SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】658 モロッコ寄りの国連決議2797

 「No King !(王はいらない)」と叫ぶニューヨーカーたちは10月4日に、イスラム教徒で民主社会主義者のゾーラン・マムダニ’(34)をニューヨーク市長に選びました。

 「No King !(王はいらない)」は、西サハラ人民の叫びでもあります。

① <「イード・アル・ワヒダ」(統一の日)>:

 11月5日のMAPモロッコ国営通信は、「ムハンマド6世モロッコ国王陛下は、2025年10月31日に採択された安全保障理事会決議2797は、西サハラ・モロッコ自治州案を基本にして、決定的な進展を遂げたとし、~神が神を助け、神を讃えてくださいますように(モロッコ国王の名やお触れの前につける接頭語)~国王の忠実な臣民に、毎年10月31日を国民の祝日とすることを伝えた、そして、国王陛下はー神が神を守ってくださいますように~この国民の祝日を「エイド・アル・ワヒダ」(アラビア語で統一の日)と名付けた。」と、モロッコ王室のお触れとして報じた。

 安保理決議2797が採択された10月31日の夜、ムハンマドⅥ世は特上機嫌で演説をした。「モロッコのサハラ砂漠に関する安全保障理事会決議第2797号の歴史的採択を大歓迎し、モロッコの自治構想が唯一の基盤であることを再確認した」と、安保理でマイク・ワルツ米国大使は、トランプ大統領の和平努力を強調した。

 そして、国王は「チンドゥーフ・キャンプの兄弟たち、家族と再会し、自治構想を利用するために、この歴史的な機会をつかめ」と、西サハラ難民に呼びかけた。

 さらに国王は、「弟のアブデルマジド・テブン・アルジェリア大統領、違いを克服し、信頼、兄弟の絆、善隣関係で、モロッコ・アルジェリア兄弟対話をやろう」と呼びかけた。

 安保理決議実現に貢献したすべての国々に感謝し、「特に、友人のドナルド・トランプ大統領閣下のご指導に、深謝したいと思います」と国王はトランプ王に忖度した。

 その上で、国王は西サハラ略奪の目的をためらわずに、「米国、フランス、英国、ロシア、スペイン、欧州連合などの主要経済大国が南部の州との投資と貿易を促進する決定を下したことを受けて、南部の州に対する王国の経済主権の認識が大幅に高まった」と吐露した。 

 喜び一杯の国王陛下は、毎年恒例の<11月6日緑の行進>演説は止~めた! 

 が、実は、経済大国のロシアも中国も、決議2797を批判し、棄権票を投じているのだ。

② トランプ安保理決議に反発する安保理理事国ならびに国連参加国:

 ロシア国連大使ワシリー・ネベンジア氏は決議2797投票後の演説で、「米国の同僚(西サハラペンホルダーの国連米代表部)は<カウボーイ>アプローチで草案を作成し、強硬採決した、、米国、フランス、英国、スペイン、ロシアを含む<西サハラ友の会>をモロッコは悪用した。任意に作られた<西サハラ友の会>は、西サハラに関する安保理決議の起草を不当に管理しており、他の安保理理事国が決議の起草に参加することをブロックしている。決議草案の起草者が作業を政治化し、最終文書を台無しにした」と指摘し、ロシア大使は<西サハラ友の会>を強く非難、「ロシアは一線を画している」と話した。そして、ロシア大使は、西サハラの人々の自決権を支持する原則的な立場を改めて明確にした。

 中国は、西サハラにおける公正で永続的かつ相互に受け入れられる解決策の必要性を改めて表明し、MINURSO(ミヌルソ・国連西サハラ人民投票監視団)の任務を延長する事には賛同したが、投票は棄権した。

 「中国は、関連する安保理決議に基づいて、対等な立場での当事者間の協議を通じて達成された公正で永続的で相互に受け入れられる解決策を支持する」と、中国大使は述べ、「当事者の懸念を深く理解した上で、政治プロセスを前進させるための調停をさらに強化しようとしている。事務総長の個人特使を支持する」と述べた。

 南アフリカは、10月31日、決議2797採択直後の国連安保理会議場前で西サハラ国連代表オマル博士と、ステークアウト記者会見を多した。

 「国連は、MINURSOミヌルソを通じて、西サハラの人々は自分たちの運命を決定するととを長年約束してきた。この自決に関する人民投票を実施するための緊急措置を講じなければならない。これは国際法に基づく彼らの基本的権利だ」と、南アフリカは語った。

