NHK日曜討論を観ての奇妙な違和感、野党席には「反動ブロック」各党が並び、末席に共産党が座っている、自維政権にどう立ち向かうか(2)
11月9日のNHK日曜討論を観て奇妙な違和感にとらわれた。いつも与党席にいた公明と維新が入れ替わり、野党席には共産が「反動ブロック」と位置づける国民・公明・参政が上席に座っている。共産は末席から2番目、山添政策委員長がこじんまりと座っていた。保革入り乱れての多党化時代が織りなす複雑な光景だ。討論も与党側と野党側が対決するというわけではなく、テーマごとに与野党関係なく対立する意見が飛び交った。この状態が今後も続いていくのか、それとも一時的かつ過渡的な現象なのかは、政治学者ではない私には分からない。
国会では、自維連立政権の合意項目「衆院議員1割削減」をめぐる激しい論戦が続いている。野田立憲代表は、議員定数削減には賛成だが、「比例区と小選挙区のバランス」を取るべき」と公明に秋波を送り、玉木国民代表は定数削減に賛成する立場を表明しながら実現性に疑問を呈している。また、自民・維新を含む衆院選挙制度の抜本改革を目指す超党派議員連盟のメンバーは11月6日、額賀衆院議長に自維連立政権合意書に盛り込まれた「衆院議員1割削減」について、議長の下で全党派の代表者が参加する衆院選挙制度協議会で議論を進めるよう申し入れた。額賀議長は、議長の下に設けた与野党各会派による「衆院選挙制度に関する協議会」での議論を優先すべきだとの考えを示したという。
議連の共同代表を務める自民の古川禎久氏は面会後、定数1割削減について、記者団に「政権を支えている党が決めたことが、立法のルールまで変えられるという国の建て付けになっていない」「勢いでルールを変更するということであってはならない。民主主義の根幹を支える選挙制度を一勢力が決めてはいけない」と強調した。議長への申し入れ書には、自民・維新をはじめ与野党10党派の代表者が名前を連ねている(毎日新聞、11月7日)。
間の悪いことにこの間、藤田文武維新共同代表の「政治とカネ」の問題が発覚した。「身を切る改革」を掲げる維新共同代表の藤田氏が、公設第1秘書が代表の身内企業に8年間で約2千万円の公金を支出し、その会社が公設第1秘書に年720万円の報酬を支払っていたことが、赤旗日曜版(11月2日)で報じられたのである。藤田共同代表は11月4日、国会内で会見して公金還流の事実を認め、「今後は発注しない」と表明したが、手続きは全て「適正・適法」だと強弁している。しかし、公設第1秘書の会社から藤田氏側へ出された売上代金が、5万円以上の手書きの領収証17枚のすべてに収入印紙が貼り付けられていないという新たな事実が、赤旗日曜版(11月9・16日合併号)で明らかにされ、藤田氏は抜き差しならぬ窮地に追い詰められている。
周知の如く藤田氏は、公明の連立離脱を受けて高市首相と連立工作を進めた立役者であり、自民・維新連立政権を支えるキーパーソンである。また、衆院議員定数1割削減が実現できなければ、「自維連立を解消する」とまで公言している強硬派でもある。その藤田氏が(皮肉なことに)「政治とカネ」問題で維新創業者の橋下氏に激しく批判され、メディアでも「退陣Xデー」さえが囁かれる状況になってきている。政局が藤田氏の共同代表辞任といった事態に発展しれば、議員定数1割減の連立合意はおろか、自維連立政権そのものがゆらぐことにもなりかねない。
この事態は、共産が政党・会派、議員個人に対して議会定数削減反対の「一点共同」を呼びかけた動きに呼応するものであり、自維連立政権に対する緒戦の勝利になるかもしれない。しかし、問題は自維連立政権に代わる政権交代のシナリオが描けていないことである。野田立憲代表が「右でも左でもない中道政党」をことさらに強調し、斎藤公明代表が「中道改革勢力」を表明する状況の下では、共産が提唱する「極右・排外主義の反動ブロックの危険に正面から対決する新しい国民的・民主的共同」の実現は難しい。「数は力」の政治力学が貫徹する政界では、弱小政党の方針提起は単なる「政治スローガン」で終わる公算が大きい。共産の党勢が刻々と衰え、取るに足らない弱小政党に転落しているからである。
