総選挙で問うべきは、何? 物価値上げの元凶「円安」に目を向けたい!

―「物価値上げ反対」のスローガンでデモが起きないことを憂いながら―

▼円安と物価暴騰
高市早苗首相は、安倍政権が掲げた経済政策「アベノミクス」の継承者とされているが、日本と国民の生活は大丈夫だろうか?
「積極的な金融緩和でデフレ克服を図る」という考え方は、現状では深刻な弊害をもたらしていることを、経済の専門家ではないものの、学生時代に「応用経済」を自分なりに学んだ身としては受け止めている。
「金融緩和で物価上昇率さえ高めれば、日本経済は容易にデフレから脱却し、国民生活は大きく改善する」というアベノミクスの主張は誤りだったことは明白である。急速な円安をもたらし、物価高騰を生じさせ、国民生活を圧迫している現実を、専門家やメディアは、分かりやすく解説し、国の今後を定める選挙での争点でもあることを示すべきだと強調したい。

▼円安は円の価値低下、つまり国力の低下でもある
さらに、国際的な日本の円の価値低下、つまり国力の低下ということも指摘したい。
高市首相誕生後の、マネーゲームの要素もある株価はアップした半面、外国為替相場は「円安」が進み、それに連動する大幅な「物価高」は現在も進行中で、日々の生活苦の国民の存在をどれだけ真剣に思っているのか、選挙戦の中で各政党・立候補者の中身を確認したい。

日本は、輸出大国として貿易黒字が続いてきたが、輸入に頼る資源価格の高騰、国内生産拠点の海外移転などにより、近年は貿易赤字に転落し、常態化している。
貿易赤字では、海外から輸入する際に円を売って外貨を調達する必要があるため、経済学・財政学の基本では円安が進行しやすくなる。
過度な「円安」を、どのように克服するのか、できるのか。選挙戦でどのように分析し、克服方向を示すことを全政党、全立候補者に問いたい。

▼円が4年で30割も弱くなった
新型コロナ禍最中の2022年の年初には1ドル114円台の為替相場は急速に円安が進行し、2024年夏には一時1ドル160円台を記録。2024年後半からは、円高への揺り戻しが見られ始めた。その原因は、米国の利上げの終焉や日本銀行の金融政策の修正観測などからだが、2025年3月以降は、1ドル150円を切る円安水準で推移し、2026年になり150円台後半まで円安が進んでいる。
円は4年間で114円台から150円台、つまり3割もの為替変動だ。端的に言えば、輸入代金が3割アップしたことになるから、「輸入大国」日本の物価が高騰するのは当然。但し、これは自然現象ではなく、人の手によるものであることを認識したい。

▼日米の金利差が円安を進行
円安進行の原因として、最も大きな要因の一つとして、日米の金利差が挙げられる。
アメリカの中央銀行であるFRB((連邦準備制度理事会))は、インフレ抑制のために積極的な利上げ政策を推進してきたが、日本銀行は違った。デフレ脱却と景気回復を優先し、2024年3月にマイナス金利政策を解除したものの、依然として1999年2月から続く金融緩和的な立場を維持している。この金利差により、より高い利回りを求める投資資金がドル建て資産に流入し、円売り・ドル買いが加速することは当然で、それが続いている。

▼中東やウクライナ侵攻も円安要因に
為替相場の変動の要因は、もちろん単純な話ではないが、基本的な変動要因として中東情勢の悪化やロシアによるウクライナ侵攻の長期化も影響している。エネルギー価格の高騰となり、インフレを加速させ、これも円安要因となる。

▼円安は「メリットもあり」?
円安のメリットとして、敢えてあげると、
「輸出企業の利益増加」
「外貨建て資産の価値上昇」
「インバウンド需要の増加」、が強調されている。

▼円安のデメリットは…
円安のデメリットを挙げると、
「輸入コスト、エネルギー価格の上昇・食料品など物価高騰」
「輸入企業の利益減少」
「海外旅行のコスト増加」、が指摘できる。