 南アフリカのマルティヌス・ファン・シャルクウェイク国連副常任大使は、南アフリカはMINURSOミヌルソの任務を2026年10月31日まで延長したことは歓迎するが、決議のアプローチと交渉方法には失望を表明したと述べた。「2007年以降の安保理決議はモロッコの自治提案と西サハラの人々の提案の両方を認めてきたが、今回の決議は、自決権と西サハラの人々の提案を無視して、モロッコの計画のみに基づく交渉を支持するという残念な措置をとっている。」南アフリカの外交官は、この決議が交渉の「唯一の枠組み」としてのモロッコの提案に焦点を当てていることは、西サハラの人々の自決権を保証する公正で永続的かつ合意された政治的解決を可能にする人民投票を促進するというミヌルソの中核的な使命を損なうものであると強調した。

 11月7日、トランプ王は「南アフリカが白人を殺害し彼らの土地が略奪している。こんな国で開かれるG 20には参加しない」と、間もなく南アフリカで開かれるG 20をボイコットした。例によって、証拠はない。南アフリカ出身で世界一の金持ちイアン・マスクの影が、チラチラしている、、

③ スタファン・デ・ミストラ国連事務総長個人特使の記者会見:

 11月4日、フランス24チャンネルとのインタビューで、トランプ米大統領のアラブ・アフリカ問題担当上級顧問マサド・ブロス氏は、「国連安全保障理事会決議2797は、西サハラ問題の解決策としてモロッコの自治計画に排他権を与えるものではなく、紛争当事者が提唱する可能性のある他のイニシアチブやアイデアへの扉を開いたままにした」と強調した。マサド・ブロス氏は、交渉はすべての提案に開かれており、解決策は西サハラの人々との協議を経なければならない」と、述べた。米大統領顧問は、紛争の二当事者はモロッコとポリサリオ戦線である」と指摘した。そして、トランプの次女テイファニーの義父でもある米大統領顧問は、「レファレンダム(人民投票)は、西サハラの人々が自分たちの運命を決定できる選択肢であり続ける」と述べた。

 国連西サハラ事務総長個人特使デ・ミストラは11月5日、ブリュッセルからビデオで記者団に話した。 同氏は、「安全保障理事会決議第2797号が事務総長とその個人特使に与えた支援と実質的な任務を考慮して、我々自身のフォローアップ計画は、まず、国連が直接、または必要な場合でも広範な議題を策定できるようにするために、すべての締約国に提案を提出するよう呼びかけることである」と述べた。個人特使はまた、「決議第2797号に示されているように、2007年のモロッコ自治計画をこれらの交渉の基礎として取り上げ、その後、近いうちに、できればすぐに、モロッコの拡大計画を考慮し、フレンテ・ポリサリオの論文やその他の関連アイデアを使用するつもりだ」と述べた。 デ・ミストラ氏は、MINURSOミヌルソの2026年10月までの延長に「満足」を表明した。

アレキサンダー・イヴァンカMINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)団長で国連事務総長西サハラ代理人

 同日、11月5日、サハラ共和国大統領、ポリサリオ戦線事務総長のイブラヒム・ガリ氏は、西サハラの拡大提案に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長からの書簡を受け取った。この書簡で、10月20日にガリ大統領が総長に出した手紙の受領を、初めて、明らかにした。ええ~~半月も無視していたことになるの?

 半月前、安全保障理事会がMINURSO(ミヌルソ・国連西サハラ人民投票監視団)の任務を審議していた真っ最中に、ガリ西サハラ大統領はグテーレス国連事務総長に対して、<西サハラの人々の自決と地域の平和と安定の回復を保証する相互に受け入れられる政治的解決のためのポリサリオ陣の提案>と題するポリアリオ戦線の提案を送りました。

 しかし、審議の半月間、その手紙は脇に置かれたままモロッコ寄りの国連安保理決議2797が決議されたということは、どう考えても、ガリ大統領の提案は無視されたということですよネ!

 安保理決議草案作成作業に関して、たくさんの疑問が残っています、 キッチリ解決してください。

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 「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。                            著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、                                    定価:本体1,800円+税、                                     発行人:松田健二、                                           発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。               「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc              「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。                                                 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo               「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2025年11月8日                  SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/                            〔eye6050 : 251108〕