映画「戦雲」を見る。

 地元佐倉市内の二つの9条の会の共催で、「戦雲」(三上智恵監督 2024年)上映会が開かれた。佐倉市立美術館ホールは定員99人だが、チケットは売り切れで、断ることも多かったという。観客は圧倒的に高齢者が多いのが気がかりであった。もっとも、共催の9条の会自体の高齢化は止めようもない流れにあるので、仕方ないことなのかもしれない。

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 映画は、日本の最西端の与那国島と石垣島、宮古島、沖縄本島において、自衛隊の基地が次々と建設され、戦闘を前提にしたミサイルや弾薬庫新設の過程で、それに抵抗する人々の姿を描くドキュメンタリーである。2016年から23年までの島の人々の生活と意思を丹念に追い続けた記録である。四島の動向が並行して語られるので、地名や人名がやや混乱することもあった。

 そんな中でも、とくに、与那国島の漁師「川田のおじい」川田一正さんと石垣島の「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」の山里節子さんからのメッセージは強く心に残った。川田さんは、久部良(くぶら)のカジキ漁のベテランで島の競艇のような「ハーリー」という伝統行事の応援にも熱が入る、どちらかといえば保守的な人物として登場する。1937年生まれの山里さんは、石垣島出身で、戦争で家族4人を失い、戦後に習った英語を活かした職業などを経て、本土復帰後は、環境保護、平和運動を続けている。奄美大島、宮古島に続いて、石垣島にもミサイル基地計画が進み、住民と共に住民投票を求める署名運動が盛り上がったにもかかわらず、市議会は条例を変えてまでして無視をし、ミサイル基地の建設は始まり、2023年3月には、ミサイルの導入に至ってしまう。山里さんが、常に先頭に立って、張りのある声で訴える言葉と歌声は、説得力があるゆえ悲痛でもあり、映画全編を引き締めているようにも思われた。

 もちろん、四島で展開されている基地拡張反対運動には、より若い世代の、さまざまな職業の人々が諦めそうにもなりながら、悩みながらも声を上げ続けている活動も伝える。

 川田さんが自衛隊員に金網越しに、「戦争になったら、逃げるんだ」と呼びかけ、ミサイルを搬入する「道を開けてください」の警告に「平和の道を塞いでいるのはあなたたちじゃない」という山里さんの叫ぶ場面は忘れ難い。

 監督の三上さんは、アナウンサー出身で、1995年、琉球朝日放送移籍後は沖縄に移住、多くのテレビ番組の制作も手掛け、さらには映画監督として「標的の村」(2013年)「沖縄スパイ戦史」(2018年)などを監督、各種の賞を受賞している。

 この映画でもさまざまな手法を用い、与那国島の牧場の牛、宮古島のサトウキビ畑やヤギなどが画面に大写し、一瞬ほっと和ませる。また、与那国島の「ハーリー」に参加する自衛隊員とその子供のエピソードが添えられる。「川田のじいじ」が、カジキに襲われたときの怪我を乗り切り、巨大カジキを吊り上げ、大興奮で島に帰る映像で、映画は終わる。重いテーマを優しく突きつけられたような気がする。

 もうだいぶ前に見た、やはり沖縄をテーマにした、影山あさ子監督のニュースや映画の強烈さとは、少し違うのかなとも思った。

初出:「内野光子のブログ」2026.1.21より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2026/01/post-5d2f63.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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