共産党の再生は可能か(その3)

志位議長の不出馬は次期総選挙の敗北を見越した〝敵前逃亡行為〟に当たるのではないか、姑息な権力延命策は却って党勢後退を加速させる、通常国会冒頭解散にあたって(1)

今回の通常国会冒頭解散にともなう政変劇は驚くことばかりだ。なかでも「連立解消の公明
与野党両にらみ」「斉藤代表、自民含め各党と等距離」(朝日新聞、1月14日)とどっちつかずの公明党が、一転して立憲民主党との新党結成に踏み切ったのには驚いた。野田立憲民主党代表と斎藤公明党代表の会談後の発言要旨は以下の通り(読売新聞、1月16日)。

【新党結成】
野田:公明党から呼びかけがあり、共に新党を作って戦っていく合意ができた。
斉藤:政治の右傾化が見られる中で、中道勢力を結集することが重要だとの観点から立民、国民民主党、自民党の穏健派に声をかけてきた。

【合流方式】
斉藤:公明、立民が存続したまま新党を設立する。中道改革の理念や、公明が掲げた5つの旗印に賛同する議員が参加して統一名簿を作成する。参院、地方議員は両党に引き続き所属する。
野田:党と党の合流ではない。参院、地方議会でも段階を経てそうなる(統合する)結果を出していきたい。

【理念】
野田:安全保障、原発も含めて綱領を来週初めまでに詰める。
斉藤:自民と全面対決する党を作るつもりはない。第2新進党を目指すものではない。
斉藤:小選挙区では、今回結集する候補者を両党で応援する。比例代表名簿には、公明出身者も登載する。小選挙区には公明出身の候補者は擁立しない。

【党名・役員人事】
野田:党名は16日あたりには決めたい。※「中道改革連合」に決まった。
斉藤:野田氏と私で共同代表でスタートする。

各紙は大特集でこの事態を報じたが、読売新聞社説「立民・公明新党、政界再編への起爆剤になるか」がわかりやすい(要旨)。

――急転直下の衆院解散によって、受け身に回ると思われていた野党側に、大きな結集軸ができる可能性が出てきた。高市首相が、狙い通りに衆院選で安定した政権基盤を築くことができるか。あるいは中道や改革を掲げる新党が有権者の期待を集めるのか。政界再編含みの短期決戦となる。

――立民は野党第1党でありながら、昨年7月の参院選の比例票が国民民主、参政の両党を下回る739万票にとどまった。公明も最多だった2004年862万票に比べて約6割の521万票しか獲得できなかった。新党結成の判断は、立民、公明ともに、このままではじり貧になりかねない、という危機感が背景にあるのだろう。首相が今回、唐突に解散に打って出るのは、内閣支持率が高いうちなら勝利できる、との目算に基づいていよう。

――だが、衆院選の情勢は見通せなくなってきたのではないか。新党は綱領に、現役世代の負担に配慮した社会保障政策や、現実的な外交・防衛政策を進めるといった5つの柱を盛り込む方針だ。こうした基本方針は、従来の立民、公明両党の支持者に限らず、一定の保守層からも支持される可能性がある。野田氏は「穏健な保守にもリベラルにも波及できるチャンスがきた」と強調した。

この社説を読んで、昨年11月25日の拙ブログで11月15日刊行の山口二郎・中北浩爾編著『日本政治、再建の条件――失われた30年を超えて』(筑摩選書)を紹介したことを思い出した。山口氏は、右派ポピュリズム政党の進出という最悪のシナリオを防ぐためには、自民党が穏健派と右派に分裂し、穏健派が現在の立憲民主党などと連携して政権を担うという「穏健連合」のシナリオを提唱している。この時点では自公連立政権の崩壊はまだ視野に入っていなかったが、今回の立民・公明両党による新党結成は、その文脈に沿っているとも考えられる。