今まで通りの党勢拡大方針で、党勢拡大を実現することはきわめて難しい。このところ、党勢拡大の結果が公表される毎月冒頭の赤旗では、決まったように党幹部の「訴え」が掲載される。10月4日には小池書記局長(「集中期間」推進本部長)の「政治的・理論的確信広げ10月こそ目標達成を」、11月8日には山下副委員長の全国都道府県委員長会議の「幹部会報告」がそれである。小池書記局長の訴えは、党勢拡大の9月目標が未達成に終わり(著しく後退し)、党活動が停滞している状況を次のように報告している。
――9月は、党員拡大は218人の入党の申し込みとなりました。赤旗読者拡大は日刊紙電子版28人増でしたが、紙の読者は日刊紙851人減、日曜版3943人減となりました。『Q&A いま「資本論」がおもしろい』(赤本)の学習を開始した支部は8.2%、第6回中央委員会総会決定の徹底は討議・具体化開始支部が56.7%、読了・視聴した党員21.6です。
――9月、1人の入党者も迎えられなかった地区委員会が189地区となっています。いま全党的には、党員拡大の運動が多くのところで「止まった状態」から抜け出せておらず、これを打開するには、支部に「やろう」というだけでなく、党機関から具体化をはからないと運動化できない現状にあります。
山下副委員長の幹部会報告は、「集中期間」の目標総達成、とりわけ世代的継承を中軸とした党員拡大を全党運動にするための意思統一を図るためのものである。
――12月末までの「集中期間」は折り返し点に立っていますが、党建設の根幹の党員拡大は、9月218人、10月277人でした。目標は全国で5千人の党員を迎え、党員現勢で毎月前進することですが、現状は大きな乖離(かいり)があります。入党を働きかけた支部は1割に届いていません。党員拡大がほとんど「止まった状態」から脱していないことに、現在の運動の最大の問題点があります。
――読者拡大は、日曜版電子版が新しい可能性を示すとりくみになっていることは大きな希望です。同時に、紙の日刊紙・日曜版は連続後退を脱していません。紙の電子版も、どちらも安定的前進の軌道にいかにしてのせるかが大きな課題になっています。紙の安定的な前進があってこそ、「しんぶん赤旗」の安定的な再発行が可能となります。だから「紙も、電子版も」なのです。
――党員拡大は、70年代年平均3万人、80年代1万5千人、90年代6千人、2000年代1万人1千人、2010年代8千人、2024年5千人、2025年2300人(3千人に届くかどうか)です。
山下副委員長の幹部会報告は全紙2頁に亘る長文であるが、言わんとすることは百年一日の如く変わらない。
(1)自公過半数割れに追い込んだのは、共産党のがんばりにある。6中総が明らかにした「日本の政治をめぐる歴史的岐路の情勢」は、その後の2カ月でさらに劇的に展開している。
(2)欧州の左翼・進歩勢力も新自由主義的な政策に反対し、草の根で党をつくるための努力をしている。ニューヨーク市長選では、民主的社会主義者を名乗る候補が歴史的勝利を果たした。わが国でもその条件は十分にある。党建設の教訓と可能性をつかみ、党大会で決めた目標への展望を切り開く「集中期間」にしよう。
(3)6中総は、参議院選挙の後退の最大の原因は、「党の自力」の問題であることを銘記した。しかし、中間選挙での議席と得票の後退が続いている。この「集中期間」を総選挙での躍進、再来年の統一地方選挙での躍進をかちとる自力をつけ、党勢と選挙の後退の悪循環を断ち切り、好循環をつくりだす出発点にしよう。そのため、党機関が「実践で突破する」というイニシアチブを発揮し、支部、党機関、地方議員が臨戦態勢をとり、現状打開の道を切り開こう。
一言で言えば、山下副委員長の幹部会報告は、70年代年平均3万人の党員拡大が今や10分の1に落ち込んでいる党の現状を分析せず、党員や党機関、地方議員のがんばりで「やればやれる!」と発破をかけているにすぎない。また、多党化時代の複雑な政治情勢を分析せず、諸勢力を「反動ブロック」と「進歩ブロック」に二分し、その対決を呼びかけているにすぎない。こんな粗雑な方針では党の再生は望むべくもないが、その結果は「集中期間」が終わる来年年頭の明らかになるだろう。そのとき、党中央はどのような総括と方針を示すのであろうか。(つづく)
「リベラル21」2025.11.18より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14526:251118〕