中小企業は輸入コストの高騰を価格に転嫁しにくく、利益が減りやすい傾向になる。その結果、従業員の賃金の伸びが鈍くなり、家計にも回り回って影響が及ぶ。円安は経済全体に複合的な影響をもたらす。ガソリン価格や食料品価格の上昇により生活費負担が重くなる、長期化するほど国民は生活防衛を強め、財布のヒモを締めることで、景気、経済循環は上向かない。
また、懐に余裕のある人は海外旅行に何回も行けるようだが、旅行コストが大幅に増加するため、全体の海外旅行需要が減退し、旅行関連業界にも影響をもたらしている。
いま、輸出企業の業績が良くても、円安が貿易収支の改善や国内設備投資・雇用の増加に結びつきにくくなっているため、円安のメリットよりもデメリットが目立つようになっている。
深刻なのは、現在の円安は一時的な現象ではなく、日本経済の構造変化を反映した中長期的な流れだと分析する経済・金融関係者が多いことである。

▼「関税マン」と自称するトランプ政権の政策を、もっと問題にすべき
さらに、アメリカにおける、19世紀の帝国主義返りか専制君主、帝王気取りの、トランプ政権の政策動向と、理不尽さに正面から異を唱えず媚を売るような日本の従属的な姿勢も問題だ。
2025年7月の日米関税交渉では、当初25%の関税率が予告されていたが、最終的に15%で「合意」したことから、関税問題は当面の危機を脱したという解説ばかりだが、客観的には一方的な15%もの「みかじめ料」みたいな要求に屈したという事実は曲げられない。
アメリカに従属する自民党の歴史的な基本姿勢は、ここでも浮き彫りだが、そうした指摘・解説は大手メディアにはほとんどない。

▼日米金利差が縮まるには、賃金アップが必要
金利差を少なくするには、日本の利上げがポイントだと、私はとらえている。
物価が上昇しても賃金が追いつかなければ、日銀は急激な利上げに踏み切りにくくなる。
2026年に賃金が安定的に上がらなければ、日本だけ低金利が続き、相対的に円が弱くなる構図は変わらない。利益をため込む企業や政府が口にする「内部留保の利益」は、口先だけにさせないためには、大企業に「従業員や下請け単価を上げろ」と迫ることが実効性を担保する方法だと思う。多少蛇足だが、超高額所得者で日本の大半の富を専有している現状は異常だという世論喚起も求められる。

▼日本の富裕層は約3%だが、保有資産は6割強
ちなみに、超富裕層と言われる純金融資産5億円超の割合は約11.8万世帯と世帯全体((約5,373万世帯))に占める割合は約0.2%。また富裕層と言われる純金融資産1億円~5億円の層の割合も153.5万世帯と世帯全体に占める割合は約2.9%。
このように、富裕層や超富裕層は全体に占める割合はごく一部であるものの、保有する資産額では、超富裕層が約131兆円、富裕層が約338兆円と全体の約6割強を保有しているとのデータがある((2025年。都内の大手税理士事務所のコラム))。

円安対策の王道を提示する、あるエコノミスト((経済の専門家))の言葉を紹介したい。曰く「海外に蓄えられた日本企業のお金を、いかに国内に還流させるかということに尽きる。
企業経営の視点では、海外進出が成功して企業が儲かった時点で『合格』である。ただし、日本経済全体としては、稼いだ資金を国内に還流させて、それを消費や雇用に結びつけないと及第点はあげられない」と。
生活支援と称して「消費税」減税の選挙公約が飛び交っているが、「いま子どもに満足に食べさせることができない」と苦闘している人々がいることを優先して欲しい。また、これだけスローガンが一緒なら、明日にでも協議の場に座って決めて欲しいと言いたいのは、私だけだろうか。
現実の問題として、消費税減税はレジ改修の準備期間も必要で、生活支援の即効性には難があり、財源論に時間を取られ、実現しない「沙汰ヤミ」になるのではないかと、私は心配する。
「生活支援」を具体的に実行に移すことは政治の責任であることを、総選挙に立候補した政党、候補者の皆さんが肝に銘じて、競争して実現していただくことを期待して、とりあえず筆を置く。

「リベラル21」2026.01.29より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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