穏健連合の任務は、財政制約の中でできるだけ再分配を進め、社会、経済の持続可能性を維持すること、国力相応の防衛力整備を進めつつ戦争を回避することだとある。穏健中道と右派ポピュリストという対立構図ができれば、保守層の中にも穏健連合に参加する勢力が出てくるかもしれない。野田氏は「穏健な保守にもリベラルにも波及できるチャンスがきた」と強調し、斉藤氏は「政治の右傾化が見られる中で、中道勢力を結集することが重要だとの観点から自民党穏健派にも声をかけてきた」と述べている。高市政権が維新との連立によって日々右派政権の色彩を強めつつある現在、立民・公明両党の新党結成は、政界再編あるいは政権交代の切っ掛けになるかもしれない。

だが、本ブログを執筆中に、志位議長が今回の衆院選には出馬しないと言うニュースが飛び込んできてさらに驚いた。当初、志位議長が次期総選挙へ不出馬を表明したことは唐突な印象を与えたが、日が経つにつれて次第にその構図が見えてきた。各紙は、志位氏が次期総選挙に立候補せず、党議長を続投することを簡単に伝えただけで、それ以上の分析には踏み込んでいない。
一方、赤旗は1月17、19両日にわたって記者会見の模様を大きく伝えている。拙ブログでは、志位議長の不出馬表明の「タテマエ」と「ホンネ」の関係を読み解いてみたい。記者会見の大要は以下の通りである。

――(次期総選挙に出馬しないことは)私自身の心の中では、2024年1月の第29回党大会で新しい党の体制をつくった時に大体決めていたことでした。私は引き続き党の活動のあらゆる分野で必要とされる責任を果たす決意ですが、国政の上では、田村委員長が党を代表する役割を果たすことになります。

――こういう立場で今後の活動をやっていく以上、国会の議席もバトンタッチすることが当然のことと考えてきました。そこで候補者名簿の発表にあたってはそのことを提案し、常任幹部会で決めてもらいました。国会議員からは退くことになりますが、今後も議長として「党の活動のあらゆる分野」で責任を果たす決意です。外交の分野、理論の分野、そして国政の分野でも必要とされる責任を果たしていくつもりです(以下略、赤旗、1月17日)。

また、記者との一問一答についても詳細に掲載されている(同、1月19日、要旨)。
〇今回、立候補しないという判断は世代交代と受け止めてもいいのか。
――一番の理由は、24年1月の党大会で党の委員長を交代して、国政の代表者は田村智子委員長だと確認したことです。私は、党の議長として全他の責任を負っているわけですが、国政の代表者は田村委員長だと確認した以上、国会議員は次の方にバトンタッチするのが当たり前だと考えてきました。年齢のことも考えました。私は今71歳ですが、かりに今度立候補して、任期満了までやった場合は75歳になりますから。もちろん日本共産党は画一的な定年制を決めている党ではありません。出処進退はそれぞれの方の判断を尊重して対応することにしています。

〇党員の減少や高齢化、比例票の減少といった状況について。党勢の今後に向けての課題は?
※この質問については一切答えず、日本共産党の役割を抽象的に述べただけだった。

〇共産党は一貫して野党共闘を進めてきたが、現状は共闘がなかなか難しい現状だ。
――2015年に市民と野党の共闘を呼びかけて、その後、一連の国政選挙でこの路線を追求してきました。全体としては大きな意義があったと思うし、成果も出ていると思います。ただ、日本共産党も参加した共闘ということになると、風当たりも強いということを何度も経験してきました。
――今後の共闘をどうするのか。まだ先が見えない状況ですが、いま追求しているのは、「憲法を真ん中に据えた確かな共同」です。まだ国会勢力としては小さいですが、いま勇気をもって旗を立てることが必ず多くの人たちの共感を集めていく流れになりうると確信しています。
――私は、この間、ヨーロッパやアメリカの左翼・進歩勢力ともいろいろ交流してきましたが、極右・排外主義の勢力の台頭にどう立ち向かうかが問われている中で、中途半端ではなく、正面から対決する旗を左翼・進歩勢力が立てたところで、その旗に国民の信頼が集まる。日本でも極右・排外主義の流れが起こっています。高市政権もその流れとさまざまな協力関係の中にあります。右翼的潮流が広がる状況の下で、それに対抗する旗を旗幟鮮明に掲げる進歩勢力の共同が必要という立場で頑張っていきたい。

