な政治状況の中から高市<似顔絵>政権がメデタク誕生。

高市早苗 新首相の背景に安倍元首相の亡霊が。これが解党的出直しとは笑わせる。自民党が高市氏に期待するのは勝手だが、「タカ派」として女を上げた高市氏は政治とカネの問題と決して無縁ではない。裏金疑惑の議員たちが、こぞって彼女を支持したのが何よりもの証拠だ。

憲法は変えるもの、日米関係の強化に前のめりの新首相には、富める国の貧しい国民の姿はまるで見えていない。軍事力強化が逆に平和を危うくする自覚もなければ、軍事予算増加による国民の犠牲も見えていない。放言にも等しい所信表明演説から自民党政治が終わりに近づいたのを実感した。

「消える火は光を増す」という譬えがある。高市政権は消える前の光だ。だが消えそうな火でも類焼する可能性がある。消えるまで「火の用心」。

<世界から注目される新政権>
全世界に自国と自分中心主義の潮流が広がっている。その中心がアメリカのトランプ大統領。アメリカはもはや民主主義国家ではないとまで言われる。そのトランプが日米首脳会談を前に高市新首相を絶賛している。武器の購入、軍事力強化が評価された。さすが安倍元首相の後継者である。高市とトランプがどんな顔して握手をするのか見ものだ。

わが国の歴史上初の女性首相、サッチャー元英国首相を尊敬して鉄の宰相になりたい日本の首相に注目が集まるのは当然かも知れない。アメリカの「傭兵」を買って出た日本の周辺国の反応はさまざまだ。

<韓国>
首相自ら「韓国コスメが好き」「韓国ドラマをよく見る」などと非本質的な発言で日韓関係に気を使って見せた。なんてことはない、中国を念頭にアメリカと国内の右翼勢力向けに日米韓の同盟強化を強調して見せただけ。

韓国側の受けとめは、単純ではない。政府も世論も新政権の極右姿勢に不信感をにじませ、靖国参拝、竹島領有問題、過去の歴史問題に強硬意見を持つ新首相を警戒する。だが李在明政府は「大人の姿勢」を見せ、友好関係を維持する意向だ。政治と経済、民間交流は別に考える、いわゆる「ツートラック」方式で日本の新政権を冷静に見極めたい考えだ。

多額な投資要求と軍事費の増額が求められている韓国と日本が一緒になってアメリカの理不尽な要求に抵抗したらと誰しも考えそうだが、高市首相にはできない相談だろう。対中国関係も日韓は違いを見せる。韓国は対中国強硬路線から融和路線へ。日本はアメリカの言いなり路線。対北朝鮮政策でも尹政権の敵視政策から融和政策へ再転換させようとする韓国。拉致被害者救出が最重要課題と言いながら敵視政策を続けるという日本と好対照を見せる。

「韓国とは仲良く」という高市首相の姿勢からは上目遣いが感じられる。私だけだろうか。歴史問題はすべて解決済みという不遜な安倍路線の踏襲に違いない。

トランプがノーベル賞欲しさから北朝鮮と平和条約でも結んだら、拉致問題が解決しない限り国交回復はしないと豪語してきた安倍路線が破綻する。2002年の「平壌宣言」を生かさず、長年にわたって拉致被害者と家族を苦しめてきたのは自民党政権だった。

<台湾と中国>
台湾に対し「日本にとって台湾は基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人だ」と運命共同体のようなエールを送った高市首相。中国にとっては新たな懸念材料になった。敵基地攻撃を前提にミサイル配置に邁進するわが国は、一触即発、中国との関係を一層険悪なものにした。所信表明は日本の消滅を予感させるものだった。

高市、小泉ら戦争を知らない若者たちに、「戦争抑止」を軽々しく語らせてはいけない。それは先人たちの反省を引き継いだ私たちの責務である。

<旧統一教会問題の解明を>
旧統一教会の韓鶴子総裁の逮捕後、捜査によって明らかになった政界工作の実態を「ハンギョレ新聞」は伝える。

日本の信者から集めた莫大な資金の一部が韓国政治を歪めた。かつての与党「国民の力」の有力議員に、大統領夫人に多額の金品が贈られた事実が白日の下に晒され始めた。

全貌が明らかになると日本の政界への影響は免れない。「選挙の手伝いをして貰っただけ」の関係と口をそろえた約180名の自民党議員の正直さに敬意を表したいところだが、果たして、それだけの関係だったのか。

韓国と同じく、統一教会から収賄があったとしたら目も当てられないことになる。記録に残されない裏金とプレゼント。韓国の特別検察による捜査次第で、わが国も重大局面へ発展するはずだ。「政治とカネ」の問題を先送りにした自民党の致命傷になりかねない。民主主義の先進国韓国から学ぶことは多い。

「リベラル21」2025.11.04より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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