くらしを見つめる会つーしん NO.241 2025年12月22日発行

書を捨てよ 町へ出よう

退職を機に断捨離に励んでいたところにコロナ禍が来た。書を捨てても町に出られない。更新したパスポートも使えない。生の体験、関わり合いは求められず、ネットとSNSで過ごした3年間の後、今までのうっ憤を晴らすように町に出たのは私だけではなかった。

 京都の町では日本語を聞く方が珍しくなってきた。今まで経験したことのない多人種多文化の人達を、経験したことのないスピードで迎えることになった。コロナが明けてみると、深刻な人手不足も待っていた。あらゆる職種で外国人に助けを求めた。結果、なにせ見たこともない大人数の外国人が来たから、お行儀の悪い外国人を目にすることも多くなった。「おもてなし」とうたいながら、こちらの異文化理解の学習スピードを超えてしまい、「ルールは守ってもらわないと!」と目をしかめ、一方外国人就労のルール作りは間に合っていないから、外国人問題などと選挙の争点にまでなってしまった。わずか2年で観光立国おもてなし文化は揺らいでいる。

 さて、最近は断捨離を諦め、書を求め町に出ることにしている。ネットとは違い思いがけない本との出会いがあるからだ。名前も知らなかったが、引き寄せられて手に取ったのが梨木果歩さんの本だ。梨木さんへの興味からエッセイも読んでみた。イギリス留学中(1980年代)の下宿先で出会った大家のウェスト夫人とそこに逗留している留学生、ナイジェリア人やコソボ難民、イスラム教徒、刑務所出所者などとのエピソードが描かれている。ウェスト夫人はあらゆる人に門戸を開く。以下引用。『私たちはイスラームの人たちの内界を本当には知らない。分かってあげられない。しかし分かってないことは分かっている。ウェスト夫人は私の見た限り、彼らを分かろうと聖人的な努力を払っていた、ということは決してなかった。彼らの食べ散らかした跡について、彼らのバスルームの使用法について、彼らの流す大音量の音楽について、いつも頭を抱え、ため息をつき、こぼしていた。自分が彼らを分からないことは分かっていた。好きではなかったがその存在は受け入れていた。』『理解はできないが受け入れる。ということを、観念上だけのものにしない。』ウェスト夫人の生き様が、梨木さんの小説の中でも息づいている。何冊か読んだ本の中にも、「好きとは言えない相手、理解できない相手を、それでも排除せず受け入れる。」その難題を、日常の中でするりとやる人が多く登場する。

「書を捨てよ、町に出よう」という有名な言葉は、書ばかり読んで観念上、頭の中での理想を膨らますだけに終わらせず、実際に世に出て、考え、実践することの勧め?ではないだろうか。私たちは3年間町に出ず、ネットで関係性を保ってきた。ともすると、理解できることだけ、理解できる人とだけ、理想や正義を語ってきた。町に出たとたん、違った常識や理想、正義があふれている。自分と考えの違う人を排除しない生き方は、おそらく実際に人と関わり合いながら生きていかなければ、身につかない。文字通り書を捨てただけの私に、町までの道のりは遠い。

                                    アマノ若

……中 略……

🎵こんな本いかが?

沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか 林博史著 集英社新書 

<編集後記>

高市内閣の支持率は11月の世論調査でも7割前後と(特に若年世代からの)高支持率が続いています。共同通信の調査で高市首相が国会で答弁した「台湾有事で集団的自衛権を行使する」との考えについて「どちらかといえば」を合わせ「賛成」が48.8%、「反対」が44.2%だったとの報道には愕然としました。質問の仕方も問題ですが、賛成と答えた人たちは台湾有事や集団的自衛権行使についてどのように理解しているのでしょうか?戦争はいつでも「自衛」の名の下、正義を掲げて始まります。(集団的自衛権が憲法違反ということをさておいても)トランプさんは中国と戦う気はないようで、日本がいきり立って戦争を始めたら梯子を外され、侵略者として国際社会からも見放されるでしょう。戦地になれば地獄。全国各地にある基地が攻撃対象になり、日本海側に林立する原発が狙われたら核爆弾を落とされるようなもの。それ以前に食料が無くなって庶民が飢えることは必定。戦争に至らなくても中国との関係が悪化すれば経済への影響は大きく、倒産・貧困層の増加、多くの人の暮らしが壊されます。

高市政権の打ち出した積極財政は先の見通しは何もないバラマキと、軍需産業や過去も失敗した一部大企業への投資ばかり。食料・エネルギー政策も将来を見据えた自給率を高めるものでなく、この政策では円安でさらに物価は上がり、格差が開いて社会不安は増す一方。それでも勇ましいことがカッコいいと、支持??

報道の自由度ランキングが66位と超低い日本。TVなどでは高市発言を擁護し一方的に中国が悪いかのような報道も多く、歴史の知識も無いネトウヨのようなコメントが公共の電波から頻繁に流されています。中国政府の問題も厳しく批判しながら過去の歴史から学び、欧米限定でない国際社会で、仲良くしなくてもけんかしない知恵こそ不可欠です。間違った方向へイケイケどんどんの高市政権。NOを言わないと本当に日本は終わります。(きくこ)