〇立民・公明両党の新党結成の動きについて、どう考えているか。
――公明党は、集団自衛権を行使する安保法制を推進した政党です。立憲民主党は安保法制は憲法違反だと正面から批判してきました。日本共産党と立憲民主党は、安保法制は憲法違反だから廃止すると基本的に合意して、国政選挙で協力してきたわけです。
――安保法制は過去の問題ではありません。今の問題です。11年前に安保法制で「戦争国家づくり」が法制的に整備され、それを実践に移してのが「安保3文書」です。軍事費の増額、敵基地攻撃能力の保有、「存立危機事態」という概念や高市首相の「台湾発言」なども安保法制の具体化です。安保法制は日本の政治の根本問題ですから、あいまいな態度をとることは許されません。この問題に(立民・公明両党が)どういう対応を取るかを注視していきたいと思います。

この記者会見の最大の注目点は、第1に、党員の減少や高齢化、比例票の減少についての記者質問に対しては志位議長が一切回答しなかったこと。第2に、立民・公明の新党に対する判断は、安保法制についての対応がカギになることを強調したことだろう。とりわけ第2の点に関しては、これまで田村委員長や小池書記局長が他の野党との選挙協力に当たっては、「安保法制廃止が野党共闘の一丁目一番地との立場は変わらない」としばしば強調している。志位議長も「安全保障関連法廃止」で一致することが選挙協力の条件だとしている。しかし、1月19日に発表された立民・公明の新党「中道改革連合」綱領には、政策の第4の柱「現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化」の中に、「憲法の平和主義に基づく専守防衛を基本に、日米同盟と平和外交を軸とした、国民の平和と安全を守る現実的な外交・防衛政策を進める」とあるだけで、安保法制廃止は明記されていない(日経新聞電子版、1月19日)。これで共産党と中道改革連合の選挙協力は事実上不可能になったと言っても間違いないだろう。

問題は、志位議長が今回答しなかった(できなかった)党勢後退と不出馬表明との関係である。志位議長が立候補取りやめを決めた1月13日の常任幹部会では、「解散・総選挙に全党が勇躍して立ち上がろう――いまこそ、時流に流されず、共同の力で政治を変える党の躍進を」との声明の中で、これまでずっと掲げてきた「比例代表650万票、得票率10%以上」の目標が取り下げられ、これを200万票も下回る「450万票、得票率7.5%以上」が新たな目標として掲げられた。ただし、この目標も「『450万票、得票率7.5%以上』は参院比例得票の1.6倍であり、達成するなら大きな躍進となる」との仮定形で語られているように、「達成する」「実現する」といった断定形では言えなくなっているのである。

過去3回の衆院選における共産党の比例得票数および南関東ブロック比例得票数は、2017年全国440万票(7.9%)、南関東ブロック55万票(8.0%、以下同じ)、2021年416万票(7.2%)、53万票(7.2%)、2024年336万票(6.1%)、43万票(6.1%)と右肩下がりで縮小してきている。南関東ブロックの定数は22人、ドント方式で振り分けられる共産党議席数は、2017年2人(志位和夫10位当選、畑野君江21位当選、斉藤和子以下6人落選)、2021年1人(志位和夫10位当選、畑野君江以下4人落選)、2024年1人(志位和夫13位当選、畑野君江以下3人落選)と選挙ごとに着実に順位が下がり人数が減ってきている。

2025年参院選の共産党比例得票数は286万票(4.8%)と一段と縮小し、これを衆院選比例ブロック別の得票数に換算すると、南関東ブロックは38万票(4.9%)となる(『前衛』2025年11月臨時増刊号)、この得票数では次期衆院選で志位議長が定数22人の中に入らないことも考えられ、党の最高ポストにある議長が落選すれば、その責任は誰に目にも明らかになる。その事態を予測した志位議長が、辞任に追い込まれるのを免れるため「不出馬表明」という名目で〝敵前逃亡〟した――というのが私の仮説(見立て)である。間もなく次期総選挙が始まる。私の仮説が間違いであれば、その不明を詫びなければならない。だが、共産党の比例得票数がさらに減ることにでもなれば、志位議長は「不出馬表明」の如何にかかわらず責任を問われることは間違いなしであろう。
(つづく)

「リベラル21」2026.01.23より許可を得て転載